第二回戦 二ノ宮対四家2
「二ノ宮、早く四番の教室に向いなさい」
先生はため息を付きながらニノちゃんに向かい言った。
「はーい。それじゃ、イザ決戦の場に向おうかー」
ニノちゃんはそう言うと、スキップしながら教室を出て行った。
「四家も準備しとけよ」
「うん」
百鬼先生に促され私もゴルフバックからナイフを取り出す。
「……重い」
お姉ちゃんから貰ったナックルガード付の二本のファイティングナイフは重く、私は握ったまま机の上でぐたーっと突っ伏す。持ってるだけで疲れるな。
ニノちゃんがなかなか部屋に現れなくて、私が机に突っ伏しながら眠気に誘われていると、先生が「四家」って大声を出した。
四家?
「おい四家寝るな! 二ノ宮が部屋に入ったから、四番の教室に向え」
……あっ、四家って私の名前だった。私は机から顔を浮かし、ぶんぶんと首を振り、眠気を飛ばす。
「……はい」
あくびを堪え私はとことこと扉に向かい歩き出す。
「行ってきます」
「……ああ」
うん? 行ってらっしゃいじゃないのかなと思い振り返ると、教室の皆が私にそれぞれの感情を表した顔を向けてきていた。
先生と五朗丸君は、こいつ大丈夫かと言った感じに苦笑いしていて、一神君は無表情に私を観察するような目を送ってきていた。
零ちゃんは呆れた感じ顔を引きつらしていて、八王寺ちゃんは両手を組んで何かに祈っていた。
八王寺ちゃんのあれはなんだろう?
お昼に玉子焼きが出てって祈ってるのかな?
私はお姉ちゃんに言われたとおり、皆にお辞儀をしてから教室を後にした。礼儀正しくしなさいって言われたけど、ちゃんとできた。よし。
目指す教室は階段を上った先だ。私は一生懸命階段を上った。
「うー。重い」
やっぱりこの武器は重かった。おじいちゃんが若い頃に使っていたブレードを再利用して作ったやつみたいだけど、やっぱり私が使うにはまだ早い気がするな。まだまだ振り回されちゃうし、何より重い。十字ちゃんの武器のようなアイスピックなら軽くて使いやすそうで良いな。この任務が終ったら、お姉ちゃんにアイスピックに変えてもいいかなって聞いてみようかな?
でも、そんなこと言ったら頭をごつんって叩かれそうだな。お姉ちゃんのごつんは痛いからやっぱり言うのは止めよう。
私が階段を上りきり、廊下に出ると、遠くに四号室と書かれていた教室を見つけた。
「……遠いな」
呟きとぼとぼ歩いていると、教室からニノちゃんが顔を出した。
「四家ちゃん、こっちこっちー」
鋏を握った手をぶんぶん振ってきた。
『二ノ宮! 中で待ってろ!』
開いた扉から先生の声が聞こえた。ちょっと怒っている感じだ。
「はーい」
ニノちゃんが顔を引っ込めた。
私は『人を待たせるのはダメ』って言うお姉ちゃんの言葉を思い出して、少しだけ早歩きをして教室を目指した。
開けられた扉から中に入ろうとしたとき、変なものを見つけた。
これって……足跡だ。その足跡は赤くて、教室の隅で鋏を指にかけくるくる回しているニノちゃんの所まで続いていた。
「……血?」
足跡をナイフで指して聞いてみる。
「あっ、この足跡? 来る途中で六波羅ちゃんとか十字ちゃんの武器見たくて中に入ってみてきたんだよー。バスタードソードめっちゃカッコよかったよー」
確かに勇者の武器みたいで格好よかったけど、重そうで好きじゃないな。
「まっ、一番欲しいのは八王寺ちゃんの武器だけどね。明日八王寺ちゃん負けたらあの武器貰えないかなー」
武器を持った時のイメージをしているのか、ニノちゃんが腕をぶんぶん振った。
八王寺ちゃんの武器も重そうで嫌だな。私は十字ちゃんのアイスピックか零ちゃんのダガーがいいな。軽くて楽そうだもん。
こんな重いのは嫌だなって思ってナイフを見ていると、『第二回戦第三試合目開始!』と、先生が戦いの開始を宣言した。
「さあ、待ちに待った戦いだねー。四家ちゃんウキウキしない?」
ニノちゃんが楽しそうに言ってくるけれど、私は全然ウキウキなんかしなかった。
「疲れるから、戦うの嫌い」
いっぱい動けば疲れるし、汗も掻いちゃうから、お風呂にも入らなきゃいけなくなる。嫌な事だらけだ。
「そんなー。殺しあうと、血潮滾るっていうか、アドレナリンが出るっていうか、もう形容しがたいくらいハッピーにならないかなー?」
「……ならない」
疲れるのは嫌い。動くのは嫌。戦うのは本当に嫌いだもん。でも一番嫌いなのは……。
「でも、戦うんだ。お姉ちゃんのごつんが一番嫌いだもん」




