第二回戦 二ノ宮対四家
零ちゃんと五朗丸君の試合をうとうとしながら見ていると、先生の声が耳に届いた。
「五朗丸、ギブアップと言うことで良いのか? もしギブアップと言うことなら、その体勢のまま三秒間維持してくれ。三・二・一……分かった。五朗丸ギブアップとしまして、勝者零!」
終ったのかなと思って重たい瞼をごしごしと擦り、目を開けると、大きなテレビに倒れている五朗丸君が映っていた。
「……終ったの?」
「……ああ。四家……見ていなかったのか?」
先生が変な顔で私を見てきた。あれは……呆れた顔かな?
よくお姉ちゃんが向けてくる顔と一緒だ。でも仕方ないもん。朝ご飯食べて、直ぐにテレビ見たら眠くなっちゃうよね。
「お腹いっぱいだから、眠くなる」
もう一度目を擦ると、ニノちゃんが席を立った。
「四家ちゃんそろそろ出番だから、眠気覚ましのストレッチでもしようかー」
「……うん」
私も席を立ち、ニノちゃんの動きに合わせて体を動かす。
「いっち、にっ、さんっ、しっ」
ニノちゃんの掛け声に合わせて両手を上に上げる。あっ、これラジオ体操だ。
体操を続け目が冴えて来ると、教室に零ちゃんが入ってきた。
「……何してるんだよ」
「ラジオ体操だよー。零ちゃんもやるー?」
「……やらねえよ」
零ちゃんは私とニノちゃんにそれぞれに呆れた顔を送ると、テレビ画面に視線を移した。
「なあ、次の教室の画面に変えてくれよ」
言われて、テレビを見ると、大きな画面に大きな五朗丸君が泣いている姿が映し出されていた。
「五朗丸が教室に戻るまでは変えられないな」
先生が答えると、零ちゃんは教室の壁をドンッと叩いた。
「あいつは直ぐ帰ってくる。だから変えてくれよ。理由くらいわかんだろ」
鋭い視線を先生に送ると、先生も零ちゃんをじっと見詰め返した。
「……分かった」
先生が机の上に置かれたリモコンでチャンネルを変えると、誰もいない教室が映された。
「悪いな」
先生に軽く頭を下げ、零ちゃんは机に戻って行った。
「零ちゃんカッコいいねー」
「うるせえよ」
零ちゃんが囃し立てるニノちゃんに照れたように答えた。
私は何がかっこ良いのか分からずに小首を傾げると、八王寺ちゃんがクスッと笑った。
「……うん?」
もう一度小首を傾げる。何か面白かったのかな?
しばらく私とニノちゃんがラジオ体操をしていると、「零、ちょっといいか?」と、先生が零ちゃんに呼び掛けた。
「なんだよ」
「零だけじゃなく他の候補者にも言っておくが、あまり話をし過ぎないようにしてくれ。音は拾っていないから、金や地位を餌に勝利を買ったように邪見する方もいるかもしれないからな」
「……分かったよ」
零ちゃんが答えると、教室の扉が開けられて、足を引きずった五朗丸君が戻ってきた。
「戻ったな。お前達の試合中に八王寺にも言ったんだが、重症でない場合、次の二ノ宮と四家の試合が終ってから医者に見てもらうが大丈夫か?」
「ああ、この足? ちょっと折れたくらいだ、寝ていれば明日には治るだろ」
五朗丸君はニヤッと笑った。骨ってそんなに直ぐ治るのかな?
「……とりあえず、医者が来るから見てもらうように」
五朗丸君に言うと、視線をニノちゃんに移した。
「じゃあ、二ノ宮、四番の札の教室に向ってくれ」
「了解、りょうかーい。やっと順番来たねー。待ちに待ったよー」
ニノちゃんはゴルフバックを手に取ると、中から鋏を取り出した。
「さーて、四家ちゃん楽しもうねー」
「……やだ」
「えー、つれないねー。うちはこんなにワクワクしてるんだから、四家ちゃんもテンションハイにしようよー」
「……今マックスだよ?」
「マジっすか!」
ニノちゃんは鋏を指でくるくる回しながら笑った。




