第二回戦 五朗丸対零8
「はぁ?」
俺は零の発現の意味が分からず間抜けな声を出した。
「一回で察しろよ。めんどせぇな。お前友達いねえんだろ。俺が友達になってやるって言ってんだよ」
「……」
俺の思考が止まった。そしてやっと動き出し……俺は笑った。人生でこんなに笑った事は一度も無いくらいに。
「たははははぁ。お前馬鹿だ。馬鹿すぎるだろ。どこの少年漫画の主人公だよ! たはははは」
「うるせぇよ」
零は照れたように頭を掻いた。
「そうしたらお前ギブアップで良いか?」
「ああ。もう戦う必用はねえよ。俺よりも化け物がうようよいることが分かって、友達も出来たもう十分だよ」
「ちなみにこの候補者の中にもお前より化け物なやつは……四人はいるぞ」
四人? 零と一神の野郎と八王寺の事か? 確かにあいつらは間違いなく強ええな。そして最後の一人は二ノ宮か四家か。
「そうだ、一つ聞きたいことがあるんだけどいいか?」
零は改まった感じで聞いてきた。
「なんだよ」
久しぶりに眼光を鋭くし俺を見てきた。
「さっき門脇って言ってたからお前の組織は分かったんだけどよ、抜ける気はないか?」
「……別にどこだろうと俺はいいけどよ……どうしてだ」
零は自分の組に誘おうとしているのか、なにやら考え出した。
「いいや、もし強くなりたいんだったら他の組織のほうがいいと思ってな」
そう答えた零は嘘をついているように見えた。
「とりあえずこの候補者争いが終ったらお前の組織の長に合わせろよ。勝手に移籍は出来ねえだろうしな」
「ああ、すべて終ったら合わせるよ」
零はそう言うと、立ち上がりカメラに視線を送った。
「さてと、時間も食ったことだし、そろそろ行くか。とりあえず五朗丸、お前あそこのカメラにばってんでも作ってみろよ。音声も繋がってねえし、どうやってギブアップするかわかんねえからさ」
俺は仰向けのまま腕を交差させ、ばってんを作る。
『五朗丸、ギブアップと言うことで良いのか? もしギブアップと言うことなら、その体勢のまま三秒間維持してくれ。三・二・一……分かった。五朗丸ギブアップとしまして、勝者零!』
ふぅ、負けた。負けた。
この一年間、負けなしで何百もの裏世界の住人をぶっ殺してきた俺だったが、完膚なきまでやられた。しかし……俺は不思議と悔しい気持にはならなかった。
清々しい気持ちと嬉しい気持ちでいっぱいだった。
それにしても、世界は広いな。零のような化け物がいるんだからな。零は俺が戦い方を覚えれば素手でなら五分と言ったが、武器有りならば、千回やっても勝てると言った。それは間違いねえだろうな。結局零は武器を使わずに俺に勝った。あいつの実力の底が俺には全然見えねえよ。それだけ俺達の間には実力の差があった。
俺のダチはすげえ男だよ。
「先に教室に行ってるぞ」
零はそう言うと教室から出て行った。
「ああ」
と、返事をしながら零の足音が遠ざかっていくのを耳を済ませて聞いた。
階段を下りたんだろうか、もう零の足音は聞こえなくなった。
そして、俺は無人の教室で泣いた。六年ぶりに友達が出来た事が嬉しくて、俺を人間だといってくれたことが嬉しくて、涙を流した。
「ありがとうな……零」
俺は完膚なきまで負けて死んだ。三叉のスコーピオンの怪物は死んだ。
今ここにいるのは、ただの楠木夏樹と言う男。
俺はもう孤独じゃない。
俺には友達がいる。
六年ぶりに心が温かく感じた。




