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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第二回戦 第三試合
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第二回戦 五朗丸対零4

 小学生の頃の俺は学校のヒーローだった。


 小学校六年生だというのに身長は百七十センチあり、力も大人顔負けなくらいあったからだ。


 陸上大会の短距離走では市で一番早かったし、所属するサッカー部では全国大会にも出場することが出来た。部員十五人の小さな部活だったけれど、俺の活躍で全国にまでいけた。


 足も速い、サッカーも上手い俺の周りにはいつも人だかりがあった。


 けれど、中学に入って世界が変わった。


 一学期は順調だった。サッカー部では即レギュラーになれたし、人だかりも相変わらずだった。けれど、夏休みに入り俺の体に異変が起きた。


 朝起きると膝から肘から体中の関節が痛んだ。親が慌てて病院に連れて行くとこれは成長痛だといわれた。そう、ただの成長痛だった。その痛みは一月以上続き、やっと動ける様になった時には夏休みが終っていた。


 学校に向った俺は周りから好機の目で見られた。最後に会ったときには百七十センチだった俺が、夏休み明けには百八十センチを優に超えていたからだ。けれどこの時は俺も俺の回りにいる人間も、体に起こった最大の変化に気づくことが出来なかったんだ。


 一月以上ぶりの部活に出て俺は自分の変化に気づいてしまった。先輩からのパスを受けシュートを放ったとき、キャッチしようとしたキーパーの先輩がボールを弾き、手を押さえその場に蹲ったんだ。俺は駆け寄り、キャッチンググローブを外すと戦慄した。

 十指のうち親指以外の八指がへし折れていたからだ。


 俺の体の一番の異変は、異常な筋肉だった。

 調べてみると、俺の筋肉の密度は常人の二倍だった。

 握力腕力背筋力、どれを取っても俺は中学生の平均どころか、大人の平均値をも大きく上回っていた。


 けど、まだその時は良かった。友達の大半は俺を怖がるようになったが、何人かは凄い凄いと言ってくれた。

 サッカー部にはいづらくなり退部はしたけれど、ボクシング部の部長がそんな俺の噂を聞き、スカウトに来てくれた。ヘッドギアもつけ、グローブも付けるから安全だといい、俺を誘ってくれた。きっと日本一になれると言われ、俺は二つ返事で入部してしまった。


 そしてその日……監督の先生が実力を見るといい俺とスパーリングをした。そして……俺の放ったフックが先生の顎を捉えると……首が捻じ曲がり、先生は泡を吹いてそのまま動かなくなった。一生。


 これは事故だった。俺には殺す気などどこにもなかったし、それが分かったのか練習中の事故として取り扱われ、俺が警察に捕まることもなかった。けれど、この日から俺の周りの世界は何もかもが変わった。


 友達は誰一人より付かなくなり、俺に近づくと首を折られ殺されるという噂まで流れた。

 家でも家族が俺を腫れ物扱いするようになった。人を殺した息子だ。俺は腫れ物以外の何者でもなかった。


 その日から学校を卒業する日まで俺は学校で誰とも話す事無く過ごした。高校に行けば、誰も俺の知らないところに行けば、きっと昔のように友達が出来る。そう思っていた。だから俺は耐えられた。中学のクラスメイトが陰で俺の事を化け物と呼んでいる事を知っても。


 高校は電車で四十分の距離にある、遠くの高校に進学した。荒れている学校らしかったが、ここなら誰も俺の事は知らない、俺はまた友達が作れると思っていた。


 けれど、世界は俺にそんなには優しくなく、俺はそんな世界に適してもいなかった。


 この頃俺は身長が百九十センチを越えていた。そんな俺が目立ったのか、入学式の日に、三年の不良の先輩十人以上に洗礼を受けた。

 俺のように目立った新入生や不良の新入生が校舎裏に呼び出され、正座をさせられボコボコに殴られ蹴られた。俺以外の一年はみんな泣いて正座をし、写真に撮られ笑われて小便を掛けられていたが、俺だけは怯まなかった。

 先輩達の拳も蹴りも俺には微塵も効かなかったからだ。

 そんな俺にイラ付いたのか、一人の先輩がナイフを出し向けてきた。今の俺なら笑って相手にもしないような小さなナイフに当時の俺はビビッた。


 刺されたら死ぬと思い、震え怯えた。


 そんな俺の腹に先輩はナイフの切っ先をあて、いきがってすいませんと土下座しろと言ってきた。俺はそれに逆らわずに土下座した。そんな頭に先輩達は次々と小便を掛けた。

 けれど、俺は何とか耐えた。辛かった中学時代のような生活を送らないように必死に耐えた。

 歯を食い縛り涙を流しながら。


 そんな俺に一人の先輩が笑いながらあることを言った。


『見ろよ。図体が化け物みてえにでかいのに泣いてやがる』と。


 そこで俺は切れてしまった。切れて立ち上がり俺を罵った先輩の顔面を殴った。

 手に骨の砕ける感触と、粘土をこねるような感触が伝わった。ナイフを持った先輩が何抵抗してるんだよと俺にまたナイフを向けてきた。だから俺はナイフごと先輩の手を蹴り上げ、腹にサッカーで学んだボレーキックをお見舞いした。

 すると先輩は宙を舞った。まるで走り幅跳びの映像を逆再生しているかのように遠くまで飛んでいった。


 そしてその時、一人の先輩が気づいた。


 俺が最初に殴った先輩の顔が陥没し、鼻から血と脳しょうが溢れだしていることに。

 腹を蹴られた先輩も体をビクンビクンと震わせ、動かなくなった。


 俺はまた人を殺した。


 今度は事故などではなく、故意に二人も。


 そして、不良の先輩や新入生が悲鳴を上げた。こうして高校生活は一日で終わりを遂げ、俺は少年院に一年送られた。


 どこから噂が回るんだろうか、少年院でも俺は素手で二人を殺した化け物として、誰も近寄っては来なかった。揉め事があっては困るからか、部屋もずっと一人部屋だった。

 そして、出所の日親は俺を迎え入れる事を拒んだ。化け物の面倒なんて見れないと思っていたからだろう。


 そんな俺は施設に入れられた。けれど、そこでも俺はまた腫れ物扱いだった。食事も寝床も用意されたけれどやはり誰も俺に係わろうとはしてくれなかった。


 だから俺は施設を抜け出した。


 抜け出し……あるものを求めた。


 求め、暴走族からギャングからチンピラにヤクザにまで喧嘩を吹っ掛けた。もちろん全力を出して殺してしまわないように、力をセーブして。


 毎日毎日喧嘩をした。時にはナイフで刺されたりもしたが、切れ味も悪いバタフライナイフじゃ、化け物にはかすり傷を付けるのがやっとだった。

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