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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第二回戦 第二試合
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第二回戦 八王寺対十字6

 ある日、大きい仕事が入り込み、僕が出向くことになった。

 その頃僕は山百合時代と同様にナイフで戦っていたが、今回のごたごたの処理はナイフだけじゃ厳しいということになり、自分用の武器を作る事になった。


 色々考え、僕は無意識にこの鉄のブーツを選んでいた。


 鏡ちゃんは本当に良いのかと聞いてきたけど、僕はこれがいいと言った。足枷の幻覚に囚われていた僕は、自ら枷を取り付けることに決めた。足に常に感じる重みを誤魔化すために、五キロのブーツを履いた。枷の重みなのかブーツの重みなのか分からなくするために。


 そして先日、鏡ちゃんから死屍柴ヒルイの後継者を決める戦いがある事を聞かされた。はじめは断わるつもりだった。

 僕なんかがヒルイさんの後を継いでも誰かを傷つけるだけだろうと思ったから。だけれど、鏡ちゃんの口から『山百合からは黒百合には送らなかった秘蔵っ子が送られる』と聞き、僕は嫌な予感がした。

 

 山百合の生徒で僕らの一学年上にも一学年下にも大した生徒はいなかったはず。それなのに黒百合に送らなかったという事は……もしや……お姉ちゃんじゃないのか?  

 そう考えた僕は、参加を表明した。全てはお姉ちゃんの命を救うためにだ。


 僕の予想は当たっていた。山百合の候補者はお姉ちゃんだった。


 教室でアイマスクを外し三年ぶりに見たお姉ちゃんは綺麗になっていた。長かった黒髪は、更に伸び、美しく輝いていた。以前はしていなかった薄い化粧がとても似合っていた。


 僕はそんなお姉ちゃんをうっとりと眺めていたが、壇上に上がったお姉ちゃんは僕には気づかなかった。

 そっか。三年間で僕も大人びたし、髪型も髪の色も凄く変わったからしょうがないよね。少し悲しい気持ちになったが、僕の番が来て、はーいと返事をすると、お姉ちゃんが振り返ってくれた。


 僕の声を覚えていてくれたんだ。そう思い嬉しい気持ちが溢れてきたが、その気持ちはお姉ちゃんの顔を見て直ぐに消し飛んだ。怒りと殺意と驚きが入り混じったその顔を見て。


 そっか。そうだよね。お姉ちゃんは決して僕を許してくれないよね。


 けれど、いいんだ。僕はどんなに恨まれても、お姉ちゃんが無事でいてくれれば。

 僕の願いは唯一つ……お姉ちゃんにこの候補者争いから辞退してもらうことなんだから。


 マーダエージェンシーは、元々は黒百合の下部組織で、鏡ちゃんも黒百合の元殺し屋だった。山百合の為に子供を安く仕入れ、預け入れたり、フリーの殺し屋をスカウトして、黒百合や赤きガーベラに仲介したりしている。

 鏡ちゃんが代表に付き独立するまでは、黒百合の下部組織だったこともあり、今でも黒百合との繋がりは他の組織よりも強い。


 だから鏡ちゃんは知っていたのだ。


 黒百合の秘蔵っ子であり、山百合学園を中学二年で卒業したあの男の強さを。鏡ちゃんはその男が僕と互角かそれ以上の強さがあるかもしれないと言った。

 もし、そんな男とお姉ちゃんと殺りあったとしたらどうだ? お姉ちゃんが殺されてしまう。ダメだ。絶対にそんなことはさせない。僕がどんな手を使ってでも守ってあげるからね。


 学園で試練のルールを聞かされ、僕は喜んだ。同じ偶数班であり、点数を操作すれば二回戦でお姉ちゃんと対戦し……ギブアップさせることが出来る。

 その為に僕は教室で、一回戦で、お姉ちゃんを挑発した。

 きっとお姉ちゃんならば、僕の挑発に乗り、二回戦で当たるように動いてくれるはずだと思い。そして思惑通り、おねえちゃんと二回戦で当たる事になった。


 あとは多少怪我をさせてでもギブアップさせるだけだ。


 そう思っていた僕だったけれど、お姉ちゃんの一言で弱い頃の僕に戻ってしまった。足枷の言葉で。


 がちゃん。


 また耳に鎖の揺れる音がした。痛い痛い痛い。偏頭痛のようにズキズキと痛みが走る。あの時の……囚われていた頃の僕に戻ってしまうよ。


「ッ痛!」

 こめかみを手で押さえると、視界に倒れた人が映し出された。僕とお姉ちゃんの間に、額に包丁の柄を生やし、体を蛆に食い荒らされたママの死体が。

 不思議な事にそんなママの死体は足枷を付けていた。これは幻覚だ。


 消えろ消えろ。


 そう思っていると僕は気づいてしまった、お姉ちゃんの足にも枷が付けられていることに。


 そんな。


 お姉ちゃんダメだよ。


 そんなの付けていたら……死に囚われちゃ……ダメだよ。


 取ってあげないと。お姉ちゃんの枷を外してあげないと。


 手を伸ばし一歩踏み出そうとした時……僕の足元からガチャンと言う音が聞こえた。


 僕も枷に縛られていた。


 重くてこれ以上前に進めないよ。

 あの日のように一歩も前に進むことができないよ。


 僕の中に死の恐怖が呼び戻ってきた。

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