第二回戦 八王寺対十字2
掛け声と共に突きを繰り出す。
鉄製の柄での攻撃だ、華奢な体の僕では骨が砕けても可笑しくはない一撃だ。速度もさっきの鎌で切りかかるよりもずっと速い。
ずっと速いけど……僕の速度よりは遅いね。迫り来る攻撃をふわりと避ける。八王寺ちゃんは一撃では決められないと予想していたのか、二発、三発、四発と繰り出してくる。右に左に後ろに飛びながら僕は避け続ける。
「あはっ。当たらないよ!」
「……知っています」
攻撃を繰り出しながらも答えると。単調なまっすぐ突き出すだけの突きから、捻り込むような突きに変えてきた。その為に、先端についた刃が回り、左右に避けられなくなった。これじゃ、避けてもわき腹を切り裂かれる。僕は瞬時にそう判断し後ろに飛ぶと、合わせるように八王寺ちゃんも踏み込み、間合いを狭めた。
「……ッ!」
これじゃあ、避けきれない。当たれば、骨が砕ける。あぁあ、ゲームオーバーか。もっと……遊んでいたかったのに残念だな。僕は後ろに飛びながらも、上体を反らし、足で迫り来る斧の柄を蹴り上げる。鉄製の柄に鉄製のブーツがぶつかり、金属音を奏でる。
「くっ!」
斧が蹴り上げられ、八王寺ちゃんの口から声が漏れる。衝撃が手に伝わったんだろうね。そりゃあ、脚力対握力の勝負だ。手が痺れて当たり前だね。
八王寺ちゃんが弾き飛ばされた斧に引っ張られるように体勢が崩れた。僕は猫のように一回転しながら床に着地し、八王寺ちゃんの足に水面蹴りを放つ。
「ああぁっ!」
鉄のブーツに打ちうけられた足が痛んだのか、八王寺ちゃんは声をあげると、床にお尻から落ちた。
うーん。予定ではくるぶしを砕くはずだったんだけど、骨の折れる感触がしなかったな。カルシウム摂取を怠っていないのかな? 残念だね。そんな事を考えながらも、僕は八王寺ちゃんの上に馬乗りになる。
「ねえ、八王寺ちゃん。誰が誰を超えているって?」
話しかけながら、右手のアイスピックを八王寺ちゃんの心臓目掛け振り下ろす。
「ゲームオーバーだねっ!」
八王寺ちゃんは唯一の武器である斧から手を離し、迫り来るアイスピックを握る手を両手で掴む。武器を手放す事はなかなか出来るものではないが、八王寺ちゃんの判断力は高かった。
「答えてもよろしいですか? 私があなたをですよ!」
「へえ。僕が負けているとすれば、この三年で大きく成長した、八王寺ちゃんの胸のサイズくらいだと思うねっ!」
僕は左のアイスピックを目算Dカップの豊満な胸目掛け振り下ろす。
すると、八王寺ちゃんは片手を離し、左のアイスピックを握る手を掴む。
「あなたのその貧相な胸は相変わらずですね」
「へえ、絶体絶命の状態だというのに、減らず口がまだ叩けるんだねっ!」
下から抑えるよりも、上から押すほうが体重をかけやすい。じわじわと僕のアイスピックが胸に迫る。
「あはっ。無駄に胸がでかいから、ほら、先端がもう刺さりそうだよ! ギブアップするなら今じゃないかな?」
僕が笑いながら言うと、八王寺ちゃんはボソッと何かを呟いた。けれど、その声は小さく、僕の耳には届かなかった。
「えっ? なんて言ったんだい!」
顔を近づけ聞くと、八王寺ちゃんはまたボソッと話した。
「貧乳の僻みですね」
と、次の瞬間、八王寺ちゃんは、プッと何かを吐き出した。そして同時に僕の左目が燃えるように熱くなった。
「ああああああぁああぁぁぁっ!」
叫び声をあげながら、僕はアイスピックを放り投げながら八王寺ちゃんの上から飛びのき、熱さを感じる左目に触れると、白目の所に何かが刺さっているのに気づいた。
痛みに耐え引き抜くと、それは小さな針だった。
「仕込み針くらい警戒するべきですよ。昔私が教えなかったかしら?」
僕が左目を押さえ蹲っていると、八王寺ちゃんは斧を拾った。そして、グリップを回し、刃を立てる。
「さあ、命を刈り取ってあげましょう」




