第二回戦 一神対九門8
社長分かりましたよ。
僕は未熟な刀鍛冶でした。そして未熟な武芸者でした。
バスタードソードを自在に操り、裏世界の腕利きを何人も屠ってきましたが、僕が見ていたのは本当の武芸者ではありませんでした。
ああ、なんて思い違いをしていたんでしょうか。一神君にやられはっきり分かりました。彼のような武芸者が……芸術家がいるのでしたら、僕が筆を握る必要なんかなかったんですね。
僕は芸術家ではなく、絵画が好きな筆を作る職人でいればよかったんですね。この子も……バスタードソードも、他の僕の作った美しい筆達も一神君のような芸術家の手に授けたい。僕の絵は素人の遊びだったんだから。
ああ、もっともっと芸術家に筆を作り、心を揺さぶり動かされる絵画が見たかったよ。けれど……僕にはもう時間がないな。だから、僕は最後に一神君が残した至上の芸術を見ることにしよう。
震える手でバスタードソードを上げ、体を映す。
極限まで鍛えられ、鏡のように磨かれた刀身に僕を映す。
ああ、美しい。貫かれた刃が僕の肉体と言う大地から力強く咲き誇っている。なんて美しい傷であり、なんて美しい花なんだ。直刀は一神君の手に握られ、光り輝いているようだった。
僕の持つ武器とは違う。
たった一人の愛情を一身に受け幸せそうに微笑んでいるようにも見えた。これが、たった一つの武器を愛するということなのか。何十何百何千もの死線を共に潜り抜けたからこそ現れる美しさ。これは僕にはできない愛し方だ。
作り、何度か使ったら部屋に飾る僕には……。生まれて始めて誰かの為に武器を作りたくなった。一神君の為に、一神君に愛され続ける武器を。一神君と共に何十何百何千もの芸術品を作り上げていく筆を。
ああ、視界が霞んできた。
待ってくれ。最後にあれを見せてくれ。一神君が作り出した至上の芸術を完成させるためには、あれを見なければならないんだ。
刃を傾け顔を映す。
死に行く僕の顔は、絶望でも痛みでも悲しみでもなく、ただ、満足そうに笑っていた。
これはこれで……美し…………い。




