殺人鬼の暗躍
宿泊棟の通路は静寂に包まれていた。壁が厚く防音性も高く、室内にいる者の声も、テレビの音も通路には一切漏れ出さなかった。
逆に室内にいる者にも通路を歩くものが奏でる荒い息が届くような事はなかった。
殺人鬼は血走らせた目をキョロキョロと動かし、目的の部屋を探した。
見つけた。
息を押さえ込み、三号室の扉をコンコンとノックする。激しく叩きつけたい気持ちも必死に押さえ込みながら。
暫く無音が続くと、ガチャッと扉が開く。
「……どうした?」
三月が殺人鬼に不審な目を向けつつも扉を開けた。警戒はしているようで、左手には日本刀が握られている。
「……ぐっ!」
殺人鬼は三月の口を手で塞ぎながら、無理やり室内に入り込み、三月を押し飛ばす。ガチャ。後ろ手で扉をロックする。
「ッ! 何のつもりだ」
殺人鬼を睨みつけ、日本刀を抜刀する。
「……死ね」
殺気を篭らせた一言を発すると、後ろ手に隠した武器をゆっくりと構える。
「なっ!」
三月の目が見開かれ、唇が震える。どうしてこいつがこの武器を持っているんだ。
泊まるには広いが、戦うには狭い室内を走り、三月はもう一本の日本刀を取り抜刀する。殺人鬼の発する殺気から全力で戦わなければいけないと理解したんだろう。
「……何のつもりだ」
二刀を構え、間合いを計りながら聞く。
「死屍柴ヒルイになるのは……お前じゃない!」
殺人鬼が三月に飛び掛かる。




