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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第一回戦 虐殺愛好会ブルーローズ 掃討作戦 後編
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ブルーローズ掃討作戦 八王寺5

 さて、どうしましょう。


 顎などの肌の見えている部分から刈り取れば勝つ事は出来ますが。大振りになり避けられそうですね。かといってコンパクトに鎌を振れば、折れてしまうかもしれませんね。


「この鎌が折れてしまうのは避けたいですね。それなら……」

 振り回されるチェーンソーをかわしながら私は対策を考える。

「おっと、振り上げる攻撃は速いですね。もう少しでスカートが切られるところでした。それは困りますねっ」


 顔色を読み取られないように、微笑を浮かべながら攻撃を避けていると、自分の発言でピンと来た。攻撃する場所が見えないなら、見えるようにすればいいだけの話です。


 グッリップを回し刃を倒し、鎌から斧に作り変えます。

「さあ、ここからは解体ショーではなく、ストリップショーに演目を変えましょう」


 チェーンソーの刃をしゃがみ込み避け、直ぐに追撃を繰り出す。斧を槍のように扱い突きを放つ。これはダメージを与えるための攻撃ではなく、衣服だけをかすらせ、タートルネックのシャツとオーバーオールを切り裂くための攻撃です。

 これが実践ならこんな回りくどい攻撃はしないでしょう。多少、鎌が傷むのを覚悟で体を刺すのですが、これは試験であり、明日明後日と続いていくものです。

 特に明日は十字さんとの戦いが待っています。ここで武器を傷めるわけにはいきませんね。


「あう?」

 ジェイソンさんは不思議そうに喋った。喋ったというより鳴いたと言った方がいいかもしれませんが、反撃のたびに衣服をかすらせる私の意図が掴めないといったところでしょう。


 ジェイソンさんの攻撃をまたかわし、私は柄を短く持ち、コンパクトに振りきり胸を裂き――正確にはオーバーオールとTシャツですが――同時に後ろにとび柄を長く持ち振り下ろす。

 横に避けたオーバーオールとティシャツが縦にも裂け、ペロンと垂れ下がり、隠された装甲をあらわにした。


「……鎖ですか」

 ジェイソンの体には鎖が巻きつけられていました。あれで刀を防いだということですか。それでは、ここからは鎖の全貌を見せていただきましょうか。体のどこに鎖がなく、どこが守られているのかを。


 防御からの反撃を繰り返していた私は、今度は自分から飛び出した。鎌の柄を短く持ちながら、振り回されるチェーンソーをかわし、衣類を裂いて裂いて裂いて裂いて裂いていく。

 もしジェイソンの相手が力で攻め立てる人物なら、勝機は薄かったかもしれないが、体捌きに自信がある私のようなタイプとでは相性が良すぎるみたいですね。

 追撃に時間の掛かるような大きな武器では私を捉えることはできませんよ。


 タートルネックの首筋にも布のぶんだけ掠らせ、私は通り過ぎる。もう衣服はぼろきれを纏うようになっていた。ジェイソンもそれが分かったのか、このままではチェーンソーが破れた衣服を噛んでしまうと思ったのか、千切れた服を大きな手で掴むと、引き千切った。


 布が裂け、ジェイソンの裸体の上半身が晒されます。


「……いやっ」

 私は思わず声をあげた。そんな。私は何と戦っていたというんでしょうか。


「あはっあはははははっ! 八王寺ちゃん最高だね!」

 十字さんは笑い転げた。


 くっ。こんな事なら赤薔薇と戦うと先に言っておくべきでした。


 ジェイソンは鎖を体に巻きつけていた。教室で五朗丸さんが言っていた猛獣を繋ぐような鎖を。


 鉄の鎖ですから防御力は相当高いでしょうし、タートルネックで隠れた首の部分には鋼鉄の首輪を付けていましたので、首を狙ってきっていてもガードされていたでしょう。

 しかし、私はその防御力以上にその鎖の巻き方に声を失ってしまいました。

 まあ、『いやっ』と避けんだのでこれは言葉のあやですが。


 ジェイソンの鎖の巻き方は……亀甲縛りといわれるまるで亀の甲羅のような紋様を描き出す縛り方でした。


 うん。十七歳のうら若い乙女が見るようなものではありませんね。わー、胸のところってあんなふうに縛るんですか。綺麗な六角形が出来ていますね。


 ……失礼しました。


 著しく集中力をそがれながらも私は襲い掛かるチェーンソーをかわし続けた。


「どうしたの? 避けてるだけじゃ勝てないよー。あはっ」

 茶化す十字さんの声が耳に届く。この歓声も私の集中力を著しく害していた。

 黙ってください。


「……ふう」

 迫り来るチェーンソーをかわし、私は一息つく。

 落ち着け。もっと動きを洗練させるんです。そして良く見るのです。太い鎖で縛り付けられてはいますが、隙間はいくらでもあります。鎌の刃がいくら太かろうが、刺せない隙間ではありません。


 グッリップを回し、鎌に戻し私は恥らう高校生から、山百合学園の死神に戻る。


 浮ついた気持ちも恥じらいもすべて消え去り、あるのは冷たい殺意だけにする。ジェイソン対死神の始まりです。微笑を浮かべ、私は横に飛び、チェーンソーの一撃をかわし、丸太のように太い腕の鎖の隙間に鎌を振り下ろす。


「ぐうっ」

 ジェイソンの口から篭った悲鳴が上がる。


 鎌は一度振れば、二撃目に移るのに時間が掛かります。

 だからこの鎌を引き継ぐ時にその対策をいやって言うほど反復練習させられました。

 刃を引き抜きながら、バトンのように柄を回し、柄の先でジェイソンの顎を跳ね上げる。

 鉄製の柄です。普通なら顎が砕ける一撃なんですが、ぶつかるとガキンッと金属同士がぶつかり合う音がしました。どうやらジェイソンのマスクの原料も鉄のようですね。


 しかし、衝撃は伝わったようで、ジェイソンの体がぐらりと揺れた。私は横薙ぎに振るい、今度はわき腹の隙間に刃を突き立てます。


 刃先十五センチは刺さったでしょう。


 これで決ったかと思うと、ジェイソンはチェーンソーを乱雑に振り回しました。近くを飛ぶハエを落とそうとしているかのように、やたら滅多らにです。刃を引き抜きながら後ろに飛ぶと、傷口からは血がどくどくと噴出していました。

 このまま放っておいてても、五分もすれば失血死するでしょうが、私は追撃に動きました。


 死神は痛めつけて殺す存在ではありません。


 鎌で一思いに命を刈り取る存在です。チェーンソーを振りあげた瞬間、私は前に飛び、六角形の中心、心臓のある位置に鎌を突き立てます。


「おうっ!」

 心臓を貫かれたジェイソンが短い悲鳴を上げると、マスクの隙間から血が滴り落ちました。吐血したんでしょう。


「神のご加護がありますように。アーメン」

 死神がそっと呟き鎌を引き抜くと、手からチェーンソーが落ち、巨体が切り落とされた巨木のように倒れていきました。

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