ブルーローズ掃討作戦 六波羅6
「……」
叫ぶが誰も返事をしなかった。
何をしているんだ。聞こえなかったのか? そもそもこの僕がこんな大怪我しているんだぞ。なぜ直ぐに助けに来ないんだ!
「二ノ宮ぁ! さっさと僕を助けろ!」
「えっ? 何言ってるのー? まだ軽症じゃん。いけるいけるー」
「なっ! 四家! お前でいい。早く助けろよ! 金ならいくらでも払ってやるからさぁ!」
「むり。めんどい」
「ふざけるなっ! 八王寺! お前だ。お前なら助けてくれるだろ!」
「ルールを聞いていなかったんですか? 敵の横取りはしてはいけないんですよ」
微笑を浮かべ八王寺は言ってきた。
「十字! お前なら助けてくれるだろ! 金なら払ってやるからよぉ!」
「幾らくれるの?」
十字は離れた位置ながら、しゃがみ僕の顔を覗き込むように言ってきた。
こいつなら金で釣れる。希望が見えてきた。
「五……五百万ならどうだ! 今僕を助ければ五百万を必ずくれてやる!」
五百万なんて僕の命に比べればゴミみたいな値段だ。父様だってぽんと払ってくれるだろう。
「五百万ってマジで! うわー……僕も安く見られたな。僕の手が借りたいなら、その十倍の五千万は積んでよねっ。アハハ」
十字は楽しそうに笑った。こいつは、はなから僕を助ける気なんてなかったんだ。
「ぐうぅ……そうだ、百鬼ぃ! いるんだろ! 僕は降りる! だからさっさと助けろよぉ!」
痛みに堪え、喉が張り裂けるほどの大声を出す。
「……無理だな」
遠くから、百鬼の声がする。
「俺の位置から助けに行っても、その前にジェイソンに首を切り落とされる。それから……赤薔薇が六波羅に言った言葉覚えているか?」
なんでこいつはこんな大事な時に離れた位置にいるんだよ!
赤薔薇が僕に何を言ったんだ。痛みで思いだろうにも、思考が霧散し思い出せなかった。
「助けてよぉ。なぁ。赤薔薇。父様に言って、おまえが死なないように組織長に進言してもらうからさぁ。だから……殺さないでくれよぉ」
候補者達がダメならばと、僕は殺さないように赤薔薇に頼んだ。
「あぁ。いい、命乞いだわ」
赤薔薇の声が耳に届くと、僕の思考はまとまり、あの言葉を思い出した。
『自分が絶対的な強者だと思っている人間の手足を捥いで、地べたを這わせて、命乞いをさせながら首を切り落とす』と言う言葉を。
「あっ……」
僕が命乞いをしたって事は、次は……。
「ジェイソンちゃんフィナーレよ」
ドゥルンドゥルン。エンジン音がまた鳴ると、どんどん近づいてきた。
「やめっ! あがあああああああぁ――――――」
首に衝撃と肉が爆ぜる激痛が走り、僕の視界は黒く染まった。