ブルーローズ掃討作戦 六波羅3
「君も助けに行くつもりか?」
「……助け?」
小さな体の小さな頭を傾ける。
「ニノちゃん強い」
「はぁ? もう少し日本語を喋ってもらえないか? 二ノ宮が強いからなんだって――」
「うあああああぁ!」「ぎゃああああっ!」「がっあああああ!」
僕の言葉を遮り、何人もの悲鳴が上がった。
「ピエロさん。もっと全力できてよー。もっと楽しませてよねー」
ピエロに囲まれながらも二ノ宮はダンスを踊るように軽やかに動き回った。鋏を振り回しながら。
二ノ宮が動くたびに血飛沫が舞った。嘘だろ。投擲されたダガーを鋏ではさんで止め、投げ返し、青龍刀をかわし、腕を切りつけ、わき腹を刺し、別なピエロの攻撃を捌いてまた首を突き刺した。
一瞬だ。ほんの一瞬で一体のピエロを殺し、一体に致命傷を負わせた。
まずい。このままじゃ二十点取るどころか、僕の相手がいなくなる。それだけは避けないと。
慌ててピエロの残党を倒そうと、駆け出し四家の背後まで迫ると、四家が飛び出した。百メートル走のダッシュのように、一瞬でフルスピードになるとピエロの群れに向かい飛び上がった。スピードに乗った跳躍はまるで弓矢のように早く、隕石のように二ノ宮の横に降り立つと、教室で重いといったナックルガード付の無骨なナイフを青龍刀を構えるピエロに向かい振るった。
小さな体で振るえるのか疑問なナイフを四家は軽々と振るい、ピエロの喉を切り裂くと、その場で独楽のように周り、もう一本のナイフを、別なピエロの首に突き立てた。
「目が回る」
慌てて駆け寄る僕の耳に四家の呟くような声が届いた。なんだこの女は? 無茶苦茶だ。ナイフを一見振るえているように見えるが、間違いなく振った後の重量と速度が生む遠心力に負け引っ張られていた。それを補うために自分から回って更なる遠心力を生み出し、二撃目に繋げているのか? そんなふざけた戦い方があるのか?
「おー。四家っち強いねー」
二ノ宮がむちゃくちゃな戦い方をする四谷に声をかける。敵の攻撃を受け流しながら、気楽にだ。
なんなんだこいつらは? ふざけた武器の女にふざけた闘い方をする女。なのに……なんでこんなに強いんだ? この強さは竜胆の親父の護衛並み……いや、それ以上なんじゃないのか?
っと、いけない。今はそんなこと考えている場合じゃなかった。ピエロのうち、四体はもう倒された。残りは六体。これ以上出遅れてはいけない。
僕がそう思うと、僕よりは先に動いた八王寺と十字がピエロに飛び掛った。
「少しは残しておいてよね!」
十字が高い跳躍を見せ一体のピエロに飛び掛る。四家のような矢のような速さではなく、十字の跳躍は空中に浮くようにふわりと跳んでいたので、ナイフを持つピエロの格好の的だった。
馬鹿が。ピエロの武器をちゃんと見ていなかったのか? あれはサーカスで使うような投げナイフ。つまり投擲用の武器だぞ。それを相手に飛び掛るなんて愚の骨頂だ。
一人脱落だな。
ピエロが二本のナイフを十字に向かい同時に投げた。
「シャキ―ン」と、擬音を口にすると、十字は袖口に隠していたアイスピックを取り出し、ナイフを払い落とした。
そして着地すると、素手になったピエロの首にアイスピックを突き立て、近くにいたピエロの腹に回し蹴りを叩き込み吹き飛ばした。
女の蹴りでピエロが十メートルは吹き飛んだ。そんな光景に目を奪われていた別なピエロの腹にも、十字は回し蹴りを叩き込む。二体のピエロが処刑場の端まで飛んでいく。
「その二体は僕の相手だから二ノ宮ちゃんも四家ちゃんも殺っちゃだめだよ。もちろん八王子ちゃんもね。あはっ」
八王寺にからかうような笑みを向ける。
「……殺りませんわ。あなたのお下がりなんか……もういりませんから」
八王寺はフェンスの上に立ち、戦況を見つめながら言うと、青龍刀を持つピエロに刃を畳み斧のような見た目の鎌を向けた。
「そのピエロさんは私が殺らせてもらいますね」
十字の相手二体除いて、残りは三体。ヤバイな。僕の相手がいない。いや、待てよ。この雑魚は一体三点であり、五体倒さなければ、赤薔薇の十五点には届かないじゃないか。
何で僕はこんな簡単な事を見逃していたんだ。
将を射んと欲すれば先ず馬を射よと言うが、別にここは戦場じゃない。最初に将を落とすことも可能な場所だ。簡単な計算もできないような馬鹿どもには三点の雑魚の掃除を任せ、僕は赤薔薇とジェイソンを打ち倒し、二十五点を貰うとしよう。
僕はフェンスを飛び越え、奥で戦況を見守る赤薔薇とジェイソンに向った。




