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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第一回戦 虐殺愛好会ブルーローズ 掃討作戦 前編
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ブルーローズ掃討作戦 六波羅2

「全員揃いましたね。それでは行きましょう」


「楽しそうだねー」

 二ノ宮が、遠足気分で言ってくる。うん。どうせその間抜け面も、僕の闘いを見たら凍りつくんだろう。精々今のうち笑っていろ。


 百鬼は入り口横にある郵便受けを開け、中に隠されたパネルの数字を押し、入り口の鍵を開けた。

 虐殺愛好会ブルーローズのショー会場は常にこの電子ロックで施錠されている。施錠の番号は毎回変えられ、参加者に郵送で送られてくるナンバーでしか開かないようになっている。


 百鬼を先頭に中に入ると、長い階段の一本道になっていた。前に来た時と一緒だな。通路を進み、また電子錠をあけ扉を潜ると、昼過ぎだというのに扉の先は真っ暗でなにも見えなかった。


 なぜ真っ暗なんだ?

 

 中には赤薔薇達がいるんじゃないのか?

 もしや、これは何かの罠か? そう考えていると、突然大きなラッパの音が聞こえた。続けて、スピーカーから流れているのか、大音量の軽快な音楽が流れ出した。


「……耳痛い」

 ボソッと僕の後ろに立つ四家が呟いた。


「曲選びの趣味悪いね」

 今度の声は十字だろう。


 曲調が激しくなっていくと、突然ピタッと止み、空間に静寂が流れた。


「……」

 全員押し黙ると、今度はドラムロールが流れ出した。


 ドゥルルルルルルルルルルルッドゥドゥン!


 パッとスポットライトが付けられ、処刑場が照らし出された。

 

「レディースアンドジェントルメン。本日はブルーローズ、赤薔薇ショー劇場にお越しいただき真にありがとうございます。今回はビップ中のビップがいらっしゃるということで、赤薔薇支部の全人員で最高のパフォーマンスをさせていただきますっ」

 スポットライトに照らされ、ボンテージ姿に蝶の形をしたマスクを付けた女――赤薔薇が挨拶をした。

「それでは赤薔薇支部全パフォーマーの登場です。こんな機会は滅多にないので、目を輝かせ、血をたぎらせてごらん下さい!」


 突然スポットライトが消えると、室内に明かりがともった。


 急に明るくなり、目が眩んだが、僕は薄目を開け劇場の中心を見た。この劇場の見た目は、小さなコロッセオのようになっていて、観客席は百席ほどあり、中心の闘技場を囲むように出来ている。  僕らがいる場所も観客席だ。

 そして闘技場の中には赤薔薇と、ナンバーワンパフォーマージェイソンにピエロのマスクを被ったパフォーマー達が勢ぞろいしていた。


 ジェイソンはだぼだぼのタートルネックの長袖シャツの上にオーバーオールを身に纏っていた。足元は裸足だ。 

 ピエロは、サーカスのピエロのような道化師の衣装に身を包んでいた。

ジェイソンを除いたパフォーマーの数は十人だ。雑魚は一体三点だったから、計五十五点か。まあ、二十点も取れば、僕の一位抜けは揺るがないだろうな。


「百鬼様、本日はご来場いただきありがとうございます。それでは、お客様のご用意した、可愛い可愛い兎ちゃんはどちらにおいでですか?」

 赤薔薇が、舞台女優のように声を張り上げ言ってくる。


「申し訳ございません。ショーの兎は持って来れませんでした。けれど替わりに……もっと面白いパフォーマンスをさせてあげますよ。そうですね。兎を狩る、狩人を狩るパフォーマンスなんてどうですか?」


 手でメガホンを作り、赤薔薇に答えると、会場に殺気が膨れ上がった。


「……青薔薇のやつに嵌められたって事ね」

 赤薔薇の察しはよく、百鬼の言葉で自分の立場を理解したようだった。

「お前達は逆桜ですかい? それとも十大組織の他のアサシンなのかい?」


 口調がショーの進行役からもっと毒々しいものに変化した。一言一言に含まれる殺気が肌をひりつかせる。ふん。さすがは序列上位の組織の幹部なだけはあるな。


「百鬼……失礼、百鬼先生」

 僕は言い直し百鬼を呼ぶ。

「そろそろ武器を出してもいいですか?」


「ああ。それじゃあ、武器を出してください」


 百鬼の指示を受け僕達は武器を取り出す。


「坊や達! こっちも仕事道具を構えなさい! 今日は演目を変更よ。赤薔薇を潰しに来たおこちゃま達の血祭り解体ショーに変更よ。さあ、ママを喜ばせなさい!」


「キャハハハハ。楽しい、楽しいショーの始まりだー」

 ピエロマスクの一人が笑うと、他のピエロどもも笑い出した。


 一人のピエロが笑いながら処刑場の端に置かれた木箱を開けると、中に納められた武器を次から次に他のピエロに投げ渡した。五人が小ぶりなダガー、五人が大きな青龍刀を二本づつ装備した。ジェイソンもドタドタト足音を立て、木箱に駆けていき、中からチェーンソーを取り出した。


「ジェイソンちゃん。ママの武器も取っておいで」


「……」

 ジェイソンは喋らずに頷き、木箱に手を突っ込み鞭らしきものを取り出し、赤薔薇に手渡した。


「いい子ね。ジェイソンちゃん」

 ジェエイソンの頭を頭を撫でると、地面に向かい鞭を振るった。

「さあ、来なさい。最高のショーを魅せてやるわ」


「それじゃあ皆さん、第一次試験開始です! 戦って結構です」


 やっとか、どれだけ待たせるんだ。僕は童子切を抜刀し鞘を投げ捨てる。刃が光を浴び煌く。ああ、美しい刀だ。僕が振るうのに相応しい。僕が童子切をうっとりと眺めていると、横を二ノ宮が駆け抜けていった。


「キャッホー。戦だ戦だ。チョッキンチョッキン」

 と、ハサミを開閉しながらピエロの輪に駆け出していく。しまった。先を越された。僕が慌てて追いかけると、二ノ宮は客席を駆け下り、闘技場と客席を隔てるフェンスを軽々と飛び越え、着地で速度を落とすことなく駆け続けた。


「そりゃあ!」

 一体のピエロが青龍刀を振るうが、二ノ宮はそれを楽々かわし、喉にはさみを付き立てた。ふん。二番に選ばれただけあって腕は確かなようだな。


「ああ! 坊や!」

 赤薔薇が嘆くような声を出す。

「その子を殺っておしまい!」


「ハイ! ママ!」

 ピエロが一斉に返事をし、囲う様に襲い掛かる。これは終ったな。

 二ノ宮がいくら強かろうが、九対一で勝てるほど戦いは甘くない。二ノ宮が二、三体倒し負けたら、残りは僕が相手にしてやろう。そう考え高みの見物を決め込んでいると、八王寺と十字が駆け抜けていった。加勢でもするつもりなのか?


 ふん。馬鹿なやつらだ。僕らは同じ教室に集められた候補者達であって、仲間でもなんでもない。そもそも助ければ、二回戦や三回戦のライバルを増やすことになる。競い合っているというのに、ライバルを増やす行為は馬鹿としか言いようがないな。


 そういえば四家だけは駆け抜けていないな。

 あいつには多少の脳ミソがあるのかと思っていると、四家が僕の横をのろのろと歩いていった。

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