表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第一回戦 虐殺愛好会ブルーローズ 掃討作戦 前編
25/153

ブルーローズ掃討作戦 六波羅

 百鬼が候補者に向かい、「間もなく赤薔薇支部に付くので準備してください」と、手でメガホンを作り言った。


「やっとか」

 硬いバスの座席に座っているのも後僅かか。他の組織の兵隊どもならともかく、この僕を座らせるんなら、もっと豪奢な座席のある移動車を用意して欲しいものだ。リムジン以外の車に乗り慣れてない僕としては、このバスの座席は窮屈で揺れも多く、何よりも硬く居心地が悪かった。


 まるで拷問だ。


 学校の座席だってそうだ。木製の椅子に僕を座らせるなんて、プライドも健康状態もめちゃくちゃだ。木の椅子ならばうちの邸宅にはデザイナーに作ってもらってウッドチェアーがいくつもあるが、学校の椅子は比べのにならないほど座り心地が悪かった。あれならずっと立っていたほうがマシだな。


「見えてきましたね。あそこが赤薔薇支部になります」


 百鬼がまるでバスガイドのように赤薔薇支部を手で指し示した。


 見た目は廃ビルのようだが、中は改装されており、闘技場のように作られている。

 中心でパフォーマーが解体を行い、ぐるりと囲んだ席から観客が見物するつくりになっている。十席ほどのVIP用の二階席も用意されている。


 どうしてこんない詳しいのかと言うと、僕はブルーローズの解体ショーを今まで五度見に来たことがあり、そのうち二回は赤薔薇支部の公演だったからだ。

 つまり、僕は赤薔薇も、ナンバーワンパフォーマーのジェイソンも、他のパフォーマーも知っている。入場の際はマスクの着用が義務付けされていたので、相手は僕の事が分からないだろうが。


 パフォーマンスは生きたターゲットをバラバラに切り刻み惨殺するショーだ。有名政治家や、裏の世界の殺し屋に、人身売買されたやつらを切り刻むのを酒の肴に楽しむ上流階級の娯楽だ。至上の娯楽場といってもいい場所だったので、潰すのは心苦しいが、これもすべては死屍柴ヒルイの名を継ぐためだ。僕がヒルイの名を継いだら、復活させればいいだけの話だな。


 僕は、関東竜胆組系菖蒲組組長兼竜胆組若頭の菊池原公平の長男として生まれた。

 父様は竜胆組のナンバーツーであり、次期竜胆組組長といわれている。

 菖蒲組の組としての武力は、竜胆組に匹敵、若しくは凌駕している。経済力では菖蒲組の上を行くヤクザはいないだろう。


 僕はそんな父様の下、英才教育を施された。学業も武術も最高の教師人に囲まれ教わってきた。学業ではこの国最高峰の大学を一年で飛び級卒業した。武力だってもう、うちの組の者では相手にならないほどの強さを身に付けている。

 竜胆組系で僕を超える強さを持つものは、一人か二人と言ったところだろう。

 特に日本刀の扱いでは他の追随を許さないほどの腕前だ。日本のありとあらゆる剣術流派の師範を師として呼び、一月足らずで免許皆伝を頂いた。一神や三月の素人臭い剣術とは、一線を画す技量が僕にはある。例え相手が死屍柴ヒルイだといっても、一対一なら勝つ自信が僕にはある。


 至上の頭脳と、極上の腕を持つ僕こそが、この裏世界の覇者にふさわしいだろう。


 竜胆組長もそのことが分かっているんだろ。だから子飼いの兵隊ではなく僕を推薦したんだ。

 

 いずれは竜胆組のトップに立ち、この裏世界を統べるつもりだったから、僕はこの死屍柴ヒルイの後継者の話が来たとき二つ返事で合意した。僕みたいな高貴な人間がいつまでも誰かの下にいていいはずがない。父様はともかく、竜胆組長のような、古い人間にいつまでも上に立たれているのは気に食わなかったしね。


 そもそも竜胆組長はさっさと引退すべきなんだ。戦後一代で竜胆組を作り上げた手腕は評価に値するが、それでも今は他の組織に押され、十大組織の序列が六位まで下がっている。

 武力も経済力も下降の一途を辿りっきりだ。古いやり方しか知らない老害はこれだから困るんだ。


 僕ならまず最初に、三叉のスコーピオンを傘下にいれるね。馬鹿な子供達なら、小遣い程度の金で薬の売人をやってくれるし、大本の名前を聞かずにも働いてくれる。捕まっても多少、少年院に入るだけで済むからね。それに歳が下がれば下がるほど怖いもの知らずに暴れてくれる。


 実際に僕は三叉のスコーピオンを傘下に入れるためにリーダーの門脇とは何度も会食をしている。


 この馬鹿な人間しかいない裏の世界で、門脇は僕と話をするに値する頭脳を持っていた。まあ、僕には遠く及ばないけれどね。


 しかし、門脇の目標とする未来の話は面白かった。この死屍柴ヒルイの後継者の話がなければ、僕も一枚噛みたかったくらいだ。この十大組織を潰す計画に。

 

 十大組織は十年前までは五大組織と呼ばれていたようだ。一位に赤きガーベラがいて、二位に彼岸花、三位に竜胆組、四位に逆桜、五位に紅花商会がいた。


 始まりは四十年近く前らしく、海外マフィアが日本の利権をこぞって奪いに来たのを機に、ヒルイと竜胆親分、彼岸花のジョン・ドゥが中心になって結成されたようだ。


 その後五大組織とヒルイの活躍で海外マフィアを追い出し、西日本の侵攻を食い止めたという伝説がある。


 しかしそれも昔の話。今では五大組織は東日本に新しく生まれた黒百合や山百合に押され、竜胆組も抗争で水仙会に破れ、今では十大組織になってしまった。


 これもすべては元五大組織の老害達が、武力の使い方も知らずにのほほんと生活していたのが原因だ。僕がもっと早く生まれていたら、さっさと危険な芽は摘み取っていたというのに。


 馬鹿な大人は無知な子供以上に嫌いだ。


 門脇はこのままでは十大組織は他の序列上位の組織に潰されると言っていた。僕もその通りだと思う。表の世界のパイプ役である逆桜はともかく、落ち目の竜胆組と、黒百合に仕事も人員も奪われている赤きガーベラは間違いなく潰されるだろう。

 そこで門脇は竜胆組と三叉のスコーピオンが手を組み、組織力を上げ、水仙会、黒百合、山百合、彼岸花、赤きガーベラを潰そうと持ちかけてきた。利用価値の高い紅花商会やマーダエージェンシーさえ残っていれば、新五大組織は成り立ち、五大組織を再構成し、他の組織を次々と傘下にいれるというものだ。


 面白い。


 面白い――が、頭が足りていないな。

 

 真っ向からぶつかってどうする。


 竜胆組と三叉のスコーピオンが手を組めば、黒百合や水仙会は潰せるだろうが、甚大な被害を生むだろう。そうなれば他の組織をけん制することも難しくなる。だから、門脇に僕が知恵を与えてやった。黒百合には赤きガーベラを、山百合には彼岸花をぶつければいいと。


 互いの組をぶつけることなんて簡単なこと。どこにでも火種はくすぶっているし、殺しの狂気は渦巻いているんだから。


 だが、まだその時ではない。まずは僕が菖蒲組の全権を握り、父様が竜胆組のトップに立ってから行わなければならない。竜胆の親父はきっと抗争を止めようと兵を出すだろうからね。革命後うちの組が弱体化していたら何の意味もない。


 だから僕は待った。竜胆の親父を暗殺するタイミングを。急いて暗殺失敗をしないようにじっくりと機を待っていた。


 しかしそれよりも先に、ヒルイの後を継ぐチャンスが舞い込んできた。僕が死屍柴ヒルイになれば菖蒲組の評価が上がり、竜胆組系の幹部会で父様を次の組長に推薦することも出来る。

 その後は火種に風を送り大火を上げさせれば、この東日本の世界は僕達菖蒲組のものになる。

 フッ。笑が止まらないな。


 神は僕の味方をし、背を押してくれた。


 まずはこの第一回戦を圧倒的な強さで勝ち抜いてやろう。

 二回戦で僕に当たるやつが震え上がり、棄権するほどの強さを見せ付けよう。


 さあ、革命の始まりだ。


 この候補者争いを勝ち抜き、東日本の裏の世界に光臨するこの僕、菊池原公明の王になる革命の始まり始まり。


「覇道を歩むとするか」呟きバスを降りると、四階建ての大きな廃ビルの入り口前だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ