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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第一回戦 山吹組掃討作戦 後編
20/153

山吹組掃討作戦 三月3

「やるのか……俺の腕を知ってなお……やるのか?」

 眼光を鋭くし、睨みつける。


「……やるしかねえっすよ」

 怯えた目を向けながら、鹿島はドスを振るった。


 元々はうちの組員だ。その腕は確かで、一撃一撃が的確に俺の急所目掛け振られていた。しかし……こんな攻撃じゃ俺にはかすらない。長い髪をたなびかせながら、俺はその攻撃を体捌きだけで避ける。


「……そんなに薬が恋しいのか?」


「……恋しいっすよ。あれがないと……あれがないともうダメなんすよ」


 一年前鹿島は水仙会を破門された。

 その理由は薬をやったからだ。裏の汚い仕事を潰すうちの組にいて、薬をやるというのはタブーだ。それを破ったこいつを親父は即破門した。その後どうなったかは耳に入ってこなかったが、まさか山吹組にいるとはな。


「坊達を殺れば上物をくれるんすよ! 死ねよ! 死ねよ!」

 鹿島は唾液を撒き散らしながらドスを振るった。


「鹿島ぁ。お前は親父に任侠道ってもんを教わったんだろうが!」

 俺が鹿島の指ごとドスを切り上げる。


 指とドスが宙を舞うと、鹿島が傷跡を押さえうずくまった。切り落としたのは左の中指と薬指だった。

 「指ぃ。指があああああぁ」


「親父はお前をぶん殴って破門にしたが、それでも薬を止められないって言うんなら、俺がその指全部切り落としてやる」


「やっ、止めてっ」

 痛みで顔を歪めながら、怯えた目を俺に向けてくる。


「……二度と薬に手をださねえって言うんなら止めてやる。お前は俺の家族だった男だ。親父同様、俺だって家族を傷つけたくはねえ」

 顎に刀の切っ先を付きつけ俺は言った。

「それにお前には嫁も娘もいるんだろ。こんな薬でやせ細った顔を見せるんじゃねえよ。薬を絶ってもう一度……うちの組の門を叩け。親父には俺が話を通すからよ」


「坊……すまねえっす」

 鹿島は蹲り泣いた。


「立って少し離れていろ。お前だけ殺さねえように話を通すからよ」

 顎から刀を放し血を払った。

 「落ちた指も直ぐにくっつけば、元通りになるだろ」


 鹿島に語り、落ちた指に視線を移すと、俺はふと疑問を持った。落ちた薬指には、指輪が嵌まっていなかったからだ。


「……鹿島……指輪はどうした?」


 ピックッと鹿島の体が震えた。

「……薬代の為に……売っちまいました……」


「そうか」

 宝物と言った指輪をこうも簡単に売っちまうのか。

「新しいの買ってやれ。嫁さんのもどうせ売っちまったんだろ?」


 俺が聞くと、鹿島は更に震えだした。


「……嫁さんと別れたのか?」


 この質問にも鹿島は答えずに、更に体を震わせた。どういう事だ? 指輪を売ったんでも、嫁さんと別れたんでもないのか? なぜこいつはこんなにも体を震わせる? 何か露見する事を恐れているのか? 俺に何か気づかれる事を……。

 

 すると、ふと俺の中で答えが出た。


「……鹿島……お前の嫁さん……今どこにいる?」


「ひっ!」

 怯えた声を出すと、頭を抱え震えだした。


 俺は震える鹿島の肩に日本刀を突き刺す。

 絶叫が上がるが、俺は気にせずに質問を続ける。

「風俗にでも売ったか?」


「すっ、すいやせん! 嫁は風呂に沈めました!」


 風呂とはソープのこと。沈めるとは借金の肩に売り飛ばすとのこと。


「馬鹿やろうが! お前の宝物を風俗に売ってんじゃねえよ!」

 日本刀を引き抜き、顔を蹴る。


「すいやせん! 薬止めて、嫁も娘も買い戻します!」


 この言葉で、俺の中の何かが壊れた。

「娘もって……お前、餓鬼まで売ったのか?」


「すっ!すい――」


 返事を待つ事なく首を切り落とす。こいつは俺の出自を知っているはず。それを知ってなお餓鬼を売ったんだ。

 生かしておく理由はもうなかった。


「チッ!」

 舌打ちし、死体を見下ろす。

「お前の嫁と娘は俺が助け出すから……あの世から見てろ」


 俺は顔を上げ、次の相手を探す。今ので点数は二点。誰が相手だろうが構わないが、もう少しは点を取っておくか。辺りを見回すと、俺と教師以外は戦闘中だった。


 九門は雑魚の腕を剣で切り落としていた。細身の剣に見えるが、強度は強そうだな。しかしその剣よりも目を引くのが、九門の表情だった。斬ることが楽しくてしょうがないといった感じの恍惚の笑みだった。


「……快楽殺人者か」


 零は斧で幹部を圧倒していた。あいつは強いな。巨大な戦斧を軽々と振り回し、力で攻めていた。あの攻撃力の前では防御など無意味だろう。相手をする幹部の片腕は切り落とされ、隻腕の状態だった。勝負あったな。


 五朗丸は、スキンヘッドの幹部を片腕で吊るし上げ、「弱ええ。弱ええ」と、笑いながら罵っていた。

 あいつは快楽殺人と言うよりも、単純な戦闘狂だろう。力勝負したなら俺では勝ち目がないが、力自慢の戦闘狂を相手にするのは容易いな。あいつと二回戦で当たっても脅威ではないだろう。


 問題はあいつだな。一神を見る。


 一神の相手は幹部の中でも相当な腕利きのようだった。水仙会の幹部と比べても遜色ないほどの強さだったが、その相手を、一神は圧倒していた。

 動きのキレ、技術共に一神が一枚も二枚も上だった。

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