表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
プロローグ
2/153

十大組織長会談

 高級ホテルの最上階をぶち抜いて作ったビップルームに、一人を除いてこの部屋の醸し出す高級感に良い意味でも悪い意味でも似合っている十人が、部屋の雰囲気にマッチしたこれまた高級そうなソファに深く腰をかけていた。

 十人は唯一ソファに腰を下ろしていない、燕尾服に身を包んだ初老の紳士に視線を傾けていた。


「それは本当なんですか?」

 ドレスを身に纏った二十代後半ほどの女が燕尾服の紳士に話しかけた。その顔には酷く動揺の色が現れていた。


「姫宮様本当でございます」

 燕尾服の紳士は、見た目にあった落ち着いた口調で、ドレスの女、姫宮に答えた。


「そんな……」

 姫宮は唇を振るわせ呟いたが、他の十人も衝撃を受けたようで、目を見開くや、タバコを深く吸い込むなど各々の驚き方をした。


「と言う事は……戦争になりますかねー」

 両手を上げ、驚きを露にしながら、その人物は言った。しかしその人物は声をボイスチェンジャーで変えているので、姫宮のように本当に驚いているかどうかは声だけでは判断出来なかった。


燕尾服の紳士はその人物に顔を向ける。

「ジョン・ドゥ様がおっしゃられた事をご主人様も危惧してございます」


「やっぱりねー。だから僕らを呼んだって訳かー」

 ジョン・ドゥは僕と言ったが、デフォルメされた兎の被り物を頭から被っていたので、男か女か判断は出来なかった。服装はタキシードを着ていて、首からは大きな懐中時計をぶら下げている。まるで不思議の国のアリスの白兎のコスプレのようだ。


「それで狩谷ちゃん、ヒルイちゃんはなんて言ってるんだい?」

 ジョン・ドゥは燕尾服の紳士――狩谷に話しかけた。


「ご主人様は、皆様にある提案をし、戦争を回避しようと考えております」

 狩谷は十人のそれぞれの顔を見つめると、ポケットから一枚の紙を取り出し、読み上げた。

「儂、『死屍柴ヒルイ』は数年前から肉体の衰えを感じ始め、先日の戦いにて片腕を失った。そして決断した。今のままでは一、二年もすれば東日本の楔の役目も、西日本からの防壁となることも出来なくなるだろう。そこで今回、『二代目死屍柴ヒルイ』を襲名する後継者を選抜することを決めた。しかし、これは東日本の命運を託す人物の選抜でもあるので、儂一人の一存で決めることは出来ない。そこで儂が考えた方法は、諸君ら『十大組織長』が一人一人代表者を選抜し、儂が課すいくつかの試練を乗り越えたもの一人を二代目死屍柴ヒルイを襲名させるというものじゃ――」


「ちょ、マジッすか!」

 狩谷の話の途中で、グッチのスーツにグッチのサングラスをかけ、指輪やブレスレットネックレスといったアクセサリーを品がない程全身に身に纏った男が口を開いた。

 年のころは二十代中半と言った感じだろう。髪型がホスト風の茶髪の長髪で、風貌が知恵の足りなそうな口調とよくマッチしていた。


「鏡谷さん、まだ話は途中なんだから、最後まで聞いてから質問してくださいよ」

 ホスト男鏡谷を唯一室内の雰囲気に合っていない一際若い、眼鏡をかけた男がルービックキューブをいじりながら窘めた。

 二十歳になっているかどうかも怪しい容姿であり、男と言うよりも、少年と言ったほうが合いそうだった。


「悪りぃ、悪りぃ。興奮しちまってよ」

 鏡谷がルービックキューブの少年に謝ると、狩谷に向き直る。

「話を止めちまって申し訳ないっす。続けてください」


「かしこまりました。それでは続けさせていただきます。試練の内容は厳しく、参加するものも大半は死ぬじゃろう。しかしそれでも参加させるというものは、この場で狩谷の持つ書類に血判を押してもらう。この場に長のいない組織は、返答だけし、血判は代理者がするように……ここまでがご主人様からの一枚目のお手紙になります。ここで一つ確認するように申し付かっております」


「……なんじゃろうか?」

 高齢の杖を突いた老人が代表として訪ね返した。


「今回の出来事は、十大組織長の皆様とその代理者様、そして選ばれた代表者様のみに話すことも一緒に誓っていただけるでしょうか?」


「なるほどの。他の者に知らせ……別組織の代表者を闇討ちすることがないようにと言うわけかの」


「竜胆様、ご名答でございます。死屍柴ヒルイの名を継ぐという事の重大さを皆様十分にお解かりでしょう。なぜなら、ヒルイを排出した組織は……この東日本のトップに立つといっても過言じゃございません。闇討ちから、妨害工作、はたまた戦争が起きても可笑しくはございません。ですので、決してそのようなことの無いように、この場でお誓いください。もし、約束できないものや、約束を破るようなものが出た場合、その時はご主人様……死屍柴ヒルイが出向くとの事です」


 その言葉で室内にいるものの大半の顔が青ざめた。

 顔色を変えなかったものは話をする狩谷を除いて、四人だけだった。

 一人はジョン・ドゥ。一人は竜胆と呼ばれた老人。もう一人は、パンツルックのスーツ姿の女が抱えたパソコンに映し出された、金髪ベリーショートの髪型の三十代中半の女。そして最後は、黒いサングラスに葉巻を咥えたドレットヘアーの紫スーツの五十代ほどの男だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ