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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第一回戦 山吹組掃討作戦 前編
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山吹組掃討作戦 七星3

「匕首はもっと握り込まないとダメだよ。ほら。もっと、腕を振って、そうしないとほら」

 九門は剣を片手で振るい、ドスを握った下っ端の腕を切り飛ばす。

「ほら、もう握れなくなっちゃった。突く時はもっと、腹筋に力を入れて。こんな風に」


 今度はもう一人の下っ端の腹を突き刺す。

 九門は楽しそうに下っ端を殺していた。殺人狂は見ていて胸くそ悪いな。私は迫り来る日本刀と、ドスをかわしながら九門を睨みつける。


「……おい。餓鬼。何よそ見してるんだよ!」


 突きを放っていた幹部が今度は斬り上げて来る。隙が生まれた。斬り上げれば、二撃目は斬り下ろすしかない。私は一歩踏み込み斬戟をかわし、幹部の援護として突きを放って来る下っ端の腕をドス事切り落とす。


「あがががぁぁ!」

 下っ端の絶叫が倉庫に響く。


 私は殺人狂ではないし、逆桜のモットーは正義の執行である。つまり痛めつけるのが目的ではなく、相手を殲滅するのが目的だ。腕と武器を失った下っ端の頚動脈目掛け、ナイフをコンパクトに振りぬく。プシュッっと、缶のコーラを開けるときのような音が聞こえると、赤い鮮血が下っ端の首から飛び散った。これで一点。


「チッ!」

 幹部が舌打ちすると同時に日本刀を振り下ろしてくる。それをナイフで受け止める。金属と金属がぶつかり合いガキンと音を奏でる。普通のナイフでは弾かれかねない衝撃が腕に伝わるが、鉈とも形容される私のブッシュナイフはその衝撃を受け止める。


「まずは一点……そして追加で三点」

 刃を滑らせるように幹部の懐に潜り込み、その勢いで鳩尾に肘鉄を食らわせる。


「がはっ!」

 息を漏らし幹部の体が前のめりになる。


 むき出しになった首にナイフを叩き込む。柔らかい肉の感触の後に硬い骨にぶつかる感触が手に伝わってきたが、私は構わずに振り切る。ナイフから抵抗が伝わってこなくなるとかすかな間の後、ごろんとコンクリートの地面に首が落ちた。


「私のナイフは木の幹すら断ち切る」

 転がる首に向け言い、ナイフを振るい血を払う。

「これで四点。他の戦況は……ッ!」


 幹部を相手取っている間に戦況ががらりと変わっていた。


 九門は別な下っ端を剣を流麗な動きで片手から両手に持ち替え切り裂いていた。足元には三体の惨殺体があることから、これで四点だろう。


 零は斧を片手に握り幹部の日本刀の連撃を捌いていた。側にはダガーを何本も突き刺された下っ端の死体が転がっている。幹部は攻め立てているが、零の顔には余裕と言うか、『こんなものか』と言う相手の力量の低さを嘆くようなつまらなさが現れている。

 間違いなく幹部を倒すだろう。それならば零の点数は四点になるだろう。


 三月は下っ端のめちゃくちゃなドスを軽々とかわしている。二刀には血がついている様子もないのでまだゼロ点かもしれない。


 しかしどういう事だ?


 足捌きを見るに、三月の技量は私と差し支えないほど高いように見える。それなのになぜ、あんな下っ端の攻撃をかわすだけで、反撃に出ないというのだ? 三月の戦闘に目を凝らすと、微かだが三月の口が動いているように見える。もっと距離が近ければ声が聞こえたかもしれないが、数十メートル離れた位置からは声を聞くことも、唇を読むことも出来なかった。あの下っ端と知り合いなんだろうか?


 一神は下っ端一人と、幹部一人を相手取っていた。相手の幹部はスキンヘッドで大柄な男だ。私が見るに、他の幹部よりも一段階上の技量の持ち主のように思えた。日本刀の扱いが抜群に上手く、剣術を学んでいる可能性があるな。しかし一対一なら一神のほうが技量が上なんだろうが、下っ端の攻撃にあわせ日本刀を振るわれ、反撃が難しいようだった。


 そして五朗丸。あいつは化け物としかいえない戦い方をしていた。

 片手で持ったハンマーのくぎ抜きで下っ端をひき肉に変えていた。開いた手では赤沼と呼ばれた幹部の頭を握り持ち上げていた。片手で百キロはありそうな大男を持ち上げ、片手で下っ端を肉塊に変えていく。赤沼の手はハンマーで叩き折られたのかひしゃげ、日本刀はとうに手放しているようだった。

 掴む握力も甚大なのか、口からは泡を吹いていた。


「赤兄!」

 百鬼先生と斬りあっていた若い幹部がバックステップで下がり、赤沼を助けに駆け出した。


 五朗丸はその動きに気づいたのか、駆け寄る幹部に赤沼を投げつける。


「があっ!」

 人間の砲弾を受け止めた若い幹部が呻くと、五朗丸が跳んだ。走り幅跳びの跳躍のように高く跳び、ハンマーを振り下ろす。若い幹部は転がるように避けると、赤沼の頭にハンマーが振り下ろされ……ドガァンっと爆発音のような音が倉庫に響き、頭が地面と一緒に吹き飛んだ。


「これを避けるって事は、お前強いな。なぁ、退屈してたんだよ。俺を楽しませてくれよ」


 ハンマーを振りかぶり、追撃を加えると、若い幹部は地面を転がりながら、避け続ける。その顔には恐怖の色が浮かび上がっていた。


 百鬼先生が学校で言った通りだな。敵を殲滅するのはこのメンバーなら当たり前。あくまでもこれは殲滅してなお、点をより稼ぐために行われている。そして、今一番高得点を取れるチャンスを手にしたのは……私だ! 幹部のうち二人が死に、三人が候補者と戦っている。下っ端もまだ何人か残っているが、私の相手にはならないだろう。それならスカーレットと山吹を殺せばこの奇数班の一位は私になる。


「ふぅぅぅぅ」

 一気に息を吐き私はスカーレットに駆けた。

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