山吹組掃討作戦 七星2
「おや、お早いお着きで。約束の時間にはまだ十分もあるというのに、三叉のスコーピオンさんには珍しく遅刻せずにやって来たようですね」
山吹は笑みを浮かべながら、私達を見渡した。
「今回は制服の坊や達ですか。門脇さんの部下は面白い子が揃っていますね」
制服姿の私達を見て、三叉のスコーピオンと思ったらしい。あそこは十代中心の組織だからだろう。
「ああ、この子達ですか」
百鬼先生が一歩前に出る。
「この子達は僕の生徒ですよ」
「生徒?」
百鬼先生の言葉に山吹の眉根がピックと揺れた。
「どういう事でしょうか?」
「今、とある試験中で、僕が引率の教師役を賜ったんですよ。その試験と言うのが……山吹組を潰すってものですよ!」
倉庫内の空気が変わった。殺気と怒気が入り混じった、戦いの現場の空気に。
「……騙したのか!」
山吹が叫ぶと、幹部たちが抜刀する。
「おい、お前ら! この坊ちゃん方に社会の厳しさを教えてやれ!」
「へい!」
っと、下っ端の組員達の声が揃った。組員は腰に手を回し、刃渡り三十センチほどの鍔のない日本刀、ドスを取り出した。
「皆さん、第一次試験開始です! 武器を取って、戦って結構です」
百鬼先生は腰に手を伸ばし、特殊警防を取り出し伸ばすと言った。
私達はそれを合図に、各々がゴルフバックを開き、武器を取り出す。直刀に二本の日本刀にハンマーにブッシュナイフに剣に戦斧だ。バリエーション豊かな武器に、下っ端は驚き、幹部は面白ろうに見、スカーレットは表情を変えず、青い目で見つめてきた。
最初に動いたのは五朗丸だった。下っ端が山吹を取り囲むように動くと、そこに真っ向から飛び掛っていった。
「来いや、来いや、来いやー!」
ハンマー片手に突っかかると、交戦しようと飛び出して来た二人の下っ端ににハンマーを横凪で振るう。怪力と自重と遠心力が加わったハンマーは猛スピードで下っ端に迫り、反応の遅れた一人の体を、吹き飛ばした。文字通りを吹き飛ばした。人間が血を吹き散らしながら、十メートル以上宙に舞い、ぐしゃりと音を立てながら墜落した。ハンマーが当たっただろうわき腹は、爆薬で爆破されたかのように吹き飛んでいた。
「ひっ!」
飛び出したもう一人が、怯えた声をあげる。
五朗丸は今度はハンマーを振り上げ、下っ端の頭目掛け振り下ろした。
ゴシャンと、人体からはまず聞けないような音を鳴らし下っ端が地面に叩きつぶされた。鉄で出来たハンマーは人を叩き潰しても止まらず、コンクリートで出来た地面を粉砕し大穴を開けた。まるで爆心地だ。一固体の作り出す力とは思えないほどの威力だ。
やはりやつは強いな。
「おいおいおい! こんなもんかよ。手前らプロの人間だろうが! もっと俺を楽しませろよ」
ハンマーを肩に担ぎ、顔を返り血に染めながら五朗丸は叫んだ。
「ッ! スカーレット! あのガキを殺せ!」
山吹がスカーレットに指示を出す。
「ボス、待ってくだせえ。こんな力だけの坊主は姉さんがやる必要ねえっすよ。なあ?」
日本刀を構えたタバコを咥えた幹部らしき男が言うと、他の日本刀を構えた男たちは「ああ」と答えた。
「そんじゃあ、赤沼兄がでかいやつ同士、あの金髪坊主相手お願いしゃすよ」
「ああ」
赤沼といわれたサングラスをかけた二メートル近い長身の男が頷いた。
「ほんで、他のやつらは前に来たやつを一人一人相手するってので良いっすかね? 後の二人は組長を狙ってきたら姉さんにお願いして良いっすか?」
「エエ。お任せクダサイ」
スカーレットは日本語が流暢じゃないのか、所々イントネーションの可笑しい片言で喋った。
つまり、前に出れば幹部が相手になり、山吹ともスカーレットとも相手が出来ずに、点数を稼ぐことができないと言うことか。行くべきか待つべきか考えていると、三月と一神が前に突き進んでいった。
「ガキ一人に二人ずつ囲んで殺れ! 時間稼げば俺たちで止めを刺すからよ! いい働きしたら上物をボスがくれるからよ」
タバコを咥えた幹部が言うと、下っ端達の目の色が変わった。ここからが本番と言う感じだ。それならば俺も動くしかないな。幹部が来ても、いち早く倒して山吹を倒せばいいだろう。
下っ端が散らばりながら私達に攻め入ってきた。いまだ動かない九門や零、百鬼先生にも魔の手が迫る。
私には一人ドスを構えた男が迫る。足捌きを見るに戦闘の訓練を受けているのが分かった。ドスを斬りつけるのではなく、刺すように突き出してきた。私がその刺突をナイフで捌くと、突然絶叫に似た奇声が耳に飛び込んできた。それも上から。
「……ッ!」
日本刀を構えたタバコの幹部が日本刀を振りかぶり飛びかかってきた。受け止めるか? いや、この突きを捌きながら受け止めるのは不可能だ。私は後ろに跳び日本刀の一撃を辛くも躱。
「おっしいねえ。もういっちょ行きますか」
「へい」
返事と同時に、下っ端が突きを繰り出してきた。私はまたその刺突きをナイフで払う。そこに今度は日本刀の突きも加わった。ナイフで捌けるが、反撃のタイミングがつかめない。雑魚だと思っていたが、下っ端も幹部も中々の腕だった。
このままじゃ勝てない。
私は攻撃を防ぎながら、他の候補者を見た。九門は二人のドスを構える男に囲まれていた。私が相手している下っ端よりは動きが悪いが、それでもその辺のヤクザとは段違いに強い相手だ。そんな相手を……九門は楽しそうに切り刻んでいた。




