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死屍柴ヒルイの後継者  作者: 也麻田麻也
第一回戦 山吹組掃討作戦 前編
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山吹組掃討作戦 七星

 一時間ほど大型のバスに揺られ、私達、死屍柴ヒルイ殿の候補者は倉庫街に降り立った。


 ここは薬から武器、人身売買に使われる倉庫が連なっている波止場だ。表の世界にも存在は知られているが、裏の世界の重鎮達の圧力の前に、警察でも見て見ぬふりをするしかない。唯一裏世界の治安維持をしている裏警察逆桜でもここには踏み入ることが出来ない。

 本部長の話ではここで行われる取引の大半は逆桜に情報が入るようになっているが、ここを一斉に摘発すれば、逆桜は他の十大組織はじめ、裏の世界を敵に回すことになるので、今は傍観するしかないらしい。なんと嘆かわしいことだ。私が死屍柴ヒルイの名を継いだら、まず、はじめにこの倉庫の撤去と、薬武器人身売買業者を一斉摘発する事にしよう。


 薬武器人身売買を毛嫌いする私だが、裏世界を全否定する気はない。この世界は表の世界を守るためにも必用なのだ。


 裏警察逆桜は十大組織がまだ五大組織といわれていた頃から存在する。その役割は、表の世界で捌けない罪人を処分するためにある。金に物を言わせ、悪行を重ねても罪にならないような人間を抹殺するためにある。精神鑑定を潜り抜けたくずを排除するのも逆桜の仕事だ。そして最大の任務、それは日本にやってくる海外マフィアの処理だ。

 日本は平和な国といわれているが、常に危険に晒されている。


 過去には十トンもの重火器を密輸してきたイタリアンマフィアと戦ったことや、要人暗殺のためにやってきた、アメリカのアサシンを処分したこともある。これを我々が防げなければ、日本が傾くような大事件に発展していただろう。


 表の世界では決してできない仕事を行うのが裏の世界である。だからこそ警察組織に属するというのに、逆桜は裏警察を名乗り、裏の世界にい続けるんだ。


 しかし、この裏の世界が正しいという気もない。この東日本の裏の世界を牛耳る十大組織にも疑問がある。特に快楽殺人の会彼岸花だ。あいつらは殺人鬼であり殺人狂だ。こいつらを処分することこそが、表の世界の安全のためにも必用なことだと私は考えている。

 土門本部長はそれをすれば、十大組織のパワーバランスが崩れ、この東日本が滅んでしまうと言ったが、私が死屍柴ヒルイになれば大丈夫なはずだ。

 他にも薬をばら撒く三叉のスコーピオン、人身売買を行うマーダエージェンシーも潰すべき組織だ。


 この裏世界の、ひいては表の世界の安全のためにだ。


 一回戦は候補者同士で戦うことは出来ないが、二回戦からは候補者同士の戦いになる。

 百鬼先生はこの一回戦を競輪のポジション決めと言ったが、本当の目的を話してはいないようだった。


 初めに武器を見せ、次に二回戦の相手の戦う姿をみせる。なるほど、この試練は良く出来ている。強い相手と当たらないためにはより点を稼がなければならないが、そのぶん他の候補者に自分の手の内を見せることになる。逆に見せずに戦えば高得点は取れないだろう。

 二回戦の後には偶数組みとの戦いが待っている。百鬼先生の口ぶりではその後にもまだ試験は続くのだろう。そう考えると、一位抜けするつわものと二回戦で戦うのは裂けたいところだ。なるべく弱いものと戦ったほうが良さそうだ。つまり、ここは一位か二位抜けを目指すのが良さそうだな。


「着きましたね」

 百鬼先生が立ち上がり言ってきた。

「それじゃあ、奇数班の皆さん降りましょうか」


 バスは大きな倉庫の前に止められた。倉庫の横には七台の高級車が止められていた。山吹組はもう来ているようだ。


「偶数組の皆さんは、バスに備え付けられたこのモニターで様子を見ていてください。中に設置されたカメラの映像がリアルタイムで流しだされていますから。あっ、もし中から山吹組の人間が逃げ出しても、処分しなくても結構です。その役割はこの運転手の鈴木豊太さんがやってくれます」


「只今ご紹介に預かりました鈴木豊太です」

 運転手がマイクで話し出す。

「普段はコスモス情報局の運転手をやっています。鈴木豊太はもちろん偽名です。松田豊太と呼んでいただいても結構です」


「豊太さんは先生の先輩で、元々は護衛部にいたので腕は確かです。他にも何か問題があった場合は、この豊太さんに言うようにしてください」

 手でメガホンを作り言うと、バスのドアが開いた。

「それじゃあ奇数班の皆さん――ゴルフバックを持って、静かに降りてきてください」


「よっしゃ。久しぶりの喧嘩だぜぇ」

 五朗丸が叫ぶ。


「静かにしないか。もうドアが開いているんだ、中に聴こえたらどうする」


「おっ、悪りぃな。燃え滾ってきてるんだよ」

 目を血走らせながら歯をむき出しにし笑うと、五朗丸はゴルフバックを背負い、いち早くバスを降りた。


 五朗丸がどこの所属か予想もつかないが、あのゴルフバックに入った武器を自在に使いこなせるとなると、厄介な相手になりそうだ。

 私のブッシュナイフは日本刀をも叩き割ることが出来るが、あのハンマー――百鬼先生が片手で持つのに苦労したところを見ると、重量にして四、五十キロはあるのだろう――は、受け止めきれないだろう。実績を元に順位を付けられたと考えると、一神も三月も油断できない。私が頭の中で自分より上位に位置する一神、三月、五朗丸との戦いをシュミレートしていると、突然名前が呼ばれた。


「七星。早く出なさい。他の皆はもう降りたぞ」


「失礼しました」

 頭の中のシュミレートをいったん止め、バスを降りる。


「よし、それじゃあ、先生を先頭に中に入るぞ。相手が襲い掛かってきたら、または、先生が開始と言ったら第一試験開始とします。それまでは武器を出さずに、静かにしていてください」

 百鬼先生は言うと、倉庫の古ぼけた扉に手を伸ばす。


 ガガガと、さび付いた開閉音をかなで扉が開いた。中は閑散としていて、いくつかの木箱が置かれているだけだった。はっきり言うとだだっ広い四角い部屋にしか見えなかった。


 倉庫の中心にはいくつもの木箱が置かれ、その前にはスーツ姿の人間が立っていた。私は瞬時にその人数を数える。二十二人。

 その中で高そうなストライプのスーツを着た黒髪の男がいた。歳は三十後半と言ったところだろう。


 一目で裏世界の住人だと分かる鋭い眼をしていた。

 その顔には見覚えがあった。裏警察でも目を付けている男。山吹英平だ。


 山吹の隣には、パンツスーツをの金髪の女スカーレットが日本刀を握り佇んでいる。他にも日本刀で武装している男が五人いた。他の男たちとは違い身に纏う空気が違うので、やつらが幹部なのかもしれない。

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