ホームルーム7
「それではこれから、第一次試験に入らせていただきます。一次試験の内容は班毎にとある組織を壊滅させていただきます」
「先生、宜しいですか?」
委員長七星が手を上げ質問の許可を申請してきた。
「どうぞ」
「班毎と言いましたが、どのように別けるんでしょうか?」
立ち上がり聞いてくる。
「班は名前に入った数字で別けます。奇数班と偶数班に。ちなみに零は元々十一番の予定だったので奇数班とします」
七星にではなく全員に伝える。
「分かりました」
七星が席に付いたのを確認し、俺は話を進めた。
「奇数班には協力をして新鋭のヤクザ、『山吹組』を潰してもらいます。皆さんの大半は知っているでしょうが、山吹組は薬の売買で生計を立てている組織です。それも裏の世界御用達の。最近では他の組織の腕利きに薬を進め、中毒状態にしたところで自分の組に招き入れるといったルール違反を犯しているようなので、このたび試練のターゲットとさせていただきました」
そこまで言い、頭に入れたマニュアルを思い出し、続きの説明に入った。
「今回は三叉のスコーピオンさんに大口の取引だといって呼び出してきてもらっています。通常の二十倍ほどの取引ですので、山吹組組長の山吹英平組長始め、幹部連も多く来ているはずです。取引現場は三叉のスコーピオンの取引場所である第三倉庫になっています。奇数班の皆様にはこれからバスでそこまで移動して、山吹組の皆様を殲滅していただきます。質問はありますか?」
「はい。宜しいですか?」
再び七星が手を上げる。
「どうぞ」
「壊滅すれば一次試験クリアと言うことで良いのでしょうか?」
「いいえ、違います。ここに集められた人間の力なら百パーセントクリアするのが目に見えています。それじゃ、試験にも試練にもなりません。これは言うなれば競輪の打鐘前の周回です」
俺の例えが悪かったのか、何人かは小首を傾げた。そうか、未成年が大半だから競輪で例えても分からないんだ。あんなに面白いのに。
「一次試験は皆さんに順位を付けるための試験です。事前に来るだろう人数と人員を予測してまして、点数を付けています。組長の山吹なら十点。護衛のスカーレットなら十五点。幹部なら三点。雑魚は一点です」
「スカーレットって、あのロシアンマフィアのスカーレットですかー?」
二ノ宮が聞いてくる。
「そうです。最近日本に来て傭兵家業をやり始めたみたいで、今は山吹組にいます」
「うわー。うちも殺り合いたいなー」
偶数半なので戦えない二ノ宮は残念そうに言った。
「偶数班も引けを取らない相手を用意しているので、安心してください」
二ノ宮に言い聞かせる。
「それでは話を続けます。点数を付けると言いましたが、それは明日行う二回戦のためにです。殺した相手の点数の高いほうから一位、二位と付けていきます。そして明日、一位と最下位。二位と五位、三位と四位が戦うことになっています。しかし偶数班は五人ですし、奇数班のメンバーが死んで五人、又は三人になった時は、一位をシードとし、他のメンバーで二回戦をやってもらいます。その時も二位のものと最下位が戦うといったように、相手の選び方は変りません。宜しいですか?」
「はい」
と、七星だけが返事をした。
一回戦でも死ぬ危険があると伝えたにもかかわらず、誰も怯えた様子は見せなかった。さすがは十大組織の代表と言ったところか。スカーレットの名前を聞いてもっと驚くと思ってたんだがな。
スカーレットは二年前にロシアから日本に来た殺し屋だ。コスモス情報局に入った情報だと、スカーレットの母親は日本人で、ロシアとのハーフだということだ。
父親が組の薬の売り上げに手を付け処刑され、それに怒ったスカーレットが組織を潰したようだ。そして組織の生き残りから逃れるために、日本にやってきた。
一人でロシアンマフィアを潰した腕を買われ、今は日本の組織の護衛をして稼いでいるらしい。そして現在の依頼主は山吹会と言うことだ。スカーレットの獲物は日本刀らしいから、一神や三月との戦いが楽しみだな。
奇数班の話が終ったので、次は偶数班の説明か。
「偶数班の皆さんにも奇数班と一緒にバスで移動してもらいます。車内には大型のモニターを用意してあるので、それで奇数班の皆さんの戦い方をしっかり見ていてください。三回戦では奇数班対偶数班になるので。偶数班が相手をしてもらうのは、『虐殺愛好会 ブルーローズ』です」
「うわー。僕あそこ嫌いなんだよね。あんな変態どもと殺るの、気が滅入るな」
十字が唇を尖らせ言ってきた。正直言うと俺も係わり合いにはなりたくない相手だ。
「まあ、その気持ちは分かるが、これは試験なんだから、一生懸命殺してください。ブルーローズと言っても、今回は支部です。ブルーローズのトップ青薔薇にもヒルイさんが許可を取ったとの事です。今回相手をするのは、ブルーローズ赤薔薇支部支部長の赤薔薇です。赤薔薇は先日潜入捜査をしていた逆桜の捜査員一名と、警察官九人の解体ショーを行いました」
その言葉を聞き、逆桜から送られた候補者の表情が険しくなった。俺は瞳に落ち着けと言葉を宿し視線を送る。
「さすがにあれはやり過ぎだと青薔薇から連絡があり、今回の試験のターゲットとさせていただきました。試験会場は赤薔薇支部のスペシャル解体会場です。ブルーローズが捕まえたフリーの殺し屋と言うことで皆さんをお連れします。ちなみに赤薔薇支部の全員がターゲットです。支部長赤薔薇は十五点。赤薔薇のペットであり、解体パフォーマージェイソンが十点。他に十人のパフォーマーがいますが、それぞれ三点とします。ちなみに禁止事項を発表します。それは他の候補者の邪魔をしないこと。例えば四家が赤薔薇と戦い始めたら、他の候補者は手出しも邪魔立てもしてはいけません。もし四家が殺られて赤薔薇がフリーになったら挑むのは問題ありません。そして候補者間での争いも今回は禁止です。特に八王寺と十字の二人は同じ偶数班ですが、争うんじゃないぞ」
「はい」
「はーい」
と、二人は返事したが、少し心配だな。
「ちなみに試験中は先生も会場に入り違反がないかチェックしますが、死にそうになっても助けには行きません」
「百鬼センセーが死にそうな時はどうするのー?」
二ノ宮が聞いてくる。
「先生はなるべく危なくないところにいるので大丈夫です。けれど、もし先生が死にそうな時は助けてもらえると嬉しいな」
「気が向いたらねー」
歯を見せ笑いながら二ノ宮は言った。こいつの性格から言って多分助けないだろうな。
まあ、危険なのは十点以上付けられたやつだけだし、大丈夫だろう。
「それじゃあ、時間も推してきていますので、外に出て会場に向いましょうか」
俺は引率の先生のように、十一人を誘導し校舎を出ると、手はず通り大型のバスが校舎の前に止めてあった。
バスのフロントには、『獅子山高等学校ゴルフ部御一行』と、大きく書かれていた。
ますます引率の教師の気分が強くなる。頑張るぞ。と、俺は自分に言い聞かせバスに乗り込んだ。




