番外編怖い甥には敵わない。
今日、私の甥が屋敷に訪ねて来た。それも密かに一目惚れした少女を連れてやって来たのだ。
「叔父上、プレゼントを持って来ましたよ」
プレゼント?良くない予感がする。不審な顔をしていると横にいた父親が甥に話しかけていた。
「ほう、こいつにか?欲しがる年でもないだろうが。ははは!」
笑うとは失礼な!そんなに年寄りではないぞ!
「リーシャ、入っておいで」
リーシャ!私が知ってる少女の名前と一緒だ!まさか!
「初めまして私はリーシャ・サンドリヨンです。よろしくお願いします」
よ、よ、よろしくとはどう言う意味だ!
「お祖父様、叔父上、この子がプレゼントです」
「「は?はあああーっ!!」」
驚いた!父親も私と一緒に驚いている。この子は王都にお忍びで行った時、食堂で親の手伝いをしていた子だ。
「シルバール!どうしてこの子がプレゼントに成ったんだ!」
少女の両親がそんな事を許すとは思えない。
「声が大きいと怯えてしまうよ。父親が怪我をしてお金を借りたが返せず困っていたから」
え!私が、最近忙しくて行かない間に大変な事になっていたのか?
「お金は立て替えてもいいから親元に返して来い!」
そう言うと、リーシャが涙を溜めて泣きそうになっていた。
「うっ、うっ、私がお嫁さんじぁダメですか?」
ぼろぼろ涙を零して衝撃の言葉を呟いた。
「シルバール!この子に何を言ったんだ!」
絶対変な事を言ったに違いない!もちろん少女の事は好きだが歳が離れすぎている。
「叔父上、この子の事好きだろ。お嫁さんに成れば両親も助かるよ、って言ってプレゼントに成って貰ったよ」
シルバール何故好きだと知ってる!本当に私の妻に?いや!まだ、少女のこの子に無理強いは。
「シルバール、この子をランドルの正妻にするのか?」
父親が聞いたが、貴族でない彼女は私の妻には出来ないぞ!妾!そんな可哀想な事出来ない!
「お祖父様、大丈夫ですよ。サンドリヨン家の養女に成ってますから叔父上の妻になっても問題なしです」
養女!そこまで話を持っていってるのか!どこでばれた!小さい頃の少女に一目惚れして忘れられなかった。顔を見たさに食堂に通い、見るだけで満足していた。見合いを進められたが少女以外の女性はダメだった。好きな事は誰にも気付かれてないと思っていたのだが…。
「ランドル様、私がプレゼントではダメですか?」
涙顔の少女も可愛い…駄目だ!理性が持ちそうもない!
「叔父上が、リーシャが好きな事は分かっているのですから諦めて下さい」
くそっ!隣で父親がニヤニヤ顔で見ている!そうだよ!私は少女が好きだ!好きですよ!
「リーシャ、私の妻になって下さい。一生守るよ」
ここまでお膳立てをされたら引けない。守るさ、リーシャも両親も大事にする。
「はい!ランドル様」
涙を止めて笑顔になったリーシャは、今までで一番可愛かった。
「叔父上、僕の時も協力して下さいね」
そう言ってもの凄い笑顔で言われた。母親にも、どうして今迄結婚しなかったのか分かってしまった。周りの屋敷の使用人たちからも、少女と二人でいると生暖かい視線をもらったが幸せだから気にしない事に決めた。唯、真面目な男が初恋をこじらせると残念だよね、と囁くのはやめて欲しい。
甥から、数年後結婚したい相手がいるから協力してと言われた相手が、私の妹だったのには驚いた。血は繋がっていないが義理の母親になるのに大丈夫か?と聞くと大丈夫と、凄い笑みを見せられた。妹よ、兄はお前を助ける事は出来ない!諦めてくれ。