後編
短いですが終わりです。
記憶を思い出して半年たった頃、旦那様が久し振りに帰ってきました。会いたくないので部屋に居ると足音が聞こえました。
「カリナ、いたのか。」
別に会いに来なくて良かったのですが、私が旦那様の愛人を虐めていたのは、ばれてないわよね。
「はい、旦那様何かご用ですか?」
ん?赤ちゃん?可愛いけど誰の…旦那様に似てるわね。そっくりだわ!
「ああ、この子は私の息子だ。この家の跡継ぎにする。」
え?仕方ないですね。今更ですが私には出来ないから見向きもされませんが。
「そうですか、分かりました。」
「私は、仕事で数年戻れない。この子の世話をまかせる、頼んだぞ。」
私に任せっきり!しかも仕事でいない!どうしよう?意地悪したのがばれてないのは助かるけど。
「はい、お任せください。立派に育てますわ。」
「それからこの子は、私とカリナの間に出来た子だと周りには説明する。」
「……え?」
え?私の子供としてそれは都合がいいけどいいのかしら?彼女の家は納得しているの?
「いいな!」
旦那様が、怖い顔で睨んでいます。美形が睨むと迫力あるわ、赤ちゃんを預かりました。前世の息子を思い出します。
「はい」
おかしな縁から、私が意地悪していた愛人の子供の母親になりました。
「これから私は、第二師団を連れ国境に行かなければならない。領地の事も
文官と相談しておさめてくれ。頼んだぞ。」
「はい、お帰りをお待ちしております。」
旦那様が踵を返して出て行かれました。
「マーサ!乳母を手配して、隣国語を話せる人がいいわ。それからこの子付きの侍女も選んで頂戴!」
大変!留守の全てが任されたのよ冗談では済まないわ!前世の知識に、この世界のやり方全てやらないと困ったことになりかねないわ!
執事と侍女と文官と相談よ!なり振り構ってられないわ!行動よ!
「ザイ!早く来て!」
「なんでしょうか?奥様。」
「旦那様が暫く仕事で遠くに行かれるわ。文官を呼んで、今後の事を話し合わないといけないわ!」
「はい、直ぐ連絡いたします。」
「それから旦那様の弟であるジャステー様に連絡を!」
「私は領地に行く準備を始めるわ、お願いね。」
「かしこまりました。奥様。」
他の侍女達に荷物を纏めさせなくては
「ミミ、こっち側の荷物を纏めて頂戴!」
領地には私と執事のザイ、侍女長のマーサ他数名、乳母、教師、文官数名を探さなければいけないわ。実家のお父様に何人か紹介して貰わないと駄目ね。
王都の屋敷の管理はジャステー様にしてもらうわ。結婚してまだ一年だし仮住まいだと言っていたから大丈夫ね。
そうだわ!旦那様が帰るまで、パーティーにも代わりに二人に出てもらえばいいわね。予算を組んで、必要な物の購入に当てて貰うようにしなければいけないわね。
「ザイ、この手紙を実家のお父様に届けて頂戴。返事を早めにと伝えて!」
「はい、奥様お伝えします。今、ジャステー様がお着きなりました。」
「お連れして、お茶の用意をお願い。」
「ジャステー様、急な呼び出しに来てくださってありがとう。」
「義姉上、何か御用でしょうか。」
「貴方は旦那様が第二師団を動かされる事は聞いているかしら。」
「はっきりとは聞いていません。噂だけですね。」
「そう、今日旦那様に仕事で数年帰らないと言われました。」
「本当ですか?」
「ええ、それで貴方に頼みたいことがあるの。」
「何でしょうか?」
「王都の屋敷の管理をお願いしたいの。私は子供と領地に行きます。ここの管理に必要な文官を残して行くので、お願いしたいのだけれどだめかしら?」
「義姉上がよろしいのなら構いませんが、本当にですか?」
疑心暗鬼になるのも分かるわ。今まで、義弟ある彼に良くした事などないから戸惑うのも納得できるけど、
そんな時間がないのでごめんなさいね。
「ええ、それではお願いするわね。詳しい事は文官と相談して、決めてくれると助かるわ。」
「はい、分かりました。任せてください。」
王都の屋敷を、義弟に任せて領地に戻り子育てに勤しみました。領地経営も、周りとよく相談したり前世の知識を使ったりと快適に過ごし、任さられた子供を賢く強くたくましい子に育てました。
帰って来た旦那様が驚いたのはもちろんですが、子供がマザコンになったのは失敗だと後悔しました。前世に置いてきたこの分まで愛情を注いだのが悪かったようです。