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卒業

作者: 姫萩


その場の勢いって、こわい。

ふと気付くとそこは学校のホール。

壇上には先生や知らないおじさんやおばさん。なんかつらつらと話しているのは校長だ。席を見てみると生徒も保護者と思しき人たちも真剣な顔つきで聞いていた。


校長の話って寝るもんじゃない?


そう思いながら欠伸を噛み殺し、席を立ちホールの出口へと向かう。

そんな私に誰一人として気付かない。どれだけ集中してるんだか。


扉を出て目の前は渡り廊下。

そうか、ここは校舎とは別の棟にあるんだっけ。ん?なんでこんな事知ってるんだろ。

まあいいや。退屈だし探検しようかな。


廊下を歩き、隅に置いてある大きな水槽や壁に飾られている美術部で描いた油絵。下駄箱や昇降口から見える校庭などを眺めて行った。


不思議、なんでかわかんないけど懐かしいや。


胸になにか熱くなるものを感じながら、私は近くの教室に立ち寄った。

その教室には、生徒の姿もカバンもなにもなくただ机と椅子がきちんとせいとんされて置かれているだけだった。まるで、全て無に還すように真っさらな教室の後ろの座席に一つだけ、ポツンと花が置かれていた。


なんの花…?


机と机の間を縫うように通り過ぎそっと花に手を伸ばす。しかし私の指は空を掻き、花に触れることはなかった。


なにこれ、トリックアート?


よくこんな手の込んだ落書きを残したものだ。はぁ、と小さく息を抜き前方の黒板の方を見遣る。

するとそこには赤いチョークや白いチョークを駆使して描かれたと思われる満開の桜が鮮やかに咲き誇っていた。

そしてど真ん中には大きく“卒業おめでとう”との文字が堂々と書かれていた。


卒業…おめでとう…


ポツリと呟く。鼻がツンとなるのがわかった。でも、なんで。自分が分からなくて混乱する。黒板から目が離せない。


私は、きっとここの生徒だったんだ。


そう気付いた瞬間、チャイムの音が鳴り響いた。ゾロゾロと多くの足音が聞こえる。


ここに居ちゃいけない。


咄嗟にそう思った私は廊下に飛び出し階段を駆け上がった。無我夢中で、屋上を目指した。


最初に目に飛び込んできたのは、多くの花束と可愛らしいぬいぐるみやお菓子の山だった。

どれも私の好きなもの。どうしてこんなところに、しかもこんなにたくさんあるのだろう。その理由はわからないが山盛りの花やぬいぐるみ達の向こうの破れた金網に、凄く見覚えがあった。


ああ、全て思い出した。


私はここの高校の三年生で、今日が卒業式。そして数日前にここから飛び降りたんだった。


ちょっとした事が理由で、バカみたいだよね。どうして今日まで生きようとしなかったんだろうね。皆と卒業式、出たかったはずなのに。


自分の意思じゃ止められないほど涙がボロボロと零れ落ちた。


何故泣くの?


そんな自らの問いをおもいだした。


私は今、悲しくて悔しくて情けなくて泣いてるの。

自分のしたことがどれだけ愚かか分かったから。苦しくて切ないから泣いてるの。


気づくのが遅すぎた。

もう一度やり直したいよなんて、もう言うことも出来ない。


私はその場で泣き崩れた。

いつの間にか来ていたクラスの皆も震える声で私の名前を呼びながら泣いていた。


ごめんなさい。

皆と一緒に卒業出来なくて。

ありがとう。

こんな私の為に泣いてくれて。


桜吹雪が私の体を攫い、私は花びらとなって散ってゆく。


卒業、おめでとう。



私事ですが、今日卒業します。

そこで卒業についての短編を書きました

これは私が実際にしようとしたことや学校生活で思ったことをメインにしています。


私が先生や友達に支えられ思いとどまることが出来た今とは違う未来のお話です。



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