むかしばなし
「ねえねえ」
「なんだい、我らがお姫様?」
「ねーえーねーえ!」
「はっはっはっ。まったく、なんだい?」
「むかしばなし、きかせて」
「昔話っていうと、アレかい?」
「うん、いつものやつ!」
「そんなに面白いかい?」
「うん、とっても」
「そうかい。そんなに好きなら、話そうか」
「わーい」
「あるところに、自分探しの旅をする一人の男がいた」
「じぶんをさがしてたの〜? へんなの〜」
「人は皆人生の迷子だからね」
「あたしまいごじゃないよ〜」
「そうだね〜、えらいね〜」
「あたしえらい? えへへ〜」
「よしよし、それじゃあ続けよう。男はある時、奇妙なものと出会った」
「きみょうなもの〜」
「そう、不思議なものだ。それは緑のツルツルとした分厚いものを着て、起きあがろうともがいているようだった」
「おきあがろうとしていたの〜?」
「そうだよ。手をもぞもぞ動かして、起きあがろうとしていたんだ」
「ゴローンとすればよかったのに。あたしできるよ。ほら、ゴローン」
「おおっと、危ない。ソファから落ちたら痛いよ。ほら、こっちにおいで」
「じいさま、くすぐったい」
「ははは。それでね、なんで起き上がれなかったかというと、背中に大きな箱を背負っていたからなんだ」
「はこ?」
「そう、箱だ。亀の甲羅のように大きな箱を背負っていたから、ゴローンてできなかったんだよ」
「そうなんだ〜」
「それで男はしばらく様子を見ていたら、声が聞こえたんだ」
「なんていっていたの?」
「『助けて欲しいっす〜』、って言っていたよ」
「それでどうしたの」
「それを聞いた男は恐る恐る近付いて、起き上がるのを手伝ってあげたんだ。とっても重かったから、頑張ったみたいだよ」
「重かったんだね」
「『重くないっすよ〜』とか本人は言っていたけどね」
「あはは、へんなの〜」
「それでなんとか起こしてあげたら、『いやあ、助かったっす。よかったらお礼をしたいから、船まで来てくれないっすか?』と言ってきたんだ」
「ふね?」
「そう、船だ。周りは山で海なんて見えないからどこに船があるんだろうと不思議に思いながら、男は着いて行った」
「うみってな〜に?」
「ああ、そうだね。海っていうのは、こおおんなにも大きな、水がたくさんある場所なんだ」
「ぷーるみたいに?」
「もっともおっと大きい、想像できないくらいだ」
「すごいすごい、みてみたい!」
「そうだね、いつか見に行けるといいね」
「いっしょにいこうね」
「うんうん、そうだね。それでね、男は歩いているとやがて、家くらい大きな金属の塊の前にたどり着いた」
「きんぞく?」
「硬くてピカピカしたものだよ。『これがアタシの船っす』と言いながらそれの扉を開いて入っていくのに男は着いていくと、中はごちゃごちゃとした機械でいっぱいだったんだ」
「いっぱいあったんだ」
「そうだよ。それで驚いているうちに入ってきた入り口が閉じて、男は驚いた」
「とじこめられちゃった」
「でもそれで終わりじゃなかったんだ」
「なにがあったの?」
「『いやあ、やっぱりこのスーツ、動きづらいっす』って言いながら、そいつは着ていたものを脱ぎ始めたんだ」
「ぬぎぬぎしたの?」
「そうだよ。そしたらなんと、中から女の人が出てきたんだ」
「おんなのひとがでてきたの?」
「そうだよ。男はとっても驚いた。なんなら中からタコが出てくるんじゃないかと思っていたからね」
「たこさん?」
「そうだよ。宇宙人はタコみたいなやつって言われていたからね」
「へんなの〜」
「けれども中から出てきたのは美人のお姉さんだったから、男は驚いた。しかも彼女はメガネをしていた」
「めがねはだいじ?」
「大事だよ。それで女はこう言った。『ふっふっふ。ついに捕まえたっす、貴重な地球人のサンプルを』ってね」
「ちきゅーじんのさんぷる?」
「そう、女はなんと、宇宙から来た研究者だったんだ」
「けんきゅーしゃだったんだ」
「慌てて男は言った。『おい、なんのつもりだ』と。すると女は言った。『さあ、アタシと一緒に来て子作りをしてもらうっす‼︎』」
「こづくり?」
「ああ、まあ、うん。仲良くしようねって、言ったんだよ、うん」
「なかよしさんだ〜」
「そうだよ〜。そうしたら男は『喜んで』って言って服を脱ぎ出したんだよ」
「ぬぎぬぎしたの?」
「そうだよ〜。なのに女は『な、何をしているっすか、この変態⁈』って言ったんだよ」
「へんたいさんだったの?」
「変態さんじゃないよ。男はただ女の言う通り仲良くしたかっただけだったんだ。不思議だね」
「ふしぎだね〜」
「その後二人はなんやかんやで仲良くしていると、気が付いたら二人は女の故郷に着いていたんだ」
「ついてた〜」
「仲良くなった二人は、女の故郷で仲良く暮らしていたんだよ」
「そうなんだ〜」
「でもね、ある日男は思ったんだ。自分の故郷に帰りたいって」
「かえりたかったの?」
「男もそこでの生活を幸せに思っていたけれども、故郷の事を忘れられなかったんだ。そこで女にそのことを言ったんだ」
「そうしたら?」
「女は『そうっすね、君には十分助けてもらったっす。だからこれを君に預けるっす』と言って、男に一つの箱を渡した」
「はこ?」
「女は『これは、君を元いた場所に戻してくれるものっす。ただ、中身は素人には触れないものだから、絶対に開けたら駄目っすよ!』と言っていた。男は頷いてそれを受け取ったんだ」
「あけちゃだめなんだ」
「そうだよ。そうして故郷に送ってもらった男は、とっても驚いたんだ」
「なんで?」
「故郷の様子がすっかり変わってしまっていたんだ」
「かわっちゃってたの?」
「そうだよ。男は何が起こっていたのか調べると、なんと何百年も経ってしまっていたんだ」
「なんびゃくねん⁈ すごいね〜」
「男はとっても驚いた。知っている顔なんてないし、途方に暮れた」
「おとこはどうしたの〜」
「そう、男はそこで、女からもらった箱のことを思い出した」
「はこだ〜」
「その箱はなんと、タイムマシンだったんだ」
「たいむましん?」
「時間を飛べる機会だったんだよ」
「すごーい」
「すごいよね。そしてそれは、丁度男が女と出会ってから一年後に設定されていた」
「いちねんご?」
「そう、一年後だ。男は最初、そのまま使おうとしたけど、ふと思いとどまった」
「つかわないの?」
「そう。だってそのまま使ってしまうと、男は女ともう一度出会うことができなくなってしまうからだ」
「もうあえないの?」
「うん。だから男は賭けに出ることにした」
「かけ?」
「男は箱の中身を開け、中の機械を弄ったんだ」
「あけちゃいけないんじゃないの⁈」
「そう、何度も何度も注意されていたけど、男はそれを破ったんだ」
「いけないんだ〜」
「そうだね。そして男はなんとか中身を元に戻すと、遂にその機械を使った」
「つかっちゃった」
「そうしたら男は、女と出会った日から四〇年前に飛んでいたんだ」
「よんじゅうねん!」
「男の技術では、狙った年に飛ぶことは出来なかったんだね。男はそれからなんとか生活した。誰にも頼ることのできない男は、自分の知っている未来の歴史を使って、なんとか生き延びた」
「いきのびた〜」
「そうして運命の日、男は女の乗ってきた船を見つけて、コッソリと乗り込んだんだ」
「のっちゃったんだ」
「なんとかバレずに乗り込むことができた男は、女の故郷につくとまたバレずにコッソリと抜け出したんだ」
「どうして?」
「自分に会ってしまうといけないからね。そうして男はまた、過去の自分が旅立っていくまで待っていたんだ」
「まっていたんだ」
「男はさていよいよ女に声をかけようとした時、ふと思いとどまった」
「どうして?」
「男は女と別れてから、ずっと歳をとっていたからさ。こんなんじゃ女に自分だとわかってもらえない、そう思って女を一目見れたことに満足して男は立ち去ろうとした」
「そうしたら?」
「『どこに行こうとしているっすか?』と、女は男にそう言ったんだ」
「そうしたら?」
「『まったく、あんたも馬鹿っすね。どうしてアレを開けちゃったんだか。素人には弄れないって、言ったっすよね。自分を天才だと思っちゃったんすか?』ってね。女は男に言ったのさ」
「おばかさんだったの?」
「お馬鹿さんだったんだよ。だって、何も言わずに離れて行こうとしたんだから。男は女に抱きつき泣き叫んだ」
「泣いちゃったの?」
「泣いちゃったよ。なんだかもうわかんなくなっちゃったんだ。そんな男を、女は強く抱きしめた」
「ぎゅ〜って、したの?」
「そうだよ。いっぱい、ぎゅ〜〜ってしたんだ。女は男に言った『まったく、泣き虫は二人も養えないから、いい加減泣き止んで欲しいっす』」
「泣き虫さん、二人いたの?」
「そうだよ。女は子供を授かっていたんだ」
「そのこはどうなったの?」
「ちゃんと元気に笑っているよ。ほら、もう寝なさい」
「はーい」




