ep7 面白い
「あの2人、最近仲いいよな」
「え…」
中庭にいるゆきのと神崎君を見ていた私に渉が話しかけてきた
「なんか…寂しいよね」
「何が?」
「小さい時からずっと一緒にいて何でも話せる仲だと思ってたんだけど」
「気にする事ないよ」
「……」
「やっぱ話せない事ってあるじゃん」
「そうね」
「そのうち話してくれるって思ってるんだろ?」
「当たり前じゃない…」
「……」
「ゆきのが幸せであれば私は何でもするわ」
「そんなに監視しなくても誰にもいいませんわ」
「わかんないじゃん」
「そんな事してる暇あったらさくらと話したほうがいんじゃないかしら?」
「関係ないだろ」
「上見てみなさいよ」
「…知ってる」
「へぇ~白河君は信頼できるからかしら?」
「まぁね」
「神崎君…どうして王子の振りなんかしてますの?」
「………別に王子のつもりなんてないよ」
「ふ~ん」
「昔はさ、結構ハーフっていうより外人よりの顔だったから女の子に間違えられたりして」
「…女の子?」
「それが嫌で勉強も運動も一生懸命やるようになったら身長も伸びてきて」
「……」
「そしたらいつの間にか王子ってあだ名でさわやか君みたいなイメージついたんだよ」
『さくらみたい』
「まぁ…その方が立場的にもいいし、そのままってわけ」
「立場…」
「宮島は変わらないよな」
「寄ってくる人間は皆同じ理由ですから」
「あぁそっか…垣里は同じ立場だから一緒にいるのか」
「さくらは私とは違いますわ」
「え?」
「強いもの…私はさくらに助けられてるだけ」
「……」
「だから、さくらが幸せになるんでしたら私はなんだってします」
放課後
ゆきのは図書室に向かおうとしていた
「宮島」
「あら、白河君」
「さくら待ち?」
「いえ、本返しにきただけですからすぐ帰りますわ……部活ないんですの?」
「いや、これから」
「そう」
「…宮島って悠人が好きなの?」
「はっ?やめてくださる?」
「違うんだ」
「違いますわ、黒王子なんか興味ありません」
「あぁ…やっぱ知ってるんだ」
「そうよ、だから監視されてるだけですわ」
「ふ~ん…何でさくらに言わないの?」
「だから、あいつに監視されて言えないんですの…それに」
「それに?」
「白河君も親友の好きな人の悪口なんか言いたくないでしょう?」
珍しくゆきのは笑った
「…宮島」
「何か?」
話しかけたとたん、ゆきのはいつも通り真顔に戻った
「ふっ」
「…?」
「あははははは」
「なんですの?」
「宮島って面白いな」
「意味わかりませんけど」
「いや……俺も同じ気持ちだよ」
怪訝そうにゆきのは渉を見る
渉は嬉しそうにずっと笑っていた
「今度ウチ来いよ」
「なぜ行かなくてはなりませんの」
「実央が会いたがってるんだ」
「それなら……」
「あいつにもその笑顔見せてやってよ」
「!」
ゆきのの頭をポンポンと触って渉は部活に行った
「なんですの…」
ゆきのは顔が赤くなったのを感じた
それから渉はゆきのに構うようになった
「宮島、宮島」
「…」
「宮島、見て見て」
シカトしていたゆきのは少しめんどくさそうに渉を見る
「私可愛い?」
「ぷっ」
「ねぇ~ゆきのちゃん可愛い?」
メイクしてリボンをつけた渉がいた
ゆきのは笑うのを必死に我慢していた
「ねぇ垣里…あれ何?」
「わかんないけど渉が急にメイクしてって」
「ちょっと…近付かないで……ぷっ」
「何で何で?可愛くないの?プー」
「いや……ぷぷっ…かわ………可愛いわよ」
「やっぱりぃ~」
「あっゆきの笑った…」
「本当だ、珍しい」
ゆきのは思わず笑ってしまった
「何か宮島楽しそうだな」
「……そうね」
「垣里、寂しい?」
「え?……それは神崎君でしょ」
「渉は誰にでもあんな感じだし、男同士で寂しいなんて…」
「じゃなくて、ゆきの」
「え?」
「渉!その格好なんだよ」
「あっあおい君、可愛い?」
「…キモい」
「そんなぁあおい君の為に可愛くなったのに」
「あははは、あおいもメイクしてあげよっか」
「げっさくら、やめろよ」
「クスクスいいじゃない、あおい君」
「ゆきのまでそんなこというなよ」
「あらっあおい君こないだメイクした時可愛かったって実央に聞いたわよ」
「えっなにそれ?あおい聞いてないわよ」
「知らなくていいよ…うわぁ……ちょ…やめろぉぉぉ」
楽しそうにじゃれてる4人に悠人は入れないでいた
『宮島を好きなように見えてんのかな…』
教室内が楽しそうな笑い声が飛び交ってるなか悠人は1人教室を出た
「あっ王子~おはよ~」
「おはよう」
「きゃっ王子だよ!悠人先輩~」
悠人は手を振る
「おっ神崎」
「おはようございます、鹿島先生」
「そういえば学長が神崎のお父様に会いたがってたよ」
「そうですか…でもまだ帰って来てないんです」
「そっかぁ高校入ってから一度も帰って来てないな」
「もう慣れました」
「まぁ…帰ってくるようなら学長の息子にでも教えてやれよ」
「はい」
悠人は自販機で缶コーヒーを買って休憩室へ
「はぁ…」
「あらっ悠人じゃない」
「山崎先輩」
「珍しいわね」
「そうですか?」
「最近、バスケ部の手伝いもしてくれないし私寂しかったのよ」
「俺、バスケ部じゃないですよ」
「そぉだけど…ねぇ前みたいにまた遊びに行きましょうよ」
「あはは、そうですね…今度」
「悠人の今度はないのよねぇ」
「そんなことないと思いますよ」
「ねぇ最近よく女の子と一緒にいるって噂聞くけど本命でもできた?」
「前話したじゃないですか」
「初恋ちゃん?」
「そうです…その子以外興味ないんで」
「その子がこの学校にいるってこともあるんじゃない?」
「……どうですかね」
「いいけど…遊びたくなったらいつでも連絡してね」
悠人に顔を近付けてきた
悠人は逃げるように立ち上がる
「それじゃ先輩、チャイム鳴りますよ」
「もぉ…またね」
悠人は教室に戻ると4人はまだじゃれていた
『まだやってるんだ』
「あっ悠人!助けてぇ~」
あおいがメイクされた顔で悠人に泣きついてきた
「ぷっ」
「さくら達悪乗りしちゃって……」
「あははは…可愛いよ、あおい」
「って笑ってんじゃねぇぇ」
『この空間が好きだから先輩に連絡することはなさそうだな』
教室にいた生徒が少しざわめく
「王子が珍しく声出して笑ってる…」
「本当…可愛いね」
「俺も初めてかも…」