ep6 気付かぬ心
放課後
なんだか周りがいつもと違う感じでざわめいていた
私はなんだろうと思いながらも部活に向かっていた
「おいっ渉」
「あれっあおいじゃん、さくらならもう部活行ったけど?」
「じゃなくて、あの女きてる!」
「え?」
「門のとこ見ろよ!」
あおいは教室にずかずかと入り、窓に渉を連れて行く
「げっ」
「なっ?どうにかしろよ」
「あっ…悠人」
「はぁ?」
門のところには実央が待っていた
そこに帰る途中の悠人が通りかかる
「あれ…実央?」
「悠人君」
「渉なら部活だと思うけど」
「知ってる…ねぇ悠人君これから暇?」
「…何?」
「ちょっと連れてってほしいの…悠人君にとってもいい口実になると思うけど」
悠人は嫌な予感がしつつも実央に従った
「行ってどうするわけ?」
「別にぃ~どういう人か見たいだけ」
2人が校庭に向かうのをあおいと渉はみていた
「なぁ渉、まさかあの女さくらのとこ行くんじゃ…」
「でも俺これから部活…」
「さくらを見捨てる気か?」
「いや……悠人もいるから大丈夫だよ」
「……渉のバカぁ!俺1人で行ってやる」
あおいは走って教室を後にした
「気をつけて~」
渉は笑いながら手をふった
悠人と実央は校庭で陸上部を見ていた
「ほら、あそこに垣里いるよ」
「……」
「実央、見てどうするの?」
「別に…あの悠人君が好きな人を見たかっただけ」
「……」
「あっお兄ちゃんは言ってないわよ、実央の勘」
私は2人が見ていることに気付いた
すごく実央ちゃんが見ていることに戸惑ってしまった
「悠人君の言う初恋の人はどうしたの?」
「誰も垣里が好きなんて言ってないけど」
「わかるよ、あの人の話する時だけすごく優しい声だもん」
「盗み聞きしないでくれる?」
「さくらさんが初恋の人なの?」
「さぁね」
「もし、お兄ちゃんもさくらさんが好きだったらどうするの?」
「関係ないよ」
「それ知ったらお兄ちゃん喜ぶかも…ね」
「何か騒がしいと思ったら実央ちゃんが来てたのね」
ゆきのが近付いてきた
「ゆきのさん」
「学校中の噂になってますわよ、神崎君がモデルの子連れ込んでるって」
「なんだそれ」
「ゆきのさんは部活やってないんですか?」
「家の手伝いがあるし、めんどくさいですもの」
「ふ~ん…悠人君とゆきのさんって似てるね」
「やめてくださる?一緒にされたくありませんわ」
「こちらこそ」
あおいが走ってきた
「おいっお前何やってんだよ!」
『また面倒なのがやってきた…』
「誰?」
「はぁ?昨日会ったじゃねぇか」
「そうだった?」
「実央ちゃん、さくらの弟のあおいです」
「へぇ~あの女のねぇ」
「人の姉貴をあの女呼ばわりするんじゃあねぇよ」
「はぁ…悠人君いつもこんなの相手してるわけ?」
「ん?楽しいよ、俺のおもちゃ」
「勝手におもちゃにするな」
「ガキは黙っててくれない?」
「ガキってなんだよ、お前の方が年下だろ」
「2人は同い年だけど?」
「「げっ」」
「やだ~ハモらないでよ」
「それはこっちの台詞だ!」
実央はジロジロとあおいを見る
「…よく見たら可愛い顔してるじゃない」
「ふざけんな」
「でもチビだし、もう少し悠人君みたくかっこよくなってからにしなさいよ」
「……何の話だ?」
「実央の事好きだからそんなつっかかってくるんでしょ?」
「はぁ?」
「ぷっ」
「おい悠人!何笑ってんだよ」
「お似合い」
「ふざけんな、お前も勘違いするな」
「別に実央を好きになるのは当たり前の事だから照れなくてもいいのよ」
「はぁぁぁぁぁ?」
「実央って罪な女…ゆきのさんもモテるから気持ちわかるでしょ?」
「興味ありませんわ」
「えぇ~ゆきのさんって好きな人いないの?」
「お前無視すんな!」
「キレイなのに勿体なぁい…やっぱお兄ちゃんと付き合うべきよ」
「宮島、いんじゃない?」
「神崎君は自分の心配したら?」
「どういう意味かな」
「そうよ!悠人君もあの女止めなさいよ」
「あおい?」
「さくらぁ~」
「どうしたの?」
部活の休憩中4人のところへ行った
実央は慰められているあおいを気に食わない様子でみていた
「さくらさん、弟さん借りていいかしら?」
「え?あおい?いいけど」
「……なんだよ」
「あおい君ちょっと付き合ってちょうだい」
私達は実央ちゃんの行動に唖然した
あおいは実央ちゃんに引っ張られてどこかへ消えてしまった
「あおい~遅くなる時連絡するのよ」
「さっきまでケンカしてたのに…なんだ?」
「さぁ何かしら?」
「仲良くなったのねぇ良かったぁ」
「いや、垣里」
「違うの?」
「いやぁ…」
「あっそろそろ戻らなきゃ…神崎君バイバイ」
「うん」
私は2人を残して部活に戻った
「さっき話してたの少し聞いてしまったのだけど」
「何?」
「さくらが初恋の人って」
「勝手に実央が勘違いしてるだけだよ」
「じゃあ初恋の人も好きでさくらも好きなの?」
「宮島も勝手に勘違いするなよ」
「まぁいいですけど…初恋といえばさくらは女の子だったらしいわ」
「…マヂ?」
「私は覚えてませんけど、たまたまさくらの家に帽子が飛んできたんですって」
「帽子?」
「それを拾って持ち主探してたら家の前に女の子が立っていたって」
「………」
「その女の子の笑顔が今でも忘れられなくて夢に出てくるそうよ」
「何でそんな話するわけ?」
「…さぁね、今の独り言だから気にしなくていいわよ」
ゆきのは去ろうとした
「俺も独り言だから気にしないで」
「……」
「垣里が好きなんだ、初めて会った時から」
悠人は立ち止まったゆきのの横を通って帰っていった
「協力するしかないかしら」
あおいは実央に連れられて撮影所らしき場所にきていた
「おい、なんなんだよ」
「黙ってついてきて」
「あら、実央ちゃん今日はその子?」
「そう!身長も実央と変わらないしいいでしょ?」
衣装を決めている女の子に実央は可愛く話す
「お前、悠人みたいに猫カブってるんだな」
「悠人君と一緒にしないで!実央はどっちも地なの」
「君名前なんていうの?」
「あおいだけど」
「あおいちゃんね~はい、これ着替えて」
「え?これって…女物じゃねぇか」
「そうよ?」
「俺は男だぁぁぁぁ」
「えっそうなの?実央ちゃん?」
「気にしないで」
「俺に女装させるために連れて来たのかよ」
「うるさいわね、実央の手伝いさせてあげてるのよ」
「はぁ?」
「時間ないんだから~舞さん(スタイリスト)着せちゃって」
「オッケィ」
「おいっ……やめろぉぉぉぉぉ」
あおいは女の子の格好をさせられ、メイクもされた
「おぉ~実央ちゃん今日は可愛い子連れてきたな」
「でしょ?ちょっとうるさいけど気にしないで」
「俺が気にするわ」
「えっ男なの?いやぁ…いいよ」
「嬉しくないんですけど」
撮影所の人達はからかうわけでもなく関心していたのであおいはなんか拍子抜けだった
「じゃあいくよ~あおい君緊張しないで」
「緊張するなって言われてもどうしたらいいか……」
「いいから実央の指示に従って」
「…あぁ」
あおいはよくわからないまま実央に従った
「あおい君、もうちょっと自然に笑えるかな?」
「え…」
『自然にって言われても』
「好きな人の事考えなさい」
「好きな人?」
「例えばさくらさんでもいいわ、あのカメラの向こうにいると思えばいい笑顔になるの」
そう話す実央の顔は今までと違ってすごくキラキラしていた
あおいはその顔にドキッとした
「あおいく~ん」
「はい」
ふとカメラの向こうに実央を見てしまった
「はい、オッケィ」
「お疲れ様でぇす」
「あおい君、最後の顔良かったよ」
「……ありがとうございます」
あおいは少し戸惑ってしまった
「楽しかったでしょ?」
「…うん」
「今日はたまたまスタジオだからこんな格好でも大丈夫なのよ」
「外の時もあるのか?」
「当たり前じゃない」
「すごいな…」
「それが当たり前なの…一応プロだし」
あおいは実央をかっこいいと思ってしまった
この気持ちは何のかわからなかった
「実央もね、お兄ちゃんにべったりだったの」
「急に何?」
帰りの車の中で実央が話し出した
「あんた見てると、昔の自分見てるみたいで」
「……」
「ムカムカするの!」
「ムカムカ?」
「お兄ちゃんにくっついていると知らない女がいつも寄ってきて」
「渉モテるからな」
「それがいつも嫌になっちゃうのよね」
「うん……」
「だから違う世界でお兄ちゃんに認められるようになろうと思ってこの仕事始めたの」
「へぇ~」
「だから!あんたも世界広げてみなさいよ」
「……」
「着きました」
「家着いたわよ……ってえ?」
「ありがとうございました」
「でかっ…ていうかあんた垣里グループの御曹司?」
「まぁ将来的には……じゃあ」
あおいは少し上の空で家に入っていった
『ってことはさくらさんは…』
『面白くなりそうね』
「おかえり~」
「さくら…俺………おかしい」
「どうしたの?」
「あの女がめちゃくちゃ可愛く見えるんだ」
「……恋じゃない?」
「恋?俺があの女に?」
「うん」
「生意気なくせに可愛くてかっこよくて…」
「恋」
「……嫌だ、絶対違う」
「あっ見て!今日買った雑誌に実央ちゃん出てたよ」
あおいは嫌な顔をしながらページをめくる
『……可愛い』
「可愛いね」
「うん………って違ぁぁぁぁう」
あおいは新たに生まれた気持ちに混乱していた