ep3 思惑
「さくら、いつも通り頑張れよ!」
「うん、ありがとう…」
今日は日曜日
他校との練習試合
テニス部の助っ人である
本当は陸上部で短距離を走ってるんだけど、たまに他の部の助っ人に呼ばれる
運動神経だけはいいから
「きゃああああ」
「さくら先輩頑張ってぇぇ」
『今日はギャラリーの声が遠い
ゆきののことが気になってる…
どうして言ってくれないのかな』
あの日の後もゆきのは普通で、でもよく神崎君と2人で話してる
「第一セット 6ー2」
『何話してるのかめちゃめちゃ気になるなぁ』
「垣里ぉ~頑張れぇ~」
『何か今神崎君の幻聴が聞こえた気がする……私やばい?』
「げっお前来たのかよ!さくら~がんばぁ」
『…ん?あおいがつっかかるってことは』
視線をギャラリーに向けた
あおいの隣には神崎君がいた…そしてゆきのも
ゆきのはいつも見に来てるけど、あおいと一緒じゃなかったから来ないのかと思ってた
『もしかして…2人一緒に来たのかな…』
「第二セット 6ー3
勝者瀬田川高等学校垣里さくら」
「きゃああああ」
「さくら先輩、かっこいい」
『あれ…試合終わっちゃった』
「垣里さん、素敵なフォームだったわ」
「ありがとうございます」
『全然試合に集中できなかった…』
「やっぱりテニス部入ってもらえないかしら?」
「助っ人でよければ、いつでも来ます」
「相変わらずつれないわぁ」
「なぁ宮島…何で垣里って陸上にこだわってんの?」
「お前に関係ないだろ」
「いちいちうるせぇな」
「あっ本性出した!
今の聞いただろ?ゆきの!」
「さくらね、自分を試してるんですの」
「え?」
「シカトすんな…」
悠人はあおいの口を塞いだ
「テニスとかバスケって相手や仲間がいて初めて試合ができるでしょう」
「うん」
「基本的に運動神経がいいから何でもできるし、嫌いじゃないらしいですけど」
「…」
「自分で自分の道を走るのがいいみたい」
「ごほごほっ…苦し……知ってるだろ、ウチらの家のこと」
「あぁ…垣里グループの代表、宮島の家もだよな」
「そう、私達って絶対親の引いたレールしか走れないの
いくら溺愛してても、位の高い人と結婚させられる…家の跡取りだから」
「俺達の父親は恋愛しとけって言うけど、結婚は別なんだよな…」
「へぇ~垣里が継ぐのか…」
「さくら、両親が大好きですもの」
コートから3人が楽しそうに話してるのが見えた
神崎君も愛しそうに笑ってた
『あの2人が両思いなら応援しなきゃ』
「お疲れぇ」
「ありがとう…神崎君も来てたのね」
「あぁ、さすがだな…かっこよかったよ」
「…ありがとう」
コソ「ねぇあおい、あの2人って一緒にきた?」
「何か途中であったらしいけど」
「そうなんだ」
「…さくら」
「何話してるの?」
渉が私とあおいの間に入ってきた
「渉っ部活終わったの?」
「あぁ…で、何々?」
渉が私の肩に手を回した
「渉」
「ん?なんだ、悠人ここにいたんだ」
「約束って白河君とでしたの」
「うん……あっ垣里達も行く?」
「え?」
「別にいいよな?渉」
神崎君が渉を見ると、渉は私の肩から手を離した
「あぁ、いんじゃない?」
「どこ行くの?」
神崎君が私の前にやってきた
「帰りちょっと遅くなっても大丈夫?」
「私とあおいなら構わないけど…」
神崎君はあおいを見る
あおいは私にくっついた
「俺もいいだろっゆきのも行くだろ」
「私は聞かないと…」
「ゆきのっ私もお願いしてみるから」
私は目の前の神崎君に照れてしまってゆきのの元へ行った
「電話してみよっ」
「…えぇ」
「お前もくんの?」
「さくらと2人になんかしないからな」
「別に2人じゃないけど、弟邪魔」
「邪魔してんだよ!ホントさくらの前だと猫カブりやがって」
「はぁ…うるさいよ」
「白河君、どこ行くか教えてもらえます?」
渉はニコッと笑った
「スクエアタワー」
ゆきのは電話をかける
「スクエアタワーって新しくできたアミューズメントビルだよね」
「行ったことある?」
「まだ行ってない、できた時お父様は招待されてたけど」
「そっか…ウチの父さんも呼ばれたんだけど」
「白河君のお父様って学長ですよね」
「うん、その時チケットもらったんだ」
「何の?」
「行ってからのお楽しみだよ」
神崎君が割って入ってきた
優しく微笑んだ顔に私はうっとりしてしまった
「さくら、ちょっと電話でてもらえます?」
『助かった…』
「渉、どういうつもり?」
「何が?」
悠人は渉を睨む
「しょうがないじゃん、俺達仲良しだもん」
「俺の前でさっきみたいなことしたらどうなるかわかってる?」
「悠人の前じゃなかったらいいの?」
悠人は黒い空気を出して、渉に冷たく笑った
「渉」
「…わかったよ」
「神崎君、渉、ゆきのも行けるけど……どうしたの?」
「ん?何でもないよ」
「そう?」
渉の顔が引きつっていた
それから渉の家の車でスクエアタワーに向かう
「そういえば、3人とも制服だね」
「あっまずいかな?」
「あっちで調達するか」
「高校生じよまずいとこでも行くのかよ」
つっかかるあおいに悠人は冷たく笑う
「一応夜だから、制服じゃ…ね」
「そういうことだよ、垣里弟」