ep14 デート
今日はクリスマスに約束した時間をプレゼントする日
今年ももうすぐ終わり
その前に悠人とこんな風になるなんて思わなかった
「よっ」
「ごめんっ待った?」
「全然…時間ぴったり」
「言うと思った」
「それ…似合ってるよ」
「ありがとう」
今日は少し気合いを入れてみた
ロングブーツに淡い白のワンピースにニットのロングカーディガン
髪をサイドで結ってリップも淡くピンクに
悠人にもらったネックレスもつけて
というのも昨夜ゆきのに言われたから
「明日デートなんですって?」
「なんで知ってるの?てかデートってほどでもないよ」
「2人で出かけるのでしょう?デートですわ」
「う~」
「着る服位気合い入れていきなさいよ」
「えぇぇ~」
『神崎君にどんどん借り作っておかないと』
「ゆきの…何か企んでる?」
「なわけないじゃない…ほらっクローゼット行きますわよ」
最近のゆきのはやたら私達をくっつけようとしてる気がする
まぁおかげでちょっとデートらしくなってきた……かな?
「俺見たい映画あるんだけど付き合ってくれる?」
「もちろん、今日は私の時間をプレゼントしてるんだから」
「この前公開されたユニバースってやつみたいんだよね」
「あぁ~スペースものだ」
「この監督好きなんだよね~あっ恋愛ものとかの方がやっぱ好き?」
「ううん、映画館で見るのなんて久しぶりだし」
「そうなの?」
「昔はよく行ってたんだけど」
なんて話しながら映画館にやってきた
冬休みのせいか人がたくさんいた
チケットを買うのにも並んで、ジュースやポップコーンを買うのにも並ぶ
疲れる感じだが、悠人はずっと話してくれて気が紛れた
席に座ってようやく落ち着き映画を見た
ラブストーリーも交ざっててちょっとドキドキした
そっと悠人を見ると真剣にみている姿に益々心臓を早めた
「あぁ~面白かった」
「うん」
「お腹すいた?」
「ちょっと…」
「じゃあどっか食べにいこうか」
「その前にお手洗い行ってきていい?」
「そこのイスに座ってるよ」
私はトイレでメイクを直して急いで悠人の元へ急ぐ
すると誰かと話しているのが目に入った
キレイそうなおねぇさんと
私は急ぐ足を止めて立ち止まってしまった
「悠人1人?」
「山崎先輩!?何やってるんですか」
「映画見にきたのよ」
「受験は?」
「息抜きよ、あんなの楽勝だし」
「そうですか」
「……あの子と来てるの?」
「連れの方待ってますよ」
「別にいいわよ…ねぇ2人でこの後抜けない?」
先輩は悠人の隣に座り腕を組む
私はそれをみていた
それに悠人は気付く
「悪いけど」
「なんで?いいじゃない」
私は離れない2人を見てその場から逃げてしまった
「先輩、悪いけど」
冷たい視線が先輩に突き刺さる
「先輩、もう俺に構わないで」
ゾクッとする声で耳元に囁き先輩を突き放し追いかける
「悠人ったら生意気になっちゃってつまんないの」
私は早歩きで人ごみをかき分けていた
「さくら」
悠人の声がかすかに聞こえた
でも頭が真っ白になっている私には止まることができなかった
広間な出て人ごみが減ると私は簡単に捕まってしまった
「さくら待ってよ」
「……」
「偶然会っただけだから」
「……わかってるよ」
「ならなんで?」
「わかんないけど…足が勝手に」
悠人は手を掴みながら息を整える
「はぁ……俺、好きだよ」
「え?」
「さくらのこと」
落ち着いた様子の悠人は真剣に私を見つめる
「垣里さくらが好きだ」
私は何が起きてるのか一瞬わからなかった
何も話せず黙ってると悠人は話を続ける
「こんなとこで言うつまりなかったんだけど…」
「でも信用して欲しい」
「俺はずっとさくらだけだから」
街の広間
真ん中にある噴水の前
若い人が行き交うなかの告白
ムードも何もない
誤解を解くための告白
しかし相手は前から憧れていた人
黙ってしまった私に彼はとりあえずカフェにいこうと誘ってくれた
「お腹すいたね…何にする?」
「えっと…じゃあコレ」
「じゃあ俺はコレにしよっと……すいません」
彼はさくさくと注文していく
「聞いていい?」
「え?」
「…いつから?」
「好きになったの?…初めて話した日から」
私は同じ時に好きになったんだとちょっと嬉しくなった
「恥ずかしいな……あんなに泣いた姿見せちゃって」
「ふっ」
「何?」
「可愛いね」
気持ちを知った上でのその言葉に私の顔は赤くなる
「返事はいつでもいいよ」
「え?」
「こんな早く言うつもりなかったんだ…もう少し猶予ちょうだい」
「……」
その後、食事をしてゲーセン行ったりクレープ食べたり
楽しい一時を過ごした
私はその間も返事をいつ言おうか考えながらセレクトショップに入ったとき
あるものが目に入った
暗くなり悠人は私を家まで送ってくれた
「今日は付き合ってくれてありがとう」
「こちらこそ楽しかった」
「良かった」
雪がちらちら降ってきた
「中…入らないの?」
「あっあのね…あの……これさっきの店で買ったの」
「え?」
「今日ちょっと台無しにしちゃったし…受け取って?」
悠人は袋を開ける
メンズ物のシンプルなブレスレット
ピンクな石が一つ埋め込まれていた
「私のと似た感じになっちゃったけど…桜色好きでしょう?」
俯いて早口で話してしまった私はそっと彼の様子を見る
そこには私の好きな笑顔があった
「ありがとう」
そう言って彼はそれをつけた
「大切にするよ」
私は黙ったまま
「…じゃあ俺行くね」
「………うん」
彼の背中を見る
あの日と重なる
私はその背中に抱き付いていた
「え?さくら?」
「好き」




