ep12 男の子
春菜が帰ってから3日が経った
皆生活に慣れてきたのか最近やたら渉や悠人が呼び出される
コンコン
「王子いるぅ?」
「何?」
「遊ぼっさくらぁ借りてくよ~」
「どぉぞ」
嫌々なのかわからないけど悠人はちゃんと付き合う
何だかんだ言っても王子だ
「また神崎君呼ばれたの?」
「うん」
「いいんですの?」
「いんじゃない?渉もどっかいっちゃったよ」
「それこそ関係ないですわ」
「そう」
「3人でゲームやろぉ」
「あれっ足立君はいたんですの」
「いたのvやろぉ?」
「私は見てますわ、さくらと2人でどぉぞ」
「てか、そんなもの持ってきたわけ?」
「だってつまんなくなるし…」
「あはは」
3人でお菓子を食べながらはしゃぎまくっていた
騒ぎ疲れそのままリビングで寝てしまった
「あれ…悠人今帰り?」
「渉こそ」
「じゃあ一哉…ハーレムだったんだ」
心配になった悠人は扉を急いで開ける
電気をつけたまま3人はぐっすり眠っていた
悠人はほっとした
「なんだ…そのまま寝てたのかよ」
「渉、宮島部屋まで運んで」
「あぁ」
悠人と渉はさくらとゆきのを抱えベッドに寝かした
「あぁ~疲れた…俺シャワー浴びてくるわ、一哉お願い」
「あぁ」
渉はシャワーを浴びにいった
悠人はさくらのサラサラの髪をよけて頬に手をやる
「……んっ……」
愛しそうにさくらを見つめる
顔がさくらに近付く
「寝込み襲うくらいなら告ればいいのに」
一哉だった
「はあぁ…帰るのも遅すぎるんじゃない?」
「何がいいたい?」
悠人は部屋を出てリビングで一哉と向き合った
「別に…ゆきのさんいて良かったねってこと」
「2人だったら何かしてたの?」
「さぁ?でも男と女だからね」
「一哉ってそういうやつだったんだ」
「悠人彼氏じゃないんだし、言う権利ないでしょ?」
「俺に逆らうの?」
悠人の冷たい笑顔に一哉はビクッとした
「一哉…さくらが欲しいならそう言えよ」
「ふっ…王子も普通の男だったんだね」
「え?」
「ごめん、ごめん…でも好きな女残して遊びに行かないほうがいいよ」
「一哉?」
「はぁぁ~寝るかな」
一哉は部屋に向かった
「あっでも俺……さくらちょっと欲しいかも」
その一言で一哉は冗談ではなく本気で言ってると悠人は感じた
「悠人ぉ~遊びに行こぉ」
「ごめん…今日は」
「えぇ~嫌なんて言わせない」
「いや…ちょっ…」
悠人はまた女の子に連れていかれた
「王子も忙しいわね」
「ほんと」
「あっ宮島」
「渉はいたんだ」
「なんだそれ」
「どぉぞ、気になさらずに」
「宮島、見せたいものあるんだ…付き合ってよ」
「いいけど」
「よし!準備しろっ」
ゆきのと渉は相変わらず仲が良い
ちょっと羨ましい
「さくら、申し訳ないけど少し出かけますわ」
「うん」
「借りるよ」
「いってらっしゃい」
私はいつの間にかソファで眠りについていた
途中シャワーの音やTVの音が微かに聞こえていたが目は覚めなかった
がたん
「いたっ」
「垣里…大丈夫?」
「一哉…あはははは」
「皆出かけたんだ」
「うん、悠人は女の子に連れていかれて、ゆきのと渉はデート」
「あの2人付き合ってたんだ」
「いや、まだだと思うけど」
「そうなんだ…あっクッキー買ってきたんだ」
「じゃあお茶いれるね」
「うん」
2人で暖かい夕日の中まったりとお茶をしていた
「垣里って悠人が好きなの?」
「ぶっ…なに急に」
「違うの?」
「さぁね」
「ふぅん…好きだったら今頃心配でしょうがないよね」
「そぉかもね」
「じゃあ好きなやついないの?」
「もう何でそんな話ばっか」
「だって俺、垣里のこと気になるもん」
「あはは」
一哉は真剣な顔で近付いてきた
「一哉?」
すると、一哉は私を抱き寄せて耳で囁く
「本気だよ」
私は抱きしめる腕を外そうとジタバタするが、びくともしない
「ちょっ…冗談がすぎるよ?一哉」
「俺じゃダメ?」
私は泣きそうになった
悠人の行動に左右されたり、女の子皆に優しかったり…不安だったのは確かだった
でもどんな時でも思い浮かぶのはあの笑顔
「一哉…私ね」
「垣里?」
「いつもの王子の笑顔じゃなくててニカッてイタズラっ子のように笑う彼が好きなの」
「なにそれ」
「……内緒」
「え?」
「一哉だって私と一緒に毎日いるから好きだって勘違いしてるんだよ」
「そんなこと…」
バタン
勢いよく悠人が入ってきた
「何やってんの?」
抱きしめられてるさくらは涙目だった
かっとなった悠人は一哉に殴りかかる
「えっ悠人!」
悠人の手が止まる
2人の間に私は入る
「違うの、別に何もされてない」
「さくら」
「ほんと!目にゴミ入って見てもらっただけ」
悠人は手を降ろしてさくらの腕を掴む
そのまま2人は出て行った
「ちぇっ…振られちゃった」
海沿いを2人で歩く
日が沈みかけていた
悠人は力いっぱい腕を掴んでいた
「悠人…ちょ…痛い」
「え?あっごめん」
私は腕をさする
「あぁぁぁぁ、もぅ!」
突然悠人は頭を抱えて座り込んだ
私は驚いた
こんな悠人は見た事がない
下から彼は私を見つめる
「俺…もしかして邪魔だったかな」
「え?」
「いや、なんていうかいい雰囲気だったし」
「……」
「ついかっとなって間入っちゃったけど」
「クスクス」
「え?」
「大丈夫よ」
「一哉の事好きだったら邪魔だったよね」
私も隣に座る
「好きよ」
「え…そっか」
「友達としてね」
「あ…ははは」
「ふっ」
「俺、さくらの前だといつもの俺になれない」
「そう?相変わらずの王子っぷりだと思うけど」
「そんなことない…焦ってばっか」
「あはは」
「あぁ~恥ずかしい」
「…本当」
「本当って…」
「違うの…本当にここにきてから悠人の違う顔が色々見られるなって」
「やっぱ…恥ずかしいな」
暗くてあまりよく見えなかったけど顔が少し赤くなってる気がして少し嬉しくなった
足を抱え、顔を隠すようにそらす姿がまた可愛くて…
ちらりと覗いては目をそらす
波の音が静かに聞こえてまったりとした時間が流れる
戻るとゆきの達は戻っていた
何事もなかったようにご飯を食べに行って勉強をして帰った
「悠人、さっきはごめんな」
「別に……俺も掴みかかって悪かったよ」
「で、あの後どうなった?」
「え?」
「告ってチュウくらいはしたかな」
「……なわけないだろ」
「うわぁ~結局何も進展してないのかよ」
「うるせぇな…ってお前もしかして」
「あ~ぁ、せっかく振られてやったのに」
唖然とした悠人の前にはいつもの一哉はいなかった
「俺が本気になったら落とせないものはないよ」




