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inevitability  作者: fairy
11/23

ep10 海

「きっっもちぃぃぃ」



私達は修学旅行で沖縄に来ました

空は快晴、海は透き通ったエメラルドグリーン、気温はもう冬間近だというのに水着でも暑いくらい



そして私達はホテルではなく小さなウッドハウスで暮らしていく

男女3人ずつ

私達はメンバーは、ゆきのと女バスのマネージャー春菜と私、男子は渉と男バスの一哉と…………神崎君



文化祭が終わってすぐに決めた

こんな事になるなんて誰も思わないじゃない

でも思いっきり楽しみたいから、なかった事にしようと……思う



ウッドハウスの中は部屋が二つとその間にリビングとキッチン

ベランダからは海にすぐ行けるようになっていた

私達はとりあえず部屋に荷物を入れて海に行く準備をする




「私、もう水着着てきたんだぁ」

「さくら、早ぁい」

「私はパラソルを持ってきましたわ」

「あははっゆきのは焼きたくないもんね」

「お母様に怒られますわ」

「ゆきののとこ厳しすぎ」

「春菜は海入るよね!?」

「もちろんっビーチボールもあるから♪」

「うわぁい、後で皆でやろっ」



きゃっきゃっと騒いでいた

実際騒いでなきゃこんな状況やってられないじゃない

男3人は準備を済ませ、リビングのソファで女子を待っていた



「いやぁ~これから女の子と過ごせるなんて夢のようだね」

「渉……キモい」

「なんだぁよぉ~一哉だってドキドキだろ?」

「……やらしい」

「悠人も楽しみだよなっ」

「……別に」

「なんだよぉ~2人とも……つれないなぁ」




佐々木春菜は元々バスケをやってたんだけど、じん帯を切ってからマネージャーになった

性格は明るくマイペースなのでゆきのも気兼ねなく話せる

足立一哉は渉と同じバスケ部、性格はちょっと天然入ってる感じ



「お待たせ~」



私は自然と渉や春菜達と騒ぐようにしていた

それに神崎君やゆきのは気付いていた




「何かしたんですの?」

「何が?」

「あの子、明らか変ですわ」

「そう?……パラソル立てようか?」

「どうも」

「今すぐここから連れ出したいけどね」

「……」




2人が後ろで何やら話しているのは見えていた

でも気にせず海に入り、渉達と騒ぐ




ちょっと騒ぎ疲れて浮輪でぷかぷかして空を見上げる

雲一つない青い空……少し憎くなってしまうほど


突然水飛沫が顔にかかる


「さくらぁ~バレーやろぉ」

「もぉ~やるっ」

「あはははは」

「俺も~」

「渉強そう…」

「悠人もいたら最強だぜ、悠人ぉ~」




渉はパラソルにいる神崎君とゆきののところへ走っていった

私は横にさっき私がしていたようにぷかぷか浮いている一哉が目に入る

同じように水をかけてやった



「え?無反応?」



一哉の反応がない

私は一哉に近付いて、顔を覗く




「……寝てる」



一哉はすやすや気持ち良さそうに寝ていた

ここにも憎いやつがいたと思い、微笑んでしまった

一哉をのせた浮輪を押しながら渉達のところまで泳いでいく

その時だった


ぴんっと右足がつった

『えっやばい…』

「かず……や…」


思わず呼んでいた

そのまま意識が海の中に沈んでいった







気付いた時にはゆきのの横で寝ていた


「さくら、気付きました?」

「あれ……私…」

「足つって溺れかけたんですわ」

「あっ…そうだ」

「足立君が近くにいたから良かったですけど」

「え?一哉が助けてくれたの?」

「えぇ…ビックリしましたわ、いきなり足立君がぐったりしたさくらを抱えてくるんですもの」

「ごめん」

「ちゃんとお礼しといたほうがいいですわよ」

「…うん」



それから渉達がはしゃいでいるのを見ながらゆきのの隣で安静となった

夜になり皆でバーベキューをして、近くの会館で勉強会

そして初日ではしゃぎすぎたのかそのまま皆寝てしまった

私は1人ベランダでジュースを飲みながら海をみていた




「隣座っていい?」

「一哉…あっ飲み物持ってこようか?」

「ありがと~コーラで」



こんな風に2人でいるのは初めてな気がする


「今日ありがとうね」

「ん?」

「助けてくれて」

「あぁ…ビックリした」

「でもよくわかったね、寝てたのに」

「うん……呼んだでしょ?」

「……そうだっけ?」

「呼ばれた……気がする」

「あははっなんだそれ」





「風、気持ちいいね」

「うん……垣里ってさ」

「え?」

「いつも笑ってる気がする……」

「そう?」

「バスケの試合で負けた時よく渉とか励ましてたりする」

「あぁ…私が泣くわけにはいかないし」

「うん……ファンの子とかは皆泣くけど垣里だけ違う」

「私ファンじゃないし」

「そっか」

「何か私可愛くないなぁ…」

「……うん」

「うんって!ホント一哉って抜けてるっていうか…」

「………」

「………寝てる」




「風ひくよぉ~?」


一哉は起きる気配がない

どうしようか迷っていると背後に人影を感じ後ろを見た


「一哉寝ちゃった?」

「…うん」

「俺が連れてくよ」

「ありがとう」



神崎君だった

私は立ち上がり部屋に戻ろうとした



「逃げるんだ」

「……」

「軽蔑したから?」

「……」

「もう俺に本音見せてくれないの?」

「…そんなつもりないんだけど」


私は精一杯の笑顔で振り向いた



「垣里?」

「本当よ?気のせいだって…じゃあ……おやすみなさい」


神崎君を残し部屋に入る





「…冷静だな」

「そう?動揺してた…気がする」

「一哉…起きてたんだ」

「元々ウトウトしてただけだから」

「……気になる?」

「垣里?」

「溺れた時も助けてたし」

「……悠人ってわかりやすい」

「!…何が」

「あんなの俺が一番近かったからじゃん」

「わかってる…けど助けたかったって思う」

「………可愛い」

「は?」

「ちゃんと話したら?」

「…わかってるよ」







次の日私は寝坊してしまった

よく寝れなくて気付いた時には女子部屋には誰もいなかった



「おはよ~ってあれ?」



リビングにも誰もいなかった

テーブルには置手紙と朝ご飯があった



『さくら、おは☆ゆきのと春菜は昼の買い出しいってきます』



朝ご飯は春菜が作ってくれたんだろう

ゆきのは作れないから



『男子も探険してくるって、昼すぎには戻るよぉ 春菜&ゆきの』


「皆出かけたんだ」


少しほっとした

夜のこと思い出すと神崎君には会いづらかった

私は先にシャワーを浴びようと思い風呂場に向かった



ガチャ

すると、上半身は裸で下はジーンズを履きタオルで髪を拭いている神崎君がいた






「…垣里のエッチ」


固まっていた私は顔が赤くなり勢いよくドアを閉めた



「ごめんっ」






ガチャ



「こっちこそ鍵閉め忘れたからおあいこ」



耳元で囁く神崎君の髪の水滴が首に落ちてビクッとした

私の頭をぽんっと優しく叩く


「次どうぞ」




ドキドキしながらシャワーを浴びて出ると神崎君はコーヒーを飲みながらTVを見ていた

ご飯を食べ、食器を洗う

すると、横に神崎君がきた



「お嬢様もそういうことするんだ」

「失礼ね、一通りできるよ…あおいがいたし」

「全部メイドさんとかにやってもらうのかと思った」

「お母様はあおいを産んだ後もすぐ働いてたから母親代わり」

「ふ~ん」

「ゆきのは1人っ子だからほとんどできないよ」

「また宮島か…」




「…出かけないの?」

「出かけたい?」

「え?」

「どっかいく?」

「……何かキャラ違う」

「うん……ここは学校じゃないから」

「あはは、なにそれ」



手を拭き冷蔵庫を開けて、お茶をコップにそそぐ

扉が閉まると同時に壁に追いやられ、身動きがとれなくなってしまった



「俺、ここにいる間は素でいることに決めたから」



少し藍っぽい瞳、柔らかく焦げ茶色の髪、透き通るような肌に目が奪われた




「…誘ってる?」

「えっ」

「ふっ…顔赤いよ」



私は恥ずかしくなってコップに口付ける

すると、神崎君は離れてベランダに向かって戸を開けた



「いい天気……海で散歩しない?」






前に見た

さわやかないつもの笑顔でなく、ニカッとイタズラっ子のような笑顔

潮風が部屋の中を動き回り髪がなびく

私はこの笑顔が好きになったんだと自覚させられた







2人で砂浜を歩く

神崎君はゆっくりと私の後をついてくる

私は裸足になり大股で水際を歩く



「神崎君ってハーフだよね」

「あぁ」

「海外に住んでた事あるの?」

「住んだことはないけど、休みの日は祖父さんに会いに行ってるよ」

「へぇ~」

「垣里んちって桜の木ある?」

「あるよ」

「結構大きい?」

「えぇ…両親が結婚した年に植えたらしいから」

「いいょね…さくらって名前」

「そう?平仮名で書きやすいけど」

「ははっ」








「さくら」





私は突然呼ばれて振り返ると、神崎君は笑っていた



キラキラと輝く髪が眩しかった

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