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inevitability  作者: fairy
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ep0 プロローグ

小さい頃から家にある自分と同じ名前の桜の木が好きだった

よく登って町並みを見ていた

家は高台にあり、街をよく見渡せるのに絶好の場所だった

親友のゆきのはその下でよく弟のあおいと一緒に本を読んでいた


そんなある日、いつものように過ごしていると風が吹いて男の子用のキャップが飛んできた

それを取って桜の木の上から持ち主を探すと、家の前に女の子が1人立っていた

「ありがとう」と笑って走る姿に見とれた

女の子なのに妙にドキドキして、不思議な気分だった

今でも桜の花びらと共に走り去る女の子の夢を見る





「………」


「………くら」


「さぁくぅら!遅刻するよ!」

ガバッ


「やばいっ今日朝練だった!」



私、垣里(かきざと)さくら、高2

昔から運動神経が良くて、性格がさっぱりして見た目クールに見える事から学校の女子には結構モテる

あんま女子にはモテても嬉しくないけど


「さくら、いいかげん1人で起きれるようになれよ」



弟のあおい、同じ高校の1年

あおいは私とは性格とか結構正反対

見た目も女の子みたいに可愛い

ちょっと羨ましいくらい



「…てか今日からテストじゃん」

着替え終わってから気付いた


「だから早く起こしたんだよ、勉強しなきゃでしょ」

「あぁ…そっか」


軽く化粧をして、あおいと階段を下りる


「おはよう、さくら」

「おはよっゆきの~テストだったのすっかり忘れてた(汗)」

「ホントあおい君いないと起きられないのね

 あおい君に彼女ができたらそんなこともうしてもらえないかもね」


宮島(みやじま)ゆきの、同じ高2

いわゆる幼馴染、親同士もとても仲がいい

眉目秀麗だが、性格は結構冷たい感じに見られがち

実際はそうでもない、でもドS



「えっあおい、彼女出来たの?」

「なわけねぇじゃん、さくら以上の女なんかそうそう見つからないよ」

「……結構沢山いると思うけど」

「いないの!」


あおいは私にギュッと抱きついてきた

あおいは言い方キツいが、私の事が大好き


「あおい君のシスコン振りは相変わらずね、でもそろそろ時間見てくれない?」

「「やばっ」」



垣里家の朝はいつもこの3人で始まる

というのも、私の父親は垣里グループの代表取締役

レストランなど飲食関係の会社を経営していて海外にも飛び回っている

母親はそのうちの一つの料亭で女将をしている

だから両親は2人とも朝から仕事でいない

でもメイドと執事達がいるので、ご飯などは全部準備してくれる

ゆきのの家も同じで、父親は宮島グループの代表

服飾関係の会社を経営していて、母親は家でお茶の先生をしている


ガラッ

「セーフ、誰もいない」

「まぁね、まだ7時だし…ほらっ早く準備して勉強するよ」

「俺も一緒に勉強していい?」

「あおいのとこも誰もいなかった?」

「当たり前じゃん、こんな朝来る奴さくら達だけだよ」

「すいません…」

「ほらっいいから、どこだっけ?」

「うんと、ここの意味が…」

「……さくら、今日英語じゃないけど」

「えっうそ!」


そう、私の弱点はこの頭の悪さ、尋常じゃない位バカ

だから朝誰もいないところでゆきのに勉強を教えてもらっている

ゆきのは学校で1・2を争うほど頭がいい

そのお陰で私は垣里の名を汚さずにすんでいる



キーンコーン

カーンコーン



「よし、今日のはこれで大丈夫かな」

「ありがと~ゆきの」

「予鈴なったから先行くよ~」

「さくらぁ、早く」

「あっあおい、ゆきの~待って」


図書室から慌ただしく走る



「あっさくら先輩、ゆきの先輩おはようございます」

「「おはよう」」

「さくらせんぱぁい、ゆきのせんぱぁい」

「きゃあ~さくら先輩」

「今日もさくら先輩かっこいい」

「うん、ゆきの先輩も超可愛い」

「あっあれってあおい君だぁ」

「さくら先輩の弟?すごい可愛い」

「「「きゃあ~」」」


皆に手を振って挨拶しながら教室に向かう


「皆、さくらが超バカだって知ったらどうなるのかしら」

「ゆきの、言うなよ!」

「言うわけないでしょ、何年勉強教えてきたと思うのよ」

「ほらっあおいはあっちでしょ」

「うん……じゃあな」

「あっ部活ないから一緒に帰ろうね」

「うん!」手を振って笑顔であおいは自分の教室に向かう


「そうやって甘やかすからあおい君も姉離れしないのよ」

「いいの」




「きゃああああ」

「王子~」



「この騒ぎは…」

「来たわね」


ゆきのはイライラしている


「あっ垣里、宮島おはよう」

「おはよう、神崎君」


ゆきのはシカトして教室に入っていった


「あっゆきの!神崎君、ごめんね」

「いつものことだから大丈夫だよ」


笑顔で優しい声のこの人は神崎悠人(かんざきゆうと)

ハーフのキレイな顔ですごくさわやか、勉強もスポーツも何でもできる

だけど、そんなことを鼻にかけないで誰にでも平等に接してとても人気がある

女子からは「王子」ってあだ名で呼ばれてる

学年トップを奪われてからゆきのは神崎君をライバル視している



「悠人、やっと来た~ここ教えて~」

「今からやっても遅いんじゃない?」

「さくらウルサいっお前にはこのプレッシャー判らないだろ」

「えぇ、わかりません」

「おまっ…」

「はい、そこまで

 時間ないよ?渉どこ?」


神崎君と仲良く話すのは白河渉(しらかわあゆむ)

ウチの高校の学長の息子

だからか学年10位以内にいないと怒られるらしい

こんな言い合いはいつものこと

渉と私は1年の時同じクラスだったので仲がいいんだ



「相変わらずの王子っぷりね」

「………」

「さくら?」

「……かっこいいよねぇ」

「あぁ…はいはい」



そう、神崎悠人は私の好きな人



「どこがいいんですの」

「知ってるでしょ?ただ完璧な人だから好きなわけじゃないってことは」

「耳にたこ」

「耳にたこなんていないけど?」



私と神崎悠人の出会いは1年の冬、初めて試合に負けた日だった

学校ではその時にはもうクールなイメージがついていたから皆のが帰ったあと、校舎の裏で泣いていたところを神崎悠人にみられた

神崎悠人は入学した時から人気があったから名前だけは知っていた

最初は何も言わずに去っていった


『王子のくせに、大丈夫位言えないのかしら』




『誰にも言わなければいいけど…』



はぁはぁ

「大丈夫?」


校舎にいた彼は私の前にいた


「…なんで?」

「えっやっぱ…1人のがいい?」

「……」

「そうだよね、はい

 これあげるから思う存分に泣くといいよ」


彼はハンカチを渡して去ろうとしていた


「待って」


私は初めて話した彼の背中に抱きついた


「あの?」

「ごめん、もう誰にも見られたくないから少しこのままでいさせて」


私は彼の背中に甘えて静かに泣いた




次の日になってもその次の日になっても誰も私の噂をする人はいなかった


『黙っててくれたんだ』


その時から彼を目で追うようになった

2年になってクラスが一緒になって渉もいたし少しずつ話すようになった

彼はその時のこともう忘れたかもしれないけど

いやむしろ、その方がいいかも…そう思っていた




ある日の休み時間

次の授業当たることを忘れてて、あの場所で隠れて教科書を覚えていた


「また背中貸そうか?」



目の前に彼は立っていた


「あれ、忘れた?」

「いや……神崎君覚えてたんだ」

「うん」

「ありがとう、誰にも言わないでくれて」

「別に言うほどの事じゃないし」

「そうね」

「垣里は宮島に言った?」

「なんで、ゆきの?」

「宮島の前ではちょっと雰囲気違うし」

「そう?でも、あんな大泣きはゆきのの前でもしないわよ」

「そうなんだ、じゃあ2人だけの秘密だね」



ニカッと笑った顔は今まで見たさわやかな笑顔と違う雰囲気で私の心を持っていってしまった



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