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曇鏡止水  作者: 槻縞蜜柑
2/7

1.ビスクドール

初めてのホラー挑戦です。温かく見守っていただければと思います。

ビスクドール。

十九世紀のヨーロッパで流行した、磁器という焼き物の顔を持った人形。

当時は上流階級のものしか所持出来なかった人形は、時代とともに職人の手を離れ、今や粗悪な量産品の一種として数えられるものになってしまった。


しかし、当時のものはまだ残っている。

時代を経ても高い人気と高い希少性が、その価値を大きく吊り上げているのだ。


物によっては、その価値は数千万円にもなる。

もちろん、これは相場ではない。数万円で取引されるものももちろんあるが、当時のものはこれだけの資金を持った資産家でないと買えないものも少なくはない。






美術館にて。


類を見ないほどの人だかりの先には、一体のビスクドールがあった。

屈強な警備員に光沢の強い赤のベルベットロープ、立方体のガラスケースと分厚い壁に守られたこの人形は、遠く離れたフランスの地で生まれたらしい。


陶器の肉体は透き通るように白くおよそ生きているようには見えないが、表情は繊細で、その存在をより際立たせている。


世が大量生産の波に攫われる前、職人が一つ一つを丁寧に仕上げていた、大昔の作品。

何百年も前に一体作られたきりの古いモデルだ。

何も知らぬものが見ればそんなことわからないだろう。現代技術で生まれてきたような、新品さながらの美しさでそこに座っていた。





人だかりは、その多くが人形に強い興味関心を向けている。

その中にたった一人、呆然と立ち尽くすものがいた。

隣に立った友人らしき人物に目もくれず、ただ目を離さない。いや、離せない様子で人形を見ている。






だんだんと呼吸が浅くなり、しまいには人だかりを飛び出したその人物は、小柄で、幼い顔立ちの少女だった。

人形の瞳には、相変わらず生気がない。

見切り発車なので、不定期投稿になるかと思われます。ご了承いただければと思います。

次話は来週の同じ日、時間に投稿します。

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