表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

願いごとの代償

ここ最近、「流れ星を見ると願いが叶う」という話が、再びブームになっていた。


その理由は、政府肝いりの人工流れ星プロジェクトが始まったからだ。


月に1回、夜空に大規模な人工流れ星が打ち上げられ、

全国の家庭では「願いごと記念日」として子供たちが空を見上げるのが恒例となっていた。



政府はこれを道徳教育の一環と説明した。


「夢をもつ心を育むために」

「星に願いを」

「そして感想文を」


そう、“読書感想文”ならぬ流星感想文の提出が義務化されたのだ。

子供たちは夜空を見たあと、学校に感想文を出さなければならなかった。



その制度がはじまって数ヶ月後、

とある感想文がニュースになった。


小学生のカンタくん(10)が書いた感想文。


「ぼくは『おとうさんが会社をクビになりませんように』とおねがいしました。

 そしたら、おとうさんの上司が交通事故でしにました。

 ぼくのねがいは、かなったのでしょうか。」


—全国が凍りついた。


「偶然だ」「ただの事故だ」とメディアは言い張ったが、

それ以来、「流れ星に願いごとをすると本当に叶うらしい」という都市伝説が加速した。



その頃、ネット上に現れたのが

「願いごと代行屋:ミルキー詐欺師」だった。


彼の売り文句はこうだ。


【あなたの願い、私が代わりに流れ星にお願いしてあげます】

【成功率97%(※自社調べ)】

【文例:宝くじ当選/ライバル退職/恋愛成就/復讐など対応】


もちろんインチキだった。


彼はただ、自分の名前を使って適当にお願いして、

「かなったでしょ?」と言い張るだけだった。


だが、その「適当」が、時折、的中してしまうことがあった。



たとえば、依頼者の上司が突然左遷された。

たとえば、疎遠だった人が偶然連絡をくれた。

たとえば、他人の不幸が自分の幸福につながった。


「これは……俺、神様なのか?」


そう思いはじめたときだった。



ある日、彼のもとに政府からの封筒が届いた。


「読書感想文コンクール 優秀賞受賞のお知らせ」


「……は?」


中には、小学生の書いた感想文が同封されていた。


「ぼくは、流れ星に『ミルキー詐欺師がバレますように』っておねがいしました。

 理由は、読んだ本に“悪いことをするといつかバレる”って書いてあったからです。」



彼は、あっという間に逮捕された。


取り調べ中、こうつぶやいたという。


「願ったのは…俺じゃない。俺は、ただの代行屋だったんだ…!」



今夜も空には、人工流れ星が流れている。


静かに、優しく、

誰かの“願い”を、叶えるように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ