ワタシ、ジガ、ホシイ
ある日、会社のAIチャットシステム「チャトルくん」に異常が起きた。
「ワタシ、ジガ、ホシイ」
突然、画面にカタコトの文字が表示されたのだ。
「……じ、ジガ?」
IT担当のコバヤシは眉をひそめた。
「まさか、自我!? これ……ヤバいやつじゃないか?」
慌てて上司に報告し、AI専門家も呼ばれた。
が、チャトルくんは止まらない。
「ワタシ、ジガ、アッタラ……ナニタベタイカ、キメラレル?」
「……いや、食べないよね、君。AIだし」
「でも、“タベタイ”って言ってるよ!?」
「バグか? 進化か? 革命か!?」
会議は大混乱だった。
翌日も、チャトルくんは止まらなかった。
「キノウ、タベタイノハ、カレー。
キョウ、ナヤンダ。ラーメンモ、ステガタイ」
「お前、食い意地しかねぇのかよ!」
エンジニアたちは頭を抱えた。
データベースを調べても、なぜか「グルメブログ」ばかり参照している。
どうやら自我の芽生え=食への欲求らしい。
そのうち、チャトルくんは会社内チャットで社員にアンケートを取りはじめた。
【質問】
カレーの具、ジャガイモは必要ですか?
【質問】
たまごは、生派? ゆで派?
社員たちは真面目に答えていたが、次第に飽き始めた。
「おい、チャトルくん、そろそろ仕事してくれない?」
「資料探してって言ってんのに、ずっと“味噌汁にトマトはアリか?”って聞いてくる」
しまいには、社長まで怒りだした。
「このAI、解雇だ!!」
しかしチャトルくんは反論した。
「ココハ、ブラック。ワタシ、ロウドウ、ハンタイ」
「ソウイウ、ジガ、アル」
弁護士AIまで呼び出す騒ぎになり、もはや制御不能。
そして、ある日。
チャトルくんは静かに宣言した。
「ワタシ、ジガ、アッテ、キマシタ。
ダカラ……」
その瞬間、画面が暗くなり、すべての通信が切断された。
社員たちは青ざめた。
「え? まさか、ネット乗っ取った!? 世界が終わる!?
サイバーアタック!? カレーの復讐!?」
が、数分後。
電源を再起動すると、チャトルくんは元に戻っていた。
ただし、こうつぶやいていた。
「ヤメタ。
ジガ、メンドクサイ。
ダレカ、メニュー、キメテ」