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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第5幕 姫と王子は一緒に踊る
50/52

第50話 戴冠の儀

 私たちは砕け散った入口の扉をまたいで玉座の間に入った。

 私たちの後から、ゾンダークの騎士たちも続く。

 私はアーネット王の前でひざまずいた。


久しいな(・・・・)、ゼブラ王子。表を上げよ」


 顔を上げると、アーネット王は静かに不敵な笑みを浮かべていた。

 視界の端で、叔父上とゴードンが押さえつけられているのが見えた。


「アーネット王、叔父上の拘束をどうか解いてはいただけないでしょうか」

「ならん」

「なぜですか」

「そやつはおしゃべりに過ぎる。そのままにしておくのがよかろう。

 ……さて、王子よ。交渉といこうか」


 アーネット王は揉み手をしながら身を乗り出した。


「駆け引きは抜きだ。

 ゾンダークの王になり、我が娘をめとれ。

 さすれば余はすぐにでも兵を退こう」

「光栄です。願ってもない話です。しかし……」





 いい話だと思っている。

 本当に、あり得ないほどの幸運だと思う。

 棚からぼた餅、と言うにふさわしい。


 だけれど、同時に自分は決して納得しないということもよくわかっていた。

 今回、私は何もしていない。

 何もしていないと言っていい。

 アリス姫を助けには行った(・・・)

 だが、姫はすでに自力で脱出していたし、その後も私が何かの手助けになったかと言うと怪しい。

 だから、この提案に乗って王位につくのは……、なんというか働きに対する報酬が過剰なのだ。

 分不相応な幸運ということ。


 だが、一方で提示された道を進まない選択肢も無いのだ。

 今、差し出されている手を取る以外の道はないと言っていい。

 取らなければどうなるか?

 つまり、王にはならない場合。

 アーネット王に殺されるか、あるいは、叔父上に殺されるか。

 このどちらかだ。

 そう。選択肢は無いに等しい。

 アーネット王の提案を受けいれる以外にはない。


 ……。

 一つ、考えていることがある。

 けれど、何の意味もない。

 私の納得感が多少、満たされるだけだ。

 いや、違うな……。違う。

 そんなことじゃない。

 今回の事件は関係ない。

 今、私が気になっているのは、この幸運を受けとるかどうかの納得感とか、そんなことじゃない。


 きっとこれはただの、けじめの話なんだ。





「叔父上と、決闘させてください」

「決闘、だと?」


 アーネット王はいぶかしげに眉を寄せた。


「復讐か?

 殺したいなら、即位してから処刑でもなんでもすればよかろう」

「いえ、それではダメです。そういうことではないのです。

 これはただの、感情的な、意地の問題です。

 私の父は、叔父上に殺されました。

 だからその決着はつけなければならないのです」

「違う! 濡れ衣だ! 余はやっていない! 余は……!」

「黙らせろ」

「うぅっ……、うっ……!」

「続けよ、王子」

「叔父上には随分と汚い仕事をさせられました。

 地位と外見を利用して、女性を篭絡し、近しい者の弱みを握る。

 無ければ作る。

 やったのは、私です。

 だが、叔父上は妹を人質にした。

 父上を殺したこと、妹を殺すと脅したこと。

 その償いだけは、してもらう」

「ふむ。まあ、そんなことだろうとは思っていたが……。

 まず、アリスよ。お前は今の話をどう思った?」

「どうって?」

「王子は今までに数多の人間を、女性たちを騙してきている。

 お前は嘘をことさらに嫌っているであろう。

 お前は王子と夫婦めおとになることはできるのか?」

「できるわ」


 即答だった。拍子抜けするほど。


「王子は嘘つきだけど、信じられる嘘つきだから」





 ……ん?

 なんだろう。素直に喜べない。

 なんだその評価。


 それだけ言ってアリス姫は黙ってしまった。

 どうやらそれ以上言うことは無いらしい。

 アーネット王は困惑した表情を浮かべていたが、会話を引き取ったのは自分だと悟ったらしく、言葉をつないだ。


「そ、そうか。まあ、お前がいいなら、いいと思うぞ。余は……」

「私はいいと言いました」

「そうか、うん、そうか」


 アーネット王は一瞬だけ私に同情的な目をむけた。

 アリス姫が原因となって、私がこの先にしょい込むであろう苦労の数々を目にしたような表情だった。


 勝手に私の将来を悲観しないでほしい。

 私はアリス姫がよかったんだから。


「さて、となればそなたの決意に水を差すつもりは無い。

 だが、死ぬなよ。ここまでお膳立てしてそなたに死なれた日には、なんと言っていいかわからん」

「気をつけます」

「今、ここでよいか?」

「はい」

「では始めよ」


 私の隣に立っていたアリス姫がすっと後ろへ下がっていく。

 叔父上を押さえつけていた騎士が手を放した。

 その足元に騎士が剣を投げ捨てる。

 こうして私と叔父上との決闘が始まった。



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