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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第1幕 求婚なんて正気じゃない
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第5話 ブルースクリーン

 パンッパンのパンである。

 軽い食事としてコーヒーと一緒にテーブルの上にならんだ、パンのことではない。

 焼き立てでふっくらとしているが、パンッパンのパンとは言えない。


 パンッパンのパンなのは、王子の顔のことだ。

 私の正面に座っているゼブラ王子である。

 ……記憶を飛ばすためとはいえ、少し、やりすぎたとは思う。

 ちなみに記憶は飛ばなかった。

 残念だ。

 本当に、残念だ。


「ゼブラ王子、その、申し訳ない。我が娘が粗相をしてしまい……」

ひへ(いえ)ほひひはははふ(お気になさらず)

「ほら、王子もこう言っていることですから。気にしないで」

「お前は少しは反省しろ!」

「んげぇっ」


 私がへらっと笑っていると、すかさず脳天に父上の拳骨が飛んできた。

 綺麗なお星さまが見えた。


ふふふ(ふふふ)はははほほひひへふへ(仲がよろしいですね)

「「どこが!」」

ほは(ほら)ひひははっへ(息があって)はっひゃふ(らっしゃる)


 王子は満足に口が開けないのでパンを小さ~くちぎって口に運んでいる。


 なお、ここから王子のセリフを通常通りの表記に戻す。

 書きにくいし、読みづらいし、いい所が無いからだ。

 ただし、パンッパンのパンが治ったわけではない。


「アリス姫は話通りの飾らないお方のようだ」

「それで……、ゼブラ王子、貴公は何用で参られたのだ?」

「え? お父様、聞いていたわけではなかったのですか?」

「ああ、訪問したいという連絡は来ていたが、目的や内容については何も。

 ただ、お前を交えて話がしたいと」

「はあ……?」


 なんだそれは。狙いが見えないな。

 その笑みの下で何を企んでいるんだろう?


「これは失礼しました、アーネット様、アリス姫。

 内々でお話ししたかったので、伏せさせていただきました。

 実はご縁談の話をするために参りました」

「えんだん?」

 父上はあんぐりと口を開けた。

「えんだんと言ったか、貴公?」

「はい」

「えんだんとは、縁談のことか?」

「左様です」

「誰に?」

「アリス姫にご兄弟かご姉妹は?」

「いない」

「なら、おわかりでしょう? 聞くまでもないことです」

「誰が?」

「もちろん、私めです」

 ゼブラ王子は胸に手を当てた。

「嫡子ではない不肖の身ですが、どうかアリス姫に求婚したく……」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 父上は腕を突き出して王子を制した。

 父上がここまで取り乱すなんて珍しい……。


 ……。

 縁談?

 縁談だって?

 私に?

 王子が?

 たった今、顔面をパンッパンのパンにした相手に求婚?


 ……んぁ? どゆこと?

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