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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第5幕 姫と王子は一緒に踊る
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第47話 バカの道

 最初、私は北東の塔を目指していた。

 けれど途中で騎士たちに見つかって逃げ回っているうちに方向がわからなくなり、窓の外にたっている教会に目がいった。

 大きな鐘がついていたのだ。


 結局のところ、父上に合図が送ることさえできればなんでもいい。

 塔でなくてもいい。

 父上ならわかってくれる。

 むしろこっちの方がわかりやすいだろう。


 私は騎士を引きつれて教会に駆けこみ、あちこち散々走り回って鐘を鳴らすための梯子を見つけ、鐘を鳴らした。





「これでよし」


 盛大に鐘を鳴らして私は満足した。

 しかし、さて下りようと階下をのぞくと、騎士たちが大挙してひしめいていた。

 かといって屋根から飛びおりるのも考えものだった。

 教会の外にも騎士たちがひしめいていたからだ。


「……うーん」


 梯子を下りることにした。

 遅いか早いかの違いしかない。どちらでもよかった。

 狭い部屋の真ん中、梯子がある場所だけがぽっかりと空いている。

 ここに立て、と言わんばかりだ。

 私は素知らぬ顔で梯子を下りてそこに立った。


 誰もかれも、出し抜かれたことに腹を立てている様子だった。

 正直、少し怖かった。

 彼らも鍛え抜かれた兵士たちだ。

 ウォールほどではないが、体格はかなりいい。

 そんな彼らが私に怒りに満ちた目をむけているのだ。

 多少の恐怖くらい覚える。


 しかし、私はルナエの火剣姫と呼ばれた女だ。

 美人で破天荒な火剣の姫君。

 それが私だ。

 なら、虚勢の一つも張るのが私らしい振る舞いってものだろう。


「あらあら、皆さんお揃いで。どうかした?

 お祭りでもあるのかしら?」

「……アリス姫、お戯れが過ぎますぞ」


 口調こそ丁寧だったが、ドスの利いた低い声で騎士が言った。


「ここはゾンダークの王城です。ルナエではない。

 そもそもあなたは客人ではなく、罪を犯した罪人です。

 大人しくしていなければ―――」

「ハッ、首が飛ぶって?」

「……左様です」

「ここがどこだろうと、私があなたたちにとって罪人だろうと、なんだろうと。

 私は私よ。大人しくしろ? おかしな話ね。私はやりたいようにやるわ。

 それをあなたたちがどうするかは、あなた達が決めればいい」

「……ならば致し方ありませんな」


 騎士は片手を上げて合図した。

 背後の騎士たちが一斉に槍を両手でもってかまえた。


「これ以上騒がれぬよう、ここで捕まえさせていただきます」

「だったら槍をかまえるのはおかしくない?」

「逃げるなら、ケガをしますよ」

「上等だわ」


 ……とは言ったが、完全に虚勢だった。

 騎士たちはかきわけることなどできそうもないほどに密集しているし、そもそも外に出たところで逃げ場はない。

 結局、大人しく捕まるか、ひと暴れしてから捕まるかの二択なのだ。


 前者はろくでもない。

 後者はもっとろくでもない。

 そして私の選ぶ道は最初から決まっている。

 バカだと思う。

 知っている。私はバカなんだ。最初から。



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