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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第5幕 姫と王子は一緒に踊る
45/52

第45話 塔を目指せ

 王子について地下道を十分ほど歩いただろうか。

 正面に細い光の筋が見えた。

 上下左右にぐねぐねと進んできたものだから、てっきり迷ったんじゃないかと内心疑っていたのだがそんなことはなかったようだ。


「ここ?」

「ああ、ここは地下道の出口の一つです。ここから城に出られますが―――」

「じゃあ、さっさと出ましょう。こんなジメジメしたところ、一秒だっていたくないわ」


 私は光っている隙間に手を伸ばした。

 そこだけが木製だった。

 きっとこれは扉だ。

 押すか引くか、ずらすかすれば開くのだろう。


「あっ! ちょっと待ってください」

「え?」


 時すでに遅し。

 私は扉を開けようと力を入れていた。

 断っておくが、壊そうなんて思っていなかった。

 ただ、王子が急に声をかけたものだから、そう、ビックリしたのだ。



 バリィッ



 軽~く押しただけなのに、扉は破けた。

 扉は思ったより薄い板でできていた。

 たぶん、安くて軽い方が交換しやすいということなのだろうな、とまぶしさに目を細めながら思った。


 目が慣れると、目の前に鎧を着た男が座わっているのが見えた。

 何人もの騎士たちがテーブルを囲み、ギャンブルをしていた。

 全員があっけにとられたように私を見ている。

 今まさにコーヒーか何かを飲もうとしていた男は、私を見たまま中身の液体をこぼしていた。


「あー……。こんにちは。ご機嫌いかが?」

「ひ……」

「ひ?」

「姫だーーーッ!」


 騎士の一人が叫ぶと、とたんに騎士たちが立ち上がり色めきたった。


「アリス姫が脱獄したぞ! 捕まえろ!」

「あらま」


 私はすぐさま扉から抜け出して、テーブルの上にジャンプした。

 後ろで再びバリバリという音がする。私を捕まえようと飛びついてきた騎士たちが扉につっこんだ音だろう。

 テーブルを走った。カードとコーヒーを蹴散らしながら。

 私の足首をつかもうと騎士たちが手を伸ばすが、逆にその手を踏んでやった。

 テーブルを飛び降りて反対側の扉から外に出て、すぐに閉めた。

 廊下に人影はない。

 すぐさま真上にジャンプし、今しがた失敬した剣を壁に突き刺して天井に張りついた。


 直後、部屋の中から堰を切ったように騎士たちが出てきた。


「いないぞ!」「手分けして探せ!」


 王子は、最後の騎士が走り去ってからしばらくして出てきた。

 そーっと扉から顔だけ出して騎士がいないかうかがい、天井を見上げた。


「器用ですね」


 私は天井から下りて剣を鞘にしまった。


「これくらいできないとウォールと父上からは逃げられないわ」

「ははは……」

「で、どっち? 塔は」

「こっちです」





 王子の案内で廊下を走った。

 もうすでに私が脱走したことはバレている。

 いつどこが閉鎖されてもおかしくない。


「ライラちゃんは? どこにいるの?」

「先に塔に行くべきです」

「はあ?」


 私は立ちどまり、振りかえった。

 王子も急停止し、慌てたように手を動かした。


「こ、こんなところで止まってたら見つかっちゃいますよ!」

「そんなことどうでもいいわ!」

「どうでもいいって……」

「いいかしら!?」


 私は王子の胸に指をつきつけた。


「ライラちゃんは最優先! わかった!?」

「いや、それでは―――」

「わかったの!?」

「……わかりました」


 私は振りあげた拳をおろした。


「ですが……」

「まだ何か文句があるっての!?」

「きっ、聞いてください! 聞くだけ!」

「言いなさい」

「せめて二手に分かれましょう。お父上は呼ばなければ」

「まあいいわ。じゃあ、私が塔。王子がライラちゃんね」

「え、しかし、」

「異議は認めないわ」

「わかりました」


 王子は不服そうな表情で受けいれた。

 王子の言い分ももっともだとは思う。

 父上をきっちり呼べずにつかまってしまえば、私たちも今度こそ殺されるし、ライラちゃんだって守れない。

 だから塔に行くことを最優先にすべきだと。

 そういうことだろう。


 クソくらえである。


「塔って、あれよね?」


 私は窓から見えている塔を指さした。

 途端、王子は口をへの字に曲げた。


「そっちは北東じゃないです。南です」

「……えーと。

 ……じゃあ、どっちに行けばいいの?」



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