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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第1幕 求婚なんて正気じゃない
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第4話 親バレするお前が悪い

 ゼブラ・ゼニス・ゾンダーク。

 ゾンダークの王子。

 いまは亡き先王の遺児。


 まるで作り物のような美しい容姿を持ち、それに惹かれた貴族の女性たちと浮名を流してきた。

 いずれも長続きはせず、相手の家は遠からず没落するという。


 噂話だ。

 いずれも噂話にすぎない。

 けれど、それが私が知っているゼブラ王子の全てだ。



 ***



「ど、どういうことだ、アリス……」


 父上が珍しく狼狽している。

 かわいそうに、また寿命が縮んだんじゃないかしら?


「さきほどお会いしましたの。

 私が外で荒事に巻き込まれた際に―――」

「確かに挑発したのは相手ですが、先に手を出したのはアリス姫でしたね」


 ゼブラ王子は即座に訂正した。

 私がぎろりとにらむと、王子は両手を肩のあたりまで上げて「私は無害な人間です」とでも言いたげな笑顔を浮かべた。

 食えない男だ。


 それはそれとして、父上はため息をついた。


「アリス、民に手を出したのか」

「ごめんなさーい」

「いや、それは別にいい」


 いいのか。

 いや、そうよね。いいよね。

 可愛い一人娘が襲われそうだったんだから、仕方ないよね。


「お前とケンカになるということは、相当血の気の多いタイプだったのだろう」


 ……私があれと同じレベルで血の気が多いってことだろうか?


「そういう危険分子を間引いてもらう分には、構わん。だが……」


 父上は椅子のひじ掛けをガンと叩いた。


「王子に見られるとは、どういうことだ!?」

「そんなあ、理不尽です。

 王子様だって変装してらしたのだから、わかるはずありませんわ」

「普段からお淑やかにしていないから、このようなことになるんだ!」

「お父様、先ほどとおっしゃっていることがひっくり返っていますわ。

 落ち着いてくださいまし?」

「私は落ち着いているっ!」


 父上ははーっ、はーっと荒い息を吐きながら怒鳴った。

 落ち着いている人間にはとても見えない。

 これほど矛盾した発言もそうそうないだろう。


「まあまあ、ご両人、落ち着いてください」

 ゼブラ王子は相変わらずのメッキスマイルで言った。

「私は気にしていませんから。

 もちろん口外などいたしませんし、火炎昇竜拳も忘れますので」

「火炎昇竜拳……?」


 父上が目を丸くする。


「なんだね、それは……?」

「アリス姫の必殺の拳です。それはもう清々しいほどに真っすぐな拳で……」


 いきなりなに言ってるんだ、こいつ!?

 やめろ!

 私が寝る間も惜しんで一生懸命考えた技の名前を、父上に暴露するな!

 護衛騎士のウォールだって知らないんだぞ!


「うわあああ! やめろぉ! 黙れぇえええ!」


 気づけば私はゼブラ王子に飛びかかっていた。

 彼をソファに押し倒し、頬に往復ビンタする。

 記憶は脳に蓄積される。

 こうすれば、きっと痛みと衝撃と振動で記憶には残らないはずだ。

 うん、きっとそう。


「あばばばばばばばばばば……!」

「忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ!」

「ひ、姫様!?」

「アリス! 何をしている!? ウ、ウォール! アリスを押さえろ!」

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