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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第4幕 王子の嘘は、私が全部焼き尽くす
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第37話 鳥かごは泣いている

「こっ、殺せえ! その野蛮人を! 早く殺せ!」


 ゾンダーク王があごを震わせて叫ぶ。

 本当に殺しておくべきだっただろうか?


 私がにらむと、王は怯えた様子で後ずさりした。


「何をしている! ゼブラ、早く殺せ!」

「……お待ちを。アリス様の単独犯とは、考えられません。一度捕えて……」

「ならん! 殺せ! 今すぐに!」

「……。陛下、どうか落ち着いてください」

「余は落ち着いておる!」

「陛下、今、背後関係を徹底的に洗わねば、また襲撃されます」

「ぐぅ……」


 王は悔しそうにうなっている。

 よほど私を殺したいらしい。

 しかし、護衛騎士も王子の加勢に回った。


「……私も生かして捕らえるべきと考えます」


 彼は手首から血を流しながら、冷徹な目で私と王子を観察している。

 彼は、私たちの茶番を見抜いている。

 そんな気がした。


「彼女を生かしておけば、情報を引き出せます。

 殺してしまえば、それまでです。

 どうか、ご辛抱を……」

「ちっ! 臆病者どもめ! おい女!」

「……あぁ?」

「ひっ!? よっ、余の寛大な心にかっ、感謝するんだな!」

「……」


 私は唾を吐こうとした……というか、吐いたんだが、王子に手で防がれてしまった。

 そのまま口をふさがれる。

 片手が自由になったが、それは護衛騎士に抑えられてしまった。


 王はさらに二言三言捨て台詞を吐いて、この場を後にした。

 まくし立てる男がいなくなったおかげで、ずいぶんと静かになった。


 会場にはすでに貴族はほとんど残っていなかった。

 部屋の隅にほんのわずか、怖いもの見たさの貴族が残っているだけ。

 あとは、忠臣たちが動かずに残っているくらいだ。





 護衛騎士は自分の服を切って軽く止血した。


「私は彼女を拘束するための道具と手勢を連れてまいろうかと思います。

 王子はそれでよろしいでしょうか?」

「ああ。それでいい。急がなくてもいいよ」

「かしこまりました」


 護衛騎士はうやうやしく礼をすると、踵を返して壇上を下りた。


 居残っている貴族たちに大声で退室を促している。

 現場を保存するためだとか何とか。

 まあ、適当な言い訳だろう。


「……バカな真似を、しましたね」


 ぽつり、と王子がつぶやいた。

 ほとんど泣きそうな顔だった。

 私は驚いたが、努めて平然とした表情を保とうとした。


「それは私のセリフです。あいつを殺そうとしたでしょう。

 あんなの、ダメだわ。あなたはそんなタイプじゃないでしょう?」

「魔が差すこともあります」

「ライラちゃんのことも忘れて?」

「……そうです」

「呆れたものねえ」

「あなたはどうなんですか?」


 王子はきっと顔を上げて言った。

 怒ったように眉を寄せて言う。


「こんな……、こんなことをして、殺されると思わなかったんですか?」

「思ったわ。あなたに殺されるつもりだった。どうしてトドメを刺さなかったの?」

「さ、刺せるわけないでしょう! ふざけないでください!」


 王子は大声で怒鳴った。

 驚いた。

 珍しいなんてもんじゃない。

 私は王子が怒鳴るところなんて、初めて見た。

 それどころか、感情を表に出すのを見ること自体、初めてかもしれない。


「……うるさいわ。こんな近くで叫ばないでちょうだい」

「あなたはっ……! 私が、私がどれだけっ……!」

「ごめん」

「謝らないでください! あなたは悪くない!」

「ええ……? どうしろってのよ……」

「あなたは私が助けます……」

「会話にならないわねえ……」

「今からでも、王を殺して―――」

「ダメよ」


 私は王子をきつくにらんだ。


「それだけは絶対ダメ。ライラちゃんのことを、忘れないで。

 簒奪さんだつ者になんてなっちゃダメよ」

「でも、あなたを救えます」

「私のことは、諦めて」

「無理です」

「できるわ」

「嫌です」

「子供ね」

「あなたにだけは、言われたくないです」

「それもそうね」





 その時、ぎいと音が鳴って、会場の扉が開いた。

 護衛騎士たちが近づいてくる足音がした。


 騎士たちが私たちを取り囲み、私を見下ろした。

 王子が私の顔を見つめたまま、そっと立ち上がる。

 王子の拘束から自由になった私も、立ち上がり、両手を上げた。

 護衛騎士が厳しい口調で言う。


「アリス様、あなたを拘束します」



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