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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第4幕 王子の嘘は、私が全部焼き尽くす
34/52

第34話 踊る回転体

「そうですね。お会いできてうれしいです」

「その割には、最近来てくださいませんよね?」


 私はじろっと王子をにらんで言った。

 やけにニコニコしている。

 かすかだが、珍しく表情がある。


 扉の外ではまだメイドたちが王子と話ができたこと(・・・・・・・・・・)で、騒いでいる。

 そんなにメイドにきゃーきゃーされるのが嬉しいのだろうか……。


「ああ、すみません。忙しくて……。

 しかし、そんなに私に会いたかったのですか?」


 あ。

 本当だ。

 これではまるで私が王子に会いたかったみたいだ。

 えーと……。


「……いえ、せめてライラちゃんには会いたいのですが」

「え?」


 期待した答えではなかったらしい。

 王子の笑顔が少し引っ込んだ。

 かわりにややいぶかしげに眉を寄せた。


「ライラは今、体調を崩しています。

 しばらくそちらまで行くのは難しいですね。

 冬が来る前に治るとよいのですが……」

「えっ。そんなに悪くなっていたんですか?」

「ええ、そのせいで……とは言いたくないのですが、あまり離れたくなくてお伺いできませんでした」

「そ、そうでしたか……」

「ご存じなかったのですか? お手紙を差し上げたはずですが……」


 聞いていない。

 そもそも手紙が届いていたことすら……。


 ……。

 なるほど。

 父上か。

 父上が、手紙を握りつぶしたんだ。

 私が王子からの便りが無いことに焦れて、ここに来ることを見越して。


 まんまと父上に踊らされたらしい。





「はあ~~~~~~……」


 私は深くため息をついた。

 してやられた。

 悔しさがこみあげてくる。

 しかし、それ以上に。


 安堵している自分がいた。





 ああ。

 そっか。

 王子は、私のことを見限っていなかったのか。

 そっかそっか……。




「どうかなさいましたか?

 ……え!? 泣いてるじゃないですか!?

 え!? な、なぜ!? どうして!?」

「え……?」


 王子の言う通りだった。

 いつの間にか、私は泣いていた。

 頬に触れると涙が手についた。

 涙があふれている。

 どうしよう。

 とりあえず、ごまかすためにしゃがみ、顔を伏せた。


「し、知りません! 泣いてません!」

「え……、いや、泣いてるじゃ、ないですか……」

「こ、これは……、汗! 汗です!」

「……汗?」

「そう! 汗です!!」

「でも……」

「あ!せ!! 私が汗って言ったら、汗なんです!!」

「は、はあ……」


 王子は頭上に「?」を浮かべているのだろう。

 だが、まったくそれを解消してやろうという気にはならなかった。

 それは忘却を除けば「!」にしか変わらないし、そうなったら私は死んでしまう。

 恥ずかしくて……。





「はー……」

「落ち着きましたか?」

「……泣いてません」

「言ってないです。……汗は止まりましたか?」

「んん……。やめてください」

「何を?」

「話しかけるのを」

「私に話があったのでは?」

「……」


 私はじろっと王子をにらんだ。

 涙で視界がにじんでいてよく見えないが、そこにいるはずだ。


「うう……。

 いーから、あっちいって。ちょっと待ってて。一人にして」

「えーと……、はい……」


 王子はてくてくと距離を取った。

 どうしようか迷いながらベッドか何かに腰掛ける気配がする。


 やっと離れてくれた……。

 私はしゃがんだまま、王子に背を向け、さらに顔を覆った。





 なぜだか、ほおが緩む。

 顔がにやける。

 笑いがこみあげてくる。

 今なら……、今なら、声を殺して笑っても、泣いていると思ってくれるんじゃないか?

 もう、泣いてるのはバレてる。

 バレバレだ。

 笑いたい。

 ちょっとだけ。

 だから、こっそり……。


「ぐ、ぐぐ、ぐぐぐぐぐ……」

「姫、大丈夫ですか、背中でも……」

「ぐぐぐっ……。

 黙ってて! 座ってて! そっから動かないで!」

「はい……」





 はあ……。

 楽しい。



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