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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第4幕 王子の嘘は、私が全部焼き尽くす
33/52

第33話 有頂天

「いいですよ、もちろん」


 返事をしてから、気づいた。

 姫は一人ではなかった。

 三人のメイドと一緒に歩いている。

 今の今まで気づかなかった。


「……君、」

「はっ、はいっ、なんでしょう!?」

「彼女が誰か、知っているのかな?」

「ア、アーネット様です! 王子がご執心の……」

「ば、ばか!」


 口を滑らせたメイドが他の二人に小突かれている。


「うわあっ! もっ、申し訳ありません!!」

「ああ、いや、いいよ、下がって……。

 いや、どこかいい部屋はないかな。

 二人きりで話せるような……」

「ええ!? そうですね……」

「あります! ありますよ!」

「そ、そうか」

「ご案内します! こちらです!」


 メイドたちが先頭に立ってしずしずと進んでいく。

 王子と他国の姫がこうして歩いているなんて、きっと内心では大騒ぎしているんだろうなあ……。


「……ずいぶんと、おモテでいらっしゃるんですね」


 ふと、隣から低い声が聞こえてきた。

 振り返ると殺気の混じった視線が飛んできた。


「え……、どこがですか?」

「今しがた、メイドたちと楽しそうにお話しされていたじゃないですか」

「楽しそう、でしたか?」

「ええ。メイドたちがキャーキャー騒いで、楽しそうでした。

 口元に笑みが浮かんでいましたわ。

 私にはわかります」


 そう言って、じとーっとした怒りの視線をむけてくる。

 私は気になったことを質問した。


「……楽しそう、でしたか?」

「ええ、そりゃあもう。あなたのそんな顔、見たことありませんわ」

「……そうですか」

「ええそうですよ。……ちょっと、なに笑ってるんですか?」

「ふふふ……。いや、失敬……」


 ついに笑いがこらえきれなくなった。

 メイドたちが驚いて振り返り、アリス姫はいよいよ怒っている。

 しかし、どうにも笑いを抑えることができなかった。





 だってそうじゃないか。

 私が本当に楽しいと思っていることを……、

 姫に会えて嬉しいと思っていることが顔にまで出ていて、

 それを本人に誤解されたものの見抜いてくれて、

 しかも嫉妬までしてくれたなんて。


 こんなうれしいことは無い。

 こんな可笑しいことは無い。


「ちょっと! 私、怒ってるんですけど!?」

「あはははは! ごめんなさい! あはははは!」

「笑ってごまかしてる! そうだ、そうでしょう!? ごまかしてるんだわ!!」

「ふっ、ふふふふふ、ははははは!」


 姫が顔を真っ赤にして怒っている。

 きっと姫もわけがわからないに違いない。

 どうして私が笑っているのかわからなくて困惑しているんだ。


 楽しい!

 私が姫を困惑させている!

 他ならぬアリス姫を!

 踊りたい気分だ。

 ここが城でなければ、メイドがいなければ、きっと踊っていただろう。

 姫には見られてもいい。

 彼女はきっとそんなこと気にしない。

 楽しそうに踊ればきっと一緒に踊ってくれるだろう。


「あはははは!」

「なんなのよ、もう……」

「あ、あの、お二人とも、着きました」


 メイドの一人が扉を開いた。

 二人で話すには少々広いが、誰もいない。

 テーブルとベッドまでついている。

 具合の悪くなった人のための部屋のようだ。





「こちら、レストルームになります」

「他の方がいらっしゃらないように、私たちが見張りをさせていただきますので」

「どうぞ、ごゆっくりおくつろぎください」

「「「それでは、失礼します!」」」


 ばたん!と元気よく扉が閉まり、外からメイドが騒ぐ黄色い声が聞こえてきた。

 私たちの関係についてあれこれ勝手な憶測を、こっそり話しているのだろう。

 普段なら眉をひそめていただろうが、今日はなぜか微笑ましいとすら感じた。





「あらためまして……」


 部屋の真ん中でアリス姫は立ち止まり、無表情でお辞儀をした。


「お久しぶりですね、王子。二か月ぶりですか」



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