第23話 想定外も時には起こる
「気に入ってくれた? って、それを選んだのはあなただったわね」
雪だるまのおもちゃを眺めながら歩いているライラがあまりに可愛くて、私は思わず聞いていた。
「うん、これ、ありがとう」
ライラは少し照れながらもお礼を言ってくれた。
かわいいなぁ、この子……。
王子の妹だなんて信じられない。
王子なんてどうでもいいから、この子が妹になってくれないだろうか?
この子だけでいい。
王子は、いいや。
「次はどこを探しましょうか。
そろそろお腹が空いた、じゃなくて姫様もお腹が空くころじゃないかしら」
「そうですね。姫様が行きそうなレストランに行ってもいいですか?」
「もちろん。どこがいいかしら……、じゃなくて、どこに行ったのかしらね~」
私は脳内でどのレストランに行くかを考えながら歩いた。
私が行きたいところに行けば、それがすなわちライラにとっての正解になるわけだし……。
いや、ちょっと待てよ。
あまり人の多いレストランに行って「姫様だ!」なんて言われたら、この茶番は終わりだ。
人のいなさそうな店を選ばなくちゃ……。
「あれ、あの馬車……」
「? どうかした?」
ふと、ライラが立ち止まった。
正面から大きな馬車が走ってくるのが見えた。
真っ白い立派な馬車だ。
どこかで見たような……。
「お、お兄様の馬車です……」
「うっげぇ!?」
おっと、いけない。
姫としてあるまじき声を出してしまった。
私はおてんば姫とか呼ばれてこそいるが、姫ではあるのだ。
そこにはこう、最低限のラインというものが……。
いや、そんなことは今、どうでもいい。
この状況を王子に見られるのはまずい。
ライラと一緒に歩いていて、
ライラは私のことを「アリス姫の影武者」と思っていて、
ライラはアリス姫のことを非常に嫌っていて、
王子はきっと私を見るや、「アリス姫、ごきげんよう!」とでも声をかけてくるに違いない。
隠れなきゃ!
「隠れよう!」
「隠れましょう!」
私たちは同時にそう言っていた。
私たちはうなずいて、意志を統一した。
この道は一本道だ。
わき道はしばらくない。
この通りは住宅街で入ることができるような建物も無い。
だから選択肢は実質、二つだ。
①道の両脇で馬車が通り過ぎるのを待つ。
②馬車から逃げて道を戻り、わき道に入る。
ただ、どちらを選んだとしても問題がある。
もうすでに御者が手を振っているのだ。
王子と同じ顔の御者が。
「ライラ! 探したよ!
アリス姫も! ごきげんよう!」
……さて、どうしよう?




