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火剣の姫はメッキの王子を焼き尽くす  作者: 甲斐柄ほたて
第2幕 このデートは私にとって、命がけの真剣勝負だ
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第16話 私の忘れ物を受けとって!

 ふと、後ろを振り返った。

 アリス姫に呼ばれたような気がしたからだ。

 しかし、姫はいなかった。

 ただどこまでも緑の山々と青い空が続いているだけ。


 姫は見送りに来なかった。

 当然だ。

 私は姫に平然と嘘をついてしまった。

 たしかに、姫を守るためだったと、言い訳は立つ。


 しかし、姫には通用しない。

 それはそうだ。

 そもそも姫は敵国の王子である私を警戒していたのだ。

 最初から信用などされていなかった。

 尻尾を出したな、ということ。


 あの事件の解決云々は問題じゃない。

 要は、姫に人間として信頼されなかったのだ。




「……最初からわかっていたことじゃないか」


 そう。わかっていたことだ。

 あの姫の信頼を得るのが難しいということは、わかっていた。

 彼女の目を見た瞬間から。

 今までに騙してきた人間とはまるで違う。

 肩書きでも、財産でも、容姿でもなく、

 ただの私をまっすぐに見つめていた。

 私を見てくれていた。


 その上で、嫌われたわけだ。

 どうしようもない。




「王子?」

「ああ、すまない。今行く」


 家臣たちを待たせていたことに気づいて馬を歩かせる。

 じきに国境だ。

 もうこの国に来ることもないだろう……。


「―――ぃぃぃぃい……!」

「? 今、なにか言ったか?」

「いえ、我々は何も言っておりませんが……」

「おかしいな、確かに―――」


 なんとなく上を見上げて、

 目が合った。

 空中に浮かぶアリス姫と。

 意味が分からなかった。

 いや、違う。

 浮かんでいるんじゃない。


 落ちてきている。


「王子ぃぃいぃぃいいいい!」

「ア、アリス姫!?」


 どおん、と。

 姫は砂埃をまき散らして、私の隣2メートルほどの位置に着地した。

 着地と呼んでいいのだろうか。

 墜落の方が正しいかもしれない。

 まあ、ともかく、砂埃の中から無傷で現れたのだから、着地としておこう。


「ひどいじゃない!」


 姫は砂埃の中から出てくるなり、怒鳴った。


「この国の姫である私に、挨拶もなしで出て行くつもり!?

 礼儀がなってないんじゃない!?」


 まるでヤクザのようなセリフだった。

 どすどすと足音荒く近づいてくる。

 家臣たちは混乱している。

 姫の姿が見える者は単純に戸惑い、見えない後ろの者は「敵襲だ!」と殺気立っている。

 私はあわてて手を上げて家臣たちに「彼女は敵ではない」ということを伝えた。





「ひ、姫、なぜ空から?」

「道を間違えてあっちの山を登っちゃったのよ」


 姫は後ろの山を指さした。

 崖の上にいるウォールが手を振っている。


「だからウォールに投げ飛ばしてもらったの」

「投げ、飛ばして、もらった……?」

「ええそう」

「そ、そうなんですね」

「そーよ。……そんなことはどうでもいいのよ!」


 姫は思い出したように大声を出した。


「どうして挨拶に来なかったのよ」

「そ、その節は、大変失礼いたしました。

 お父上に伏せっているとお聞きしたので、よろしくと言伝をお願いしたのですが……」

「聞いてないわ! 聞かずに来たから!」

「あ、ああ、そうですか……。それならまあ、仕方ないですね」

「ええ! でも、そう、言伝。言伝ね……」


 伝言があったと聞いて姫は少し気まずそうだった。

 しかし、怒りながら出てきた手前、引っ込みもつかないのだろう。

 強引に咳払いでごまかした。


「ん、んん!

 えー……、あらためて……、ありがとう」

「なんのことですか?」

「助けてくれて、ありがとう」


 姫はお礼を言うのがそんなに照れくさいのか、うつむいて、足をぐにぐにさせながら言った。


「やり方は好きじゃなかったけど、助けてくれたのは本当だし。

 助けてくれたお礼はしないとだから……。だから……」





 姫はちらっと私の顔を見た。


「また来てください。

 今度こそちゃんとしたデートをしましょう」


 やや不機嫌そうに眉をつりあげながらそう言った。

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