三、彼女いじめを受ける?
先週末は約束していた行きたかったテーマパークへ行った。その後辺から学校で彩那は視線を感じるようになった。今までも感じてなかったわけじゃない。いつも刺さるような視線は感じていた。主に咲仁が絡んでくる時に。だが、それとは違う別の感じを思わせる違和感のある視線。
違和感に思いながらもそこまで気にしていなかった。そのうち収まると思っていた。
「ねぇ、咲仁。視線を感じるのは気のせい?」
「えー? お前の綺麗さに誰か気がついたとか」
いつものように放課後、 家に来ていた咲仁に相談したものの役に立たなかった。だからその正体をずっと探しているが分からなかった。
学校で感じるようになった視線は、咲仁の言う通り誰かが気がついたのかと、そんな風に思い始めていた矢先に些細な嫌がらせを受けるようになった。明らかに気のせいではなかったのだと気がついた。
嫌がらせは本当に些細なことだった。机や下駄箱に悪口の書いた紙が入れられていたり、ゴミ袋が入ってたりと、明らかな嫌がらせだ。しかし気にせず放置し続けていた。
そんなある日のことだ、いつものように遊びに来ていた咲仁から声をかけられる。
「⋯⋯お前、嫌がらせ受けてるだろ」
「気がついてたの?」
「お前のことで気が付かないことあるか」
咲仁が気が付かないわけなかった。彼はどんな些細なことでも彩那の変化を見逃さない。
「⋯⋯直接なにかされたわけじゃないし」
「だとしても、お前になにかあったら俺は困る」
「⋯⋯たぶん、女子だしおおよその検討はついてる」
強がってみせたって彼はそれもみとおされているだろうが、今の段階では手の施しようもないことも承知の上だろう。
「それって、誰なの?」
「⋯⋯あんたのファン。咲仁様親衛隊と名乗るやつ」
「あー、なるほどな。俺に彼女がいることは何故か広まってたのもそれ関係か」
そう、咲仁に彼女がいるということも最近広まっていて他校の美人でめちゃくちゃ可愛い子ということになってるらしい。それ故に、いつも咲仁の近くにいる彩那が邪魔だと思っているだから嫌がらせしてやろうという魂胆だろうか。
「そうだよ。それで、なにかある前に考えておかなきゃ対策」
「⋯⋯お前が明かしたら1番の万事解決なんだけどなー」
「⋯⋯理由知ってるくせに無茶言わないで。それに咲仁が嫉妬するでしょ」
解決策一としては、それが1番だとは理解出来ている。だが、理由があって隠しているのにそう簡単に明かすことなんて出来やしないのだ。
「俺のことはいいんだよ、俺はお前の可愛さを知らしめたい」
「嫌だ。まだそれはむり」
お互いのかたくなさによりその日の話し合いは平行線のまま終了させた。
それから数週間がたったころ、嫌がらせはヒートアップしたように感じた。紙などに書かれることは『咲仁様から離れろ』や『咲仁様を汚すな』など咲仁の名前をだしたものに変わりはじめ、そして直接的な被害はなかったはずが、明らかに狙っているようなことが増え始めた。上から水が降ってくるとか、植木鉢のようなものが降ってくるとか、そんな明らかな狙って落としてくるようないじめだ。それらは彩那の身体能力で可憐に避けているので被害を受けてはいないものの狙われているのは確かだった。
「咲仁のやつ最近、黒川といること少ないよな。何かと絡みに行くのに」
「あー、だな。あとは女子の動きが不自然だよな〜」
「たしかにな。おーい咲仁!」
ちょうど教室へ入ってきた咲仁へそれまで喋っていた2人組が声をかけた。彼らは、咲仁の友人だった。
「なんだ? 亘に唯月」
「お前さ〜、最近、黒川に絡みに行かなくなったなって思ってさ」
「⋯⋯なんでもないお前らの勘違いじゃない?」
彼らの言う通り、咲仁の絡みに来る回数は減っている。理由は簡単、彩那と話し合いの末決定したことだ。1度学校で絡む機会を減らしてみようということになっている。
「勘違いじゃねぇだろ。お前が絡まないでどっか行くのがおかしいって。黒川はずっとそこいるのに」
「⋯⋯はぁ、お前らまじでなんなんだよ。放課後時間をくれ。全部はなす」
彼らは、彩那達の関係を知る数少ない人物である咲仁の友人の亘 流星と設楽唯月。
放課後、3人の守り神がいないことによって、彩那の身に起こりうる事件なんて考えもしていなかった。