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絵画

作者: 尚文産商堂

それは確かに、壮大な物語を予感させるものだった。

今から百年以上昔の人が描いたものであるが、今でも十分に通用する美しさがある。

誰もいない、田舎の美術館であったが、どうしてこんな作品がここにあるのか、それが疑問だ。

「気に入っていただけましたか」

コツコツと近づいてくる音に、だから声を掛けられる前に気づいた。

「ええ、繊細なタッチ。かと思えば堂々とした躍動感。印象派とも、何か近しいものを感じる絵画です」

「喜んでもらえたようで、大変ありがとうございます」

どうやらここの職員の人のようだ。

「これを描いた者はおおよそ江戸時代末期に生まれ、昭和初期まで生きました。活動していたのはすでに明治にも入り、江戸も遠くなってきたと皆が感じていたころ。出身がすぐ近くで、その縁で遺族の方が寄付をしてくださいました」

「そうだったのですね」

しかし惜しいのは、これほどの絵を描ける人物なのに、教科書やネットでは見たことが泣いた名前だということだ。

「人が世間に知られるのは才能だけでも努力だけでもダメなのです。最後にいうのはやはり運だということなのでしょう。この絵画がいずれ世界に誇る一大傑作、私は今もそう思っておりますが、と判断されるまでは、今しばらくここは静かに鑑賞することができるところとなるでしょう」

職員はそういってごゆっくりどうぞ、と声をかけて別のところへと歩いて去った。

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