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第9話 サイコパス

日没まであと3時間。


もう手遅れかもしれないが、少しでも被害を抑える努力をしなければならない。

男性はあらゆる場所に電話をしている様だ。

この調子だと、すぐに水道の利用禁止令が出されるだろう。

どんな手を使っても良い。

夜になる前にできる事をやってしまわなければ。


恐らくあれが昼間姿を見せないのは、その姿を見られたく無いという気持ちを共有しているからだ。

車のライトを避けた事や、明るい屋内に入って来ない事からそれが推測できる。


ちょうどスマホが鳴った。


「町が今、大変な事になってる。

もしかしてこれが君の言っていた事なのか?」


「はい、

きっと誰かがあのおにぎりを水道水に溶かし込んだんだと思います。

まだ犯人がいるとは思えませんが、ここから浄水場は近いからすぐ確認して来ます。

そちらは町の人の水道水利用を何とか止めて下さい」


「分かった、気を付けろよ」


男性に挨拶をしようと振り返ると、男性が雨戸を閉めていた。

今にも泣き出しそうな必死の形相の男性は、薄暗くなった部屋の中、


「すまない、もう持ちそうにない。

1時間前くらいにお茶を飲んでしまったんだ。

体が勝手に、

ああ、駄目だ、もう。

倉庫の鍵はその机の引き出しにある。

中の物は好きに使ってくれていい」


と言い終わると、急に薄笑いを浮かべ、自分の両目をえぐり出し始めた。

僕はそっと机から鍵を取り出すと、男性に聞こえない様に礼を言い、その場を離れる。


倉庫の中には散弾銃やナタといった強力な武器の他、金づちやノコギリなどの大工道具もたくさん入っており、男性所有のワゴン車に必要な物と自分の自転車を急いで積み込み、僕は走り出した。


日没まであと2時間30分。


浄水場に着いた。

来る途中、いくら電話をかけても誰も出なかったが、もし職員が残っていれば協力を仰ぐつもりだ。


建物の入り口は開いていた。

金属バットを握りしめ、中に入って薄暗いエントランスの内線電話を取る。

呼び出しボタンを押し、しばらく待ったがやはり何の応答も無い。

奥のドアのノブを回すと問題無くドアは開き、中を覗くとパーテーションで仕切られた通路の奥にゆらゆらと揺れる人影が見えた。


恐らく人間ではない


中は全てのブラインドが下げられている上に、照明が落とされていて昼間とは思えないほど暗い。

息を殺して壁を探る。


あった、照明のスイッチ


全てのスイッチを一気に押す。

瞬間部屋が明るくなる。

と、そこにいたのは合わせて6体もの赤黒い人影と、2人分と思われる人の残骸。

一瞬驚いた様に固まった人影は、すぐに蜘蛛の子を散らす様に奥の部屋に向かって走り出す。

が、先に動き出していた僕は一番近くにいた人影めがけて金属バットを振った。

頭に当たるかと思った金属バットは走り出したそいつの頭には当たらず、しかし太もも辺りを力一杯殴られたそいつは1mほど横に吹っ飛び仰向けに倒れた。

照明に映し出されたそいつの顔は両目がえぐり出され、そこから溢れ出す体液と食い散らかされた被害者の血で赤黒く染まっていた。

まるで見られたく無いとでも言う様に両手で顔を覆うそいつは少し哀れにも見えたが、僕は金属バットを振りかぶり、その両手ごとそいつの顔を叩き潰す。

そいつは何度も何度も立ち上がろうとしたが、何度も何度も金属バットで骨を砕かれたその手足に、体を支える力はもう無い。

念の為、追加で5分程叩き潰し、動かないのを確認した僕は全てのブラインドを叩き落として次の部屋へ進む。


日没まであと2時間。


暗い部屋の奥にゆらゆらと揺れる人影。

開け放たれた扉から入る光は、部屋の手前側をすでに明るく照らしている。

僕は堂々と部屋に入り、照明のスイッチを入れた。

部屋が明るくなり、残り5体の赤黒い人影はまたも光に晒される。

しかしその奥にもう部屋は無く、逃れる場所の無いその人影は、ただ暗闇を求めて机の下や物の陰にうずくまった。


その後、僕は一体ずつ丁寧に処理をした。


日没まであと30分。


急いで犯人の痕跡を探さなくては。





自分では全く認識していない為、本文中には出て来ませんが完全なサイコパス主人公です。

本物のサイコパスと言われる人達は、冷静で社会性もありながら、時に残酷な判断を平気で出来る為、経営者に向いているとも、出世しやすいとも言われています。

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