第7話 繋がり
公になった死者2名。
何も知らなかった哀れな被害者達は、皆食い散らかされた状態で発見された。
被害はむしろ夜間外出制限の情報が行き届かなかった隣町近辺で起きており、昨日の提案に大きな効果があったのは間違い無い。
しかし、実は死亡事件の影に隠れる様に同時にもう一つ大きな問題が発生していた。
住民の集団失踪である。
実は昨日の夕方から近隣老人ホーム3カ所、入居者職員合わせて122名が行方不明になっていた。
調べるとその前日も数名の捜索願いが出されており、秘密裏に片付けられた死亡者を除いても、それなりの数になる。
「ああもう!昨日の夜中も働き詰めで疲れたよ!
Y地区担当の連中だけじゃ手が足りないからって、何体も遺体処理させないでくれよ!」
本当の死亡者は10人を越えている。
ただ、ちゃんと後処理をした上で、行方不明の人数に含めてしまえば大した騒ぎにはならないそうで、
「警察官の特権だよ」
との事だ。
どうかしてる。
続けて彼が切り出す。
「実はY地区担当の責任者が分かったから、訪ねてほしい」
3日前、僕は現場付近に停まっていた車のナンバーを伝えていたが、彼はそこから持ち主を特定。
この混乱に乗じて、その経歴や移動履歴からその人物を割り出したらしい。
「これも警察官の特権だよ」
との事だ。
やはりどうかしてる。
住所を聞いた僕は迷いながらも家を見つけ、チャイムを鳴らすと80前後の男性が出てきた。
特徴も聞いていた通りで、僕は軽く挨拶をすると直ぐに本題に入った。
「1年前、Y地区から帰って来た者です。
Y地区に関して、話を伺いたいのですが」
男性は一瞬表情を曇らせたものの、すぐ元の表情に戻り、僕を家に迎え入れる。
僕を家に入れ鍵を掛けると、その男性は静かに言った。
「今回の事は、お前の仕業か?」
「いや、違いますよ!
そんな事、出来る訳無いじゃないですか!」
「まぁ、そうだな。
監視の者も、お前は違うと言ってたしな」
思わぬ質問に妙な反応をしてしまったが、そんな事より監視されていたのは僕の勘違いではなかった様だ。
その後、まず監視していたことを謝罪したその男性は、Y地区の事を分かりやすく丁寧に話してくれた。
昔からこの町は、周りを囲む川がもたらす豊富な資源と肥沃な土壌のお陰で豊かな生活を送っていたそうだ。
しかし、それは川の氾濫という問題を同時に抱えていて、欲深い当時の人々はやってはいけない方法でそれを解決しようとした。
それは最も氾濫しやすい場所と、水害に合わない"理"を持った聖域を繋げてしまう事。
それがY地区であり、あの死者の世界なんだそうだ。
結局その方法は凄まじい効果があり、その後何年も水害は起きなかったが、無理矢理繋げられたその道は不安定で、時々誰かが迷い込んだり、誰かが出てきてしまうことがあった。
そんなある日、不幸な事故が起こる。
そしてその事故は、それ以降のこちらの世界と、死者の世界の関係を大きく歪めてしまう事になった。