第5話 再び
遺体を発見したのは帰宅途中の隣町の人だった。
時間を考えると、僕が帰った直後くらいだった様だ。
本来であれば、僕を監視している連中を通じてY地区担当が何とかするはずだったのだろうが、余りにも場所とタイミングが悪過ぎた。
案の定、彼から電話がかかってくる。
「ニュース見た?
大変な事になったね!
ウチも大騒ぎだよ!」
相変わらずの軽い会話を受け流し、僕は昨日の事を詳しく伝えた。
その余りに現実離れした内容に戸惑いつつも、僕を信じ、そこから真実を導き出そうと深く考えている事が言葉の端々から感じられた。
「要はあっちの世界の人食い野郎がこっちで食事中って事でOK?」
「ええ、そうです。
あと問題は、そいつが境界線を越えたのか、それともこっちの世界で発生したのかって事です」
「なるほど、
そこで君の言っていた、あの食べちゃいけないおにぎりが出てくる訳ね」
「はい、正直1年も前のことですし存在するかも分からないんですが、ごく少量でもアウトって事だとやばいです。
すりつぶして何かに混ぜられたりしたら、大変な事になります」
「それはたしかに恐ろしいな。
まぁ、とにかく君が無事で良かった。
しかし、ちょっとやばい感じになって来たなぁ。
また連絡するよ」
そして彼の予感は的中した。
夜、また僕は嫌な胸騒ぎを感じた。
それは昨日の夜とは桁違いの大きなもの。
僕はまた急いで革ジャンに袖を通し、金属バットを手にすると玄関のドアに手をかけた。
手が震えた。
足が震えた。
"ドアを開けるな!"
と言う声が聞こえた。
念の為、ドアの覗き穴から外を伺うと、そこには黒い穴でこちらを見つめる何かの姿があった。
僕は息を呑み、静かにドアチェーンをかけると、2階に上がってカーテンの隙間から外をのぞく。
するとそこにはゆらゆらと、ゆっくり歩く人影。
その数何と4つ。
その時、車が通りかかった。
ライトに照らされた人影は、まるでその光を嫌うかのように道を開ける。
そして車とすれ違う瞬間、その人影は突然車の前へ飛び出すと、
ドスンッ、
と言う鈍い音が響かせ、運転席から慌てたその人を飛び出させた。
その瞬間だった。
3つの人影とはねられた人影は、瞬く間にその人に群がった。
その人は悲鳴を上げる間も無く喉元を喰いちぎられた。
何が起きたのか理解できず、それでも溢れる鮮血を何とかしようとその人は首を押さえる。
しかし4つの人影は次々とその腕に、その足に噛み付き、その人の体はあっという間に真っ赤に染まった。
その人は力無くその場に倒れた。
その体が作る血溜まりはだんだんと大きくなっていき、その体は驚くほど小さくなっていった。
僕は気付かれないよう、そっとカーテンから離れ便所に行くと、胃の中身を全て吐き出し、軽く口をゆすいで布団に潜り込む。
"また明日ニュースになるのかなあ"
などと考えていると次第に眠くなった。
僕は恐ろしい現実から目を逸らすように、
そのまま眠りに落ちた。