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やられっぱなしの僕が聖女様のナイトに選ばれたんだけど、リミッター魔法解除って何?強すぎなので怖くて本気が出せません。  作者: 坂井ひいろ
第一章 覚醒

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021 実戦訓練③


「聖女ティア様・・・」


 僕の声は震えていた。恥ずかしいけど恐怖が押さえられない。脚がガクガクする。横に立つ聖女ティア様の銀色の髪が風に揺れている。


「フローラさんと同じ高所幻術魔法です。落ちても体は何ともありませんが、落ちる恐怖で精神崩壊して死にます」


 僕の足元の地面は手のひらサイズほどだった。簡単に言うと千メートルはある長ーい丸太の上に立っていると思えば理解できる。当然、地上の景色は遥か下で、ミニチアレベル・・・。


 同じような棒の上に聖女ティア様とリセ様が立っている。スッと立つティア様はまるで女神様のように美しい。リセ様に至っては飛び跳ねたり逆立ちしたりして子供みたいに遊んでいる。リセ様は元が千年木だから高い所は平気なんだろうけど・・・。


「新しい発見がありました。どうやら僕は高所恐怖症のようです」


「そのようですね。腰が引けて、足がフラフラです。フフフ」


 フフフって、あのー、聖女ティア様。先ほどのリセ様のハグにまだ怒っていらっしゃいます。って、怒ってますよね。


「タト君、足元を良ーく見てください。細いクモの糸が百メートルほど先の棒に繋がってます。さあ、歩いて渡ってください」


 えっ、ええー。これですか。絶対に足を踏み外す。もう百パーセント自信あり。足元を見たために下界の景色が目に焼きつく。下を見ながら百メートルのクモの糸の上を歩くなんて不可能だ。


「あのー、聖女ティア様。また新しい発見です。どうやら僕は綱渡りが苦手のようです」


「タトは言い訳ばかりなのですう。こんなの簡単なのです」


 リセ様がピョンピョンと跳ねながらクモの糸を渡り始めた。メチャ、糸がゆれている。切れたら終わりだ。


 リセ様が落っこちていく最悪の事態を思い浮かべてしまい、さらに恐怖がつのる。震える膝を両手で押さえて屈みこむ。


「幻ですからそんなに怯えなくても大丈夫です。一歩一歩進めばいずれ向こうの棒にたどり着きます。さあ、私と一緒に足を踏み出しましょう」


 マジか。本当にこれを渡るのか。屈みこんだままの僕は足元の棒の先についたクモの糸を指で弾いてみる。


 ビョョョーン。


 だよね。体の小さなリセ様でさえあんなに揺れているものな。渡るどころか立つことすらできないぞ。って、リセ様、もう半分ほど渡っているし。


 体の小さな・・・。んん、閃いたかも。


「ティア様、魔法の修行ですから魔法を使うのはアリですよね」


「もちろんです」


「じゃあ僕はこうします」


「きゃっ。タト君が消えた」


 聖女ティア様は僕が落っこちたんじゃないかと首を振って地上を探している。


「ここですよ。ティア様」


 僕は魔法を使ってクモより遥かに小さなサイズになっていた。へへっ。これならクモの糸も十分な太さだ。


「タト君。いつの間にそんな魔法を習得したんですか」


「あれっ。確かに。魔法が苦手だったはずなのに・・・。でもできるような気がしたので、やってみたらできました」


「こんな高難度の変化へんげ魔法を、やってみたらできただなんて。タト君はやっぱり凄いです。でもそのサイズだと向こうの木まで何キロも先に見えませんか」


「大丈夫です。僕は走るのは得意なんです。ずっと独りで修行してきましたから。それではお先に」


 僕は走った。爆走だ。千年木相手に剣を振るだけが僕の修行じゃない。相手がいない修行はとことんやり尽くしたもんな。


 リセ様を追い越して一着でゴール。


「タト君、凄いです。本当に凄いです」


 後ろからフワフワと宙を飛んでくる聖女ティア様。ズルくねーか。それ。


 まあそれでも、第一関門クリア。実践においては臨機応変な対応が必要だと学んだタトだった。こうしてタトは幻術魔法と物理魔法、また、その対処法を学んでいった。


「そろそろ良いんじゃないでしょうか」


 聖女ティア様が終わりを宣言する。


「私の出番が無かったのですう」


 リセ様がすねる。


「独りですっと修行してきたのでわかりませんでしたが、教えていただくことで何倍も早く強くなれた気がします。ありがとうございました」


 僕は二人に向かって頭を下げだ。物理魔法も幻術魔法も回復魔法も何でもこいの聖女ティア様、見た目とは裏腹にパワーもスピードも最高レベルの戦士に匹敵するリセ様。最強の師匠を得た気分だ。


「それでは約束の・・・」


 真っ赤な顔をしている聖女ティア様が僕の胸に飛び込んできた。


「またまた私の出番が無かったのですう」


 リセ様がすねまくって決勝戦に向けた僕の実戦訓練は終わった。

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