設定は必ず目を通しましょう。
うーんでも、ヒロインや攻略対象じゃないからあまり詳しく設定を見ていなかっただけかもと思い直し、メアリーとしてなるべく違和感を与えないように
「ルーそろそろ離れて頂かないと潰れてしまうわ」
「あっ、ごめんなさい。メアリーが元気になったって聞いたからつい……」
しゅんとしながら、私の上から退いて立ち上がる為手を差し伸べてくれるルー。
「はっ!そうよ、私お父様にご用事があったんだわ!」
「そうだったの?むー本当は今から遊びたいけど……メアリーのご用事が終わったら僕と遊んでね!約束!!」
「えぇ、約束ですわ。」
ルーの手を借りて立ち上がった私は、ルーが来るまでどこに行こうとしていたから思い出して声を上げる。
それに、ルーは不服そうにしながら眩しいほどの笑顔で私を見送ってくれた。
……お父様を訪ねるだけでなんだか壮大な別れに。
この時間であれば工房にいらっしゃるはずーーー
***
アルデバラン邸 本館
クロス・アルデバラン魔術工房。
工房の扉の前に来た私は、コンコンと控えめにノックをし声をかけ、入室の許可を待つ。
「入りなさい」
「失礼します。メアリーです。」
「メアリー!!!!どうしたんだい?もしや、まだどこか痛いところとかがあるのかい?顔が少し赤いぞ!?すぐに医者を呼ばねばっ」
「いえ、違います!少し緊張していて、あの……殿下にお見舞いの品をいただいたお礼をと思ったのですが……」
「……」
「それでそのお父様に意見を伺おうと…」
うぅ、恥ずかしくて尻すぼみになっていくわ。だって本来のメアリーならお礼なんてないと思うの、勿論その代わりお父様やお母様が何かしら用意してお送りしているはず。確かまだ最有力婚約者候補なだけだから、殿下からすれば平等の扱いともいえるし、交流も数えるほどしかお会いしていないからそこをまずは突き崩し、興味を持っていただかないと家の力で婚約者になってもダメなのだ。
だから、お返しに何を送っていたか教えてくださいませ、お父様!
「う、うぅ…メアリィー」
「!?え、何故涙をお流しになっているのですか、お父様」
「どこにもお嫁にいかないでくれ〜かわいい私のメアリーお父様はお仕事頑張るから!」
「どう歪曲したらそのようなことに至るのですか?ただ今までのお礼として差し上げた品と被らないようにお聞きしているだけですわよ」
お父様がいきなり泣き出した。泣きたいのはこっち!!叫び出しそうになるのを抑えながら、言葉をかえす。少しでいいからその親バカを抑えてください。
「だって!殿下にお礼をなんて今までしなかったじゃないか!!このままなにもなかったようにお父様からお礼の品を送って婚約者候補から外れよう」
「きょ、興味がでてしまったのですわ!私、殿下と結婚したいのです」
「………」
お父様は、灰になった。